岡山大会で存在感をより一層高めている野左根航汰と水野涼 全日本ロードレース選手権後半戦の緒戦もてぎを終え、その2週間後に開幕を迎えた第6戦。岡山ではファクトリーマシンを手に入れもてぎでJSB1000クラス初の表彰台を獲得した水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)とヤマハの次期エースを目指す野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が躍進を見せている。岡山大会ではこのふたりの戦いも見どころとなりそうだ。
8月21日から2日間行われた岡山大会のレースウイークに向けた公開テストでは、野左根と水野涼が1分27秒台に入れるタイムを記録。初日は野左根が1分27秒785でトップとなり、2日目は水野が1分27秒686を記録してトップとホンダ、ヤマハの次期エース候補ふたりがトップタイムを分け合っていた。
迎えたレースウイークの初日に行われたART合同走行は、朝にどしゃぶりの雨が降った影響でウエットからドライへと変わっていくコンディション。野左根、水野は午前のセッションでは走行を見送り、午後のセッションから走り始めた。その午後のセッションで野左根が唯一1分27秒台に入れる1分27秒932を記録し、初日を総合トップで終えた。
「(ART合同走行の)1本目は天候が悪くて走りませんでした。2本目も序盤に雨が降ったりして、グリップはあまりよくなかったのですが、集中して乗り出しからタイムも出ました」と話すのは野左根。「先週(公開テスト)も走り込めたので、大きくセットは変えず、初日はロングランと微調整という感じで非常に良い形でこれていると感じています」と公開テストからの好調を見せていた。
「去年は優勝できていませんし、今年も表彰台は3位だけという状況です。今回は限りなく優勝に近いという手ごたえがあります。岡山では本気で優勝を狙っていきたいです」
一方の水野は、公開テストでは1分27秒台に入れたものの、ART合同走行では1分29秒772で総合9番手とレースウイークではタイムが伸びなかった。
「朝まで雨が降ったり、2本目もセッション序盤に少し雨が降っていたのでテストとはコンディションが変わり、それにうまくバイクが合わなかった。その差が大きく出てタイムが下がってしまいました」と水野は初日を振り返る。
「残り2日間は天気が良い方向に転がる予報ではあるので、今日のリザルトは気にしていません。テストから比べるとタイムが落ちてしまいましたが、それはコンディションの影響なので原因もあきらかです」
「(公開テストから)セッティングは大きく変わっていませんが、それ以上に周りと使っているタイヤが違うのもあり、今日のコンディションでは自分より上位の人たちのタイヤが合っていたんだろうなと感じています。逆にテストのときは自分のタイヤが合ってたんだと今日とテストを比べて思いました」
「明日がどうなるかわかりませんが、仮に今日と同じコンディションだった場合でも対策はあるので、後はセッティングの合わせこみだけです」
■お互いを意識し高め合うふたり
野左根は24歳、水野は21歳と年も近いこともあり、お互いをかなり意識している。プライベートでは仲が良いというが、レースでは絶対に負けられないという気持ちが大きいようだ。
前戦のもてぎで水野とバトルを展開し5コーナーで転倒を喫して順位を大きく落とした野左根は「もてぎで一番悔しい思いをしたのは自分だと思います。水野選手とはよくしゃべりますし、LINEでもよくやりとりします。この間のレースも水野選手と振り返りましたし、それぐらい仲がいいですが、走ったら一番のライバルでもあります」と水野涼について話す。
「中須賀選手、(高橋)巧選手も非常に強敵ではありますが、水野選手は一番負けられない敵でもあります。テストでも水野選手は非常に調子が良く、今日は思ったより上がってきませんでしたが、明日からはすぐ上位に戻ってくると思います。水野選手にリベンジしたいですし、もちろん中須賀選手、巧選手にも勝ちたいです」
一方の水野は野左根との関係を次のように語る。
「野左根選手と話しても自分がリーダーボードの一番上にいると『こいつには負けたくない』と思うみたいで、逆に自分も野左根選手が一番上にいるとそう感じます。巧選手、中須賀選手以上に年齢も近いので負けられないという気持ちは強いし、それはお互いに思っています。それは良い効果だし、良いことだと思います」
2019年の岡山大会は例年の9月中旬の開催から8月末の開催に移り、厳しい暑さが予想され、このコンディションをいかに攻略するかがカギを握る。そんな岡山で存在感をより一層高める野左根と水野が1レース制、24周で争う決勝で中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)と高橋巧(Team HRC)にどう絡んでくるか。