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堀田真由が語る、主演と助演とでのスタンスの違い 「一番大事なのは、その役を愛すること」

2019年08月30日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

堀田真由

 『舟を編む』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した渡辺謙作が監督・脚本を務めた映画『プリズン13』が、8月30日より公開となった。スタンフォード監獄実験をもとにした本作は、監獄実験の被験者となった12人の男女が、看守と囚人に分かれ、壮絶なゲームに挑む模様を描いた密室サスペンスだ。


参考:堀田真由、狂気の実験に泣き叫ぶ 渡辺謙作監督作『プリズン13』予告編&場面写真公開


 主人公のマリを演じたのは、ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)や現在放送中の『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)、『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』など出演した映画の公開が続々待機している堀田真由だ。主人公をサポートする役を演じることが多い彼女は、久しぶりの主演作にどう挑んだのか。撮影の裏側から自身の役者像まで、じっくりと語ってもらった。


ーー「スタンフォード監獄実験」をもとにした今回の作品はかなり攻めた企画ですよね。オファーを受けた時の心境をどうでしたか?


堀田真由(以下、堀田):映画の題材になった「スタンフォード監獄実験」についてはお話をいただくまで知らなかったんです。お話をいただいてから「なんだろう?」と思って調べてみたら、恐ろしかったです……。最初に台本を読んだ段階では、「本当にこんなふうになるのかな?」と半信半疑みたいなところもあったんですけど、実際に撮影に入ってその立場になってみると、「確かにそうなるな」と精神的な部分での理解が深まりました。あと、今回は主人公のマリという女の子がどんどん成長していく物語でもあるので、自分自身でも「こうした方がやりやすいかもしれません」など、台本を読みながら監督に提案させていただいたりもしました。


ーー“密室”というと、教室に囚われる生徒役を演じた『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)とも共通しますよね。


堀田:そうなんです。なので、そういう部分では繋がるというか、「ご縁があるな」とも感じていました。


ーー『3年A組』では高校生の役でしたが、今回演じられたマリは大学生の設定です。


堀田:『3年A組』もそうでしたが、わりと制服を着る役を演じることが多いのですが、今回は21歳という自分自身と同じ歳の設定だったので、等身大の自分でいることができたような気がします。マリと自分が近い部分もあったので、ストレスなく演じることができました。


ーー近い部分というのは具体的にどのあたりが?


堀田:マリは自分の中で思っていたり考えていたりすることがあると思うんですけど、グループの中で多くの人が「YES」と言ったら、たとえ自分では「NO」と思っていても「YES」と言ってしまう。そういうところは私も一緒だなと思いました。少人数だと自分の意見を言ったり、よく喋ったりするんですけど、大人数になると受け身になってしまうんですよね。一方で、“譲れないことは絶対に譲れない”というような、自分の意見を貫く部分も徐々に芽生えてくる。私自身も少しそういう頑固なところがあるので、そこも似ていると感じました。


ーー撮影もドキュメンタリー的な手法が採用されていて、まるで舞台を観ているかのような印象も受けました。


堀田:そうなんですよ。冒頭のそれぞれのキャラクターの自己紹介の部分は結構リハーサルを重ねたりもしたのですが、あとは12台のカメラがそれぞれどこにあるかを意識しながら、本当に感じたままで、というイメージでした。私はまだ舞台を経験していないのですが、映画を撮っている感覚はあまりなかったですね。ちょっとリアリティーショーみたいな感じだなと思いました。


ーー今までやってきたドラマや映画の撮影とは違う感覚だったと。


堀田:やっぱり違う感覚はありましたね。他の作品だと、自分が映っていない時はカメラの位置によってはお休みする時もあるんですけど、今回は12台カメラがあって、誰がどう動くかもわからなかったので、セリフがなくてもその場にいなければいけないことが多かったんです。そういう意味では大変な撮影でした。


ーーそういう撮影の仕方だと、キャストやスタッフの一体感もより強いものになっていきそうですね。


堀田:確かに一体感はすごくありました。みんないい作品にしようという気持ちを持ってひとつの空間にいるわけなので、「こうしたいね」とか「ここはこっちの方がいいですよね」というディスカッションも自然と多くなって、何かが生まれていく感覚がすごくありました。映画では登場人物たちが囚人か看守かに分かれるのですが、囚人チームと看守チームとで、またそれぞれチームワークが無意識的に深まったところもあったと思います。


ーーマリは囚人側も看守側も経験するわけですが、堀田さん自身は実際やるならどちらの方がいいですか?


堀田:自由な時間を持てて美味しいご飯も食べられるので、やっぱり看守側です。できることならどちらもやりたくないですけど……(笑)。でも、囚人も看守も普通に生きていたらなかなかなれるものではないので、役者としてこうやって演じられたのはすごく楽しかったです。


ーー渡辺謙作監督の印象はどうでしたか?


堀田:監督は結構追い込んでくださる方で……(笑)。お芝居に関しては結構自由にやらせていただけたんですけど、それが監督の中のイメージと違ったら「それだと伝わらないから、もう1回」みたいなことしか言わないんです。でもその演出の仕方が今回の作品のテーマともすごく合っていたので、監督なりの狙いもあったのかなと。逆に「いいよいいよ」っていう感じだったらたぶんうまくいってなかったと思うので、今回監督が追い込んでくださったのはすごく助かりました。


ーー監督は間違いなく狙ってやっていたんだと思います。


堀田:でも、身長も高くてわりと見た目も恐い方なので、責められると少し恐かったです(笑)。初めてお会いした時に、気さくに話しかけてくださったのもあったので、そのギャップがありました。普段は優しいイメージですけど、オンとオフのスイッチが結構はっきりしているイメージでした。


ーー密室以外のシチュエーションでは、マリの姉ユマ役の板野友美さん、ユマの夫コウキ役の前野朋哉さんが出演しています。お2人との共演はいかがでしたか?


堀田:前野さんとは、『わろてんか』(NHK)で以前ご一緒させていただいていたので、「お久しぶりです」という感覚でした。やっぱり1度ご一緒したことのある方ともう1度現場で会えるのは嬉しいですし、お会いした時の安心感が半端じゃなかったです。しかも役柄が義理のお兄ちゃんという。前野さんとはあまり共演シーンがなくて、撮影も半日ぐらいしかご一緒できなかったんですけど、「最近朝ドラのメンバーに会いましたか?」とか、「あの作品観ました!」というようなお話ができて、すごく楽しかったです。板野さんは、実際に妹さんがいらっしゃることもあるのか、本当に妹のように接してくださいました。映画の中では姉妹の関係性がほとんど描かれていないので、気持ちを持っていくのは難しいだろうなと思っていたんですけど、板野さんがオープンな感じで受け入れてくださったので、本当にやりやすかったですし、全く不安がなかったです。空き時間もいろいろなお話をさせていただきました。


ーー今回の『プリズン13』は主演映画になるわけですが、今後は脇を固めた映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』(9/6公開)、『超・少年探偵団NEO -Beginning-』(10/25公開)、『ブラック校則』(11/1公開)、『殺さない彼と死なない彼女』(11/15公開)などが続々公開されますね。脇を固める作品と今回のような主演を務める作品とで、何か意識の変化はあるんですか?


堀田:主演ではないポジションで役を演じる時は、主演の方を支えながらも、いかに自分の色を作品に残すことができるかを考えているんです。前に出るときは出るし、隠れるときは隠れる。そういうバランスを大事にしています。そのやり方に慣れていたところがあって、久しぶりの主演となった今回、最初はなかなか自分の意見を言えずに、監督から「そんなことではダメ」と言われたんです。それから気持ちを切り替えて、自分の意見をきちんと言ったり、責任を持つようになったりしましたし、現場を盛り上げようという気持ちにもなりました。


ーー主演を務める上では現場の空気作りも大事になってきますよね。


堀田:本当にそうなんですよね。今回の作品は内容が内容なだけに、テンションが下がったり疲れが出てしまったりするところを、自ら率先して声を出したりして士気を高めるようにはしていました。キャストの中で私は一番年下ではあったのですが、そういうことはきちんとやろうと。あと、お芝居に関しても“遠慮しない”というのはすごく意識しました。


ーー堀田さんは“主人公を支えるポジション”のイメージが強かったのですが、今回の作品でまた新たな一面を知ることができたように思います。


堀田:私、なぜか支えるポジションを演じることがすごく多いんです。1人だけ学校が違うとか、グループが違うとか、話の軸とはちょっと離れたところにいて、主人公にいい言葉をかける、みたいな(笑)。でもこうやってまた主演をやらせていただくと、主演もやりたいという欲も出てくるので、できることなら今後もやっていきたいですね。


ーー本当にそうですよね。ほかのジャンルの作品で主演も務める堀田さんの姿も見てみたいです。


堀田:ありがとうございます。一番大事なのは、主演だったり脇役だったりポジションに関係なく、その役を愛することだと思いますし、「楽しいからやる」というスタンスでいたいなと。主演をやると、責任感が芽生えたり、すごく勉強になったりする部分が多いので、そうやって成長しながら、お芝居を続けられたら幸せです。(取材・文・写真=宮川翔)