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勤務中に司法書士の受験勉強する「モンスター社員」、注意したら「迷惑かけていない」と反論

2019年09月01日 10:31  弁護士ドットコム

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勤務時間中に、私的なSNS投稿やネットサーフィンは度々話題になりますが、自分のための勉強は認められるのでしょうか。「勤務中に資格の勉強をしている社員がいる」という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者によると、同僚が勤務中に司法書士試験の勉強をしているそう。本を読むなどしているそうで、再三にわたって注意されていますが、当の本人は「誰にも迷惑かけてない」と開き直っているそうです。



こうした問題社員は処分対象にならないのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。



●職務専念義務に反する行動

ーー勤務時間中に私的なことをしてもOKですか



労働者は労働契約に基づいて、誠実に職務を履行する義務を負うこととされており、これは「職務専念義務」などと呼ばれます(労働契約法3条4項)。勤務時間中(就業時間中)に私的なことをするために時間を費やすことが許されるかは、職務専念義務との関係でしばしば問題になります。



たとえば、私用の電話やメール、インターネットの閲覧などは、それが業務に支障を与えないような短時間のものであれば許容されているのが実情ですが、そうした私的行為に長時間を費やすような場合には職務専念義務違反になる可能性が出てきます。



ーー今回の相談者の同僚は、勤務中に司法書士試験の勉強をしているそうです



私的に司法書士の勉強として本を読んだりするのは、わずかな時間で終わるとは考えにくく、その時間中は本来行うべき業務を行っていないことになりますので、誠実に職務を履行していない、職務専念義務に反する行動であると言えるでしょう。



ーーこうした問題社員は処分対象にならないのでしょうか



そうした行為は会社から注意や指導を受ける原因になりますし、相談者のケースのように勉強することを注意されたのに開き直って勉強を続けたり、勉強をすることで業務に支障を生じたりすると、就業規則上の懲戒事由にあてはまるとして、懲戒処分を受ける可能性があります。



また、本人が「誰にも迷惑をかけてない」と思っていたとしても、実際には本人が私用のために就業時間を割いているわけですから、その分、本来予定されていた業務の進捗が遅れたり、他の人が穴埋めをしたりすることが想定されますので、業務に支障を生じることは明らかでしょう。



一方で、会社が会社の業務のために必要な資格を取るために、業務命令として勉強や実習を命じた場合には、それは業務の一環として勉強をすることになりますので、処分の対象とされることはありません。



資格取得はキャリア形成のために意義あることですが、労働契約に違反してまで私的な勉強をするのではなく、限られた時間の中で効率よく勉強をする能力を磨くことも大切ではないでしょうか。




【取材協力弁護士】
金井 英人(かない・ひでひと)弁護士
愛知県弁護士会所属。労働事件、家事事件、刑事事件など幅広く事件を扱う。現在はブラックバイト対策弁護団あいちに所属し、ワークルール教育や若者を中心とした労働・貧困問題に取り組んでいる。

事務所名:弁護士法人名古屋法律事務所
事務所URL:http://www.nagoyalaw.com/