イタリアでシェイクダウンされたダラーラ320。来季スーパーフォーミュラ・ライツに導入予定の新シャシーだ。 2020年から、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権、そして欧州で開催されているユーロフォーミュラ・オープンで使用されるダラーラ320がイタリアのバイラーノでシェイクダウンされた。走行は今季途中までスーパーフォーミュラに参戦したダニエル・ティクトゥムが担当した。
これまで全日本F3選手権をはじめ各国で使用されてきたダラーラF312~317シリーズの後継車としてリリースされるダラーラ320は、ドライバー頭部保護装置のヘイローをはじめ、ボディ各所の形状変化、シャークフィンの追加やリヤウイング翼端板形状の変更、クラッシャブルストラクチャーの追加などさまざまな新機軸が投入される。
そんなダラーラ320が8月29日、イタリア、パルマ近郊にあるダラーラ社の社屋前庭に姿をみせた。ジャンパオロ・ダラーラ以下、このプロジェクトに関わった多くのスタッフたちが代わる代わる笑顔でその車体にサインを入れていく。サインが終わると、そのマシンを囲んで記念撮影が行われた。来季スーパーフォーミュラ・ライツ、そしてユーロフォーミュラ・オープンでも使用されるこの新シャシーの完成を祝うセレモニーだった。
撮影が終わると、マシンは社内のワークショップに戻され、今回オペレーションを担当することとなったダブルRのスタッフによって翌日のシェイクダウンに向けた準備が行われたが、夕方、ここに姿を見せたのはティクトゥム。今回のシェイクダウンを行うティクタムが、シートやペダル合わせを行うと、いよいよ翌30日のシェイクダウンを待つばかりとなった。
シェイクダウンが行われた30日は快晴。ダラーラのファクトリーから近いバラーノで行われた。今回、ユーロフォーミュラ・オープンで使用されるHWAエンジンとミシュランを履いたダラーラ320は、ティクトゥムのドライブでまずはアウト~インでピットに帰還。ダブルRのスタッフが各部のチェックを終えると、数分後には再びコースへ。今度は3ラップほどの周回を行い、再びピットイン。そこからは、5周程度のアウティングを繰り返しつつ、各部のチェックと機能確認を順調に行っていった。
■現行F3車両のDNAを継承し、さらにダウンフォースも増加
テストは13時を前に終了し、順調にプログラムをこなした。同じトラックで先日行われたユーロフォーミュラ・オープンの2日間のテストでは、1分01秒2がベストタイムだったようだが、この日のダラーラ320のベストタイムは1分01秒1。この日のシェイクダウンではニュータイヤを使っていないことから、このニューマシンの素性の良さがうかがえた。
「3週間ほど前に、頼まれてシルバーストンで現行のF3マシンをドライブしたんだけれど、今日初めてドライブした320は、その現行F3マシンからまったく違和感なく乗り換えることができた。軽くて速い、というこれまでのF3マシンが持っていたDNAをそのまま継承しているマシンだということが良く分かった。加えて、最初の数周で、現行F3マシンよりもダウンフォースが大きい、ということがすぐに感じられたよ」とティクトゥム。
「もちろんヘイローがついたことで、重量物が高い位置にあるわけで、低速コーナーではわずかに車の動きが大きくなったかな、とは思うけれど、ダウンフォースが現行F3マシンよりも大きいことで、中~高速コーナーではまったくそんなことは感じなかった」
「ドライビングポジションの面では、スーパーフォーミュラと比較して、少しステアリングの位置が高いけれど、逆にSFよりもドライバーに近くないので、特に問題はなかった。ヘイローがついても視界の問題も感じなかったし、モノコックの幅がやや大きくなったけれど、後方視界もまったく問題なかった。今日はセットアップも何もしていないし、ニュータイヤも履かず、機能確認に終始したけれど、とにかくポジティブな印象だったね」
この後、この車両は再度各部がチェックされた上で、アップデートキットという形で日本へ送られ、B-Max Racing with motoparkによりスピースエンジンが搭載された上で、9月28~29日の全日本F3選手権最終大会の舞台へ持ち込まれ、国内でのシェイクダウンが行われる予定となっている。SF19に通じる“クイック&ライト”の申し子ともいえるこのニューマシンの国内での初走行にも注目が集まりそうだ。