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「検察の対応は前代未聞だ」書類送検された常岡浩介さん、日弁連に人権救済申し立て

2019年08月29日 18:31  弁護士ドットコム

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2014年当時北海道大生だった男性が、過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員になるためにシリアへの渡航を計画した事件で、私戦予備陰謀の疑いで書類送検されたジャーナリストの常岡浩介さんが8月29日、検察に防御権を侵害されたとして、日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てた。


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●被疑事実を教えてもらえず

申立書などによると、常岡さんは2014年7月、元同志社大教授を介して、ISの戦闘員を志願しているという当時北大生だった男性と知り合った。常岡さんは同年8月、同行取材を考えて、インターネットで男性の航空券を手配した。



結局、この渡航は中止となったが、男性は同年10月、私戦予備陰謀の疑いで警視庁に事情聴取された。常岡さんも家宅捜索されて、その後、常岡さんは「参考人」から「被疑者」に変更されたが、被疑事実が明かされることはなく、取り調べもなかった。



ところが、公訴時効まで1カ月となった2019年7月3日、警視庁は突如、常岡さんや元同志社大教授、元北大生の男性ら5人を書類送検した。常岡さんの弁護人をつとめる清水勉弁護士が、東京地検(公安部)に対して、被疑事実の確認をもとめたが、捜査中を理由に回答されなかったという。



清水弁護士によると、送検された事件について、検察官から弁護人に被疑事実を告げないという対応をされたのは、37年間の弁護士人生で初めてという。清水弁護士は「前代未聞の対応だった」と話す。



●不起訴理由もわからない



こうした状況の中、東京地検は7月22日、常岡さんら5人を不起訴処分とした。清水弁護士は翌23日、東京地検に対して、不起訴処分告知書の交付を請求した際、不起訴理由(起訴猶予なのか、嫌疑不十分なのか、嫌疑なしなのか)の記載をもとめたが、記載されなかった。



常岡さん側は、刑法の私戦予備陰謀罪が適用された初めての事件で、前例のない捜査過程で、検察官が弁護人に被疑事実を告げないことは、防御権・弁護を受ける権利(憲法31条)を侵害するものだとして、東京地検などに対して警告するよう、日弁連にもとめている。