2019年08月31日 09:51 弁護士ドットコム
たとえ離婚をしたとしても、夫婦ともに「子どもの親」であることに変わりありません。しかし、養育費が支払われないなどのトラブルは少なくないようです。
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弁護士ドットコムにも、夫と離婚し、1人で子どもを育てている女性が弁護士ドットコムに悩みを寄せています。
女性は5カ月前に夫と離婚。別居中も夫から婚姻費用が支払われることはほとんどなかったとのこと。離婚から1カ月後、女性は養育費を請求するために、調停を申し立てました。しかし、調停は長引いているようです。
「調停を申し立ててから4か月ほど経ちましたが、養育費はいっさい支払われていません」と女性は困っている様子です。養育費をさかのぼって請求することはできるのでしょうか。
離婚をした後に養育費の支払いを求めて調停を申し立てた場合は、原則として請求時から(今回のケースでは調停申立時から)、その前に文書で請求するなりしていた場合はその時点からの養育費を請求することができます。
ただし、例外的に、離婚時にさかのぼって過去の未払い分の養育費を請求することができる場合もあります。
たとえば、元夫が子どもが扶養を要する状態にあることを知りながら、養育費の請求を妨げた場合です。また、離婚に至る事情や元夫の収入・資力から見て、請求以前にさかのぼって分担しても過酷とはいえず、夫がその分担を免れることが著しく公平を害するような場合も離婚時にさかのぼって養育費を請求することができます。
もし、話し合いがまとまらず、調停が不成立になった場合は、審判手続に移行することができます。審判では、裁判官が調停を申し立てた人(相談者)とその相手方(夫)から聞いたことや提出された資料など、すべての事情を考慮したうえで、養育費を決定します。
なお、調停を経ずに審判を申し立てることも可能です。しかし、養育費のことは当事者同士で話し合うべきだと判断され、裁判所の職権で調停に付されることが少なくないようです。
調停または審判で養育費が決まったにも関わらず、相手が支払わない場合は、相手の給料や預貯金を差し押さえる措置をとることができます。これを「強制執行」といいます。
強制執行をおこなうには、「債務名義」が必要となります。具体的には、調停調書や審判書のほか、判決書、公正証書(強制執行認諾文言付き)などです。
養育費については、過去に支払われなかった未払分だけではなく、支払期限が到来していない将来の分もあわせて差し押さえを申し立てることが可能です。
【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/