今年5月、「女性活躍・ハラスメント規制法」が成立した。ハラスメントに対する意識は高まっているが、実際の対策に四苦八苦している企業も少なくない。
8月27日の「モーニングCROSS」(MX系)では、ジャーナリストの三木哲男氏がハラスメントの境界線が曖昧であるため、どこまで部下を厳しく指導していいかわからず頭を悩ませている現状があると話す。(文:石川祐介)
一人ひとりの意見に耳を傾けて優しく接してくれる上司が良い
三木氏はリクルートが新入社員を対象に実施したアンケート調査を紹介。「上司に期待することはなにか?」という設問に「相手の意見や考え方に耳を傾けること」や「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」などが票を集め、「仕事でバリバリできること」「周囲を引っ張るリーダーシップ」といった回答は支持されなかった。
「一人ひとりの意見に耳を傾け、個性や特徴を認めて活かし合うチームを作れる"支援型リーダー"が求められている。まとめると、自分に関心を持ち、価値観を共有し、優しく接する、気分次第でわがままを言わない上司のことです」
若者は上司に対して恋人と接するような優しさや受容を望んでいると語った。
その上で、昔の上司は当たり前のようにハラスメントをしていたが、あまり問題にならなかった、と指摘する。「昔の日本企業は成長していたので、ハラスメントが横行していても成功体験を積むことができたから、異議を唱える必要がなかった」と解説。「ハラスメントはあるけど成長している」という認識がハラスメントを許容していたようだ。
ただ、昔と違い今は成功体験を積むことが難しく、ハラスメントに遭うと「これだけ苦しい思いをしているのに成長できないなら辞めます」と考える若者が急増しており、理想的な上司像をアップデートしなければいけないと指摘する。
「最近の高校野球の監督は、勝った要因として『スパルタではなく選手自身に考えさせる指導に変えた』とよく言います。スパルタを完全に止めたわけではないけど、スパルタを土台にして選手の個性を見抜き、想像力を引き出す指導をしている」
さらに、「チームの弱者への目配りができているリーダーはキツい言葉を使っても問題視されない」と自身の体験談を語った。
今後AIがさらに進化すれば、言われた通りに単純な仕事だけをしている、という人は評価されなくなっていく。一人一人の個性や主体性を尊重し自分で考える習慣をつけさせることは、これからの時代を生き抜く人材を育成するという意味でも重要になってきそうだ。
ネット上では、「セクハラ、パワハラなどを指導と言い張る人間も多いですよね」とハラスメントを指導や教育と勘違いしている上司が多いことを指摘する人がいた。また、「優しい上司ばっかりだと会社は衰退するぞ」とコメントが見られたが、厳しさと優しさのバランスを上手くとることが上司には求められそうだ。