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テミン(SHINee)の歌声そのものが踊っているーー『FAMOUS』に感じた進化と底知れぬ魅力

2019年08月29日 18:21  リアルサウンド

リアルサウンド

 テミン(SHINee)が、8月28日に3rdミニアルバム『FAMOUS』をリリースした。8月4日から先行配信されていた本作。すべてが新曲となっている6曲に、じっくりと耳を傾けてみた。瞳を閉じてゆっくりと深呼吸をすると自分の体内にたっぷりと酸素が入っていくのを確認できるように、テミンの歌声だけに集中し、音楽が身体中に流れていくのを感じる。すると、MV動画を見たときの芸術鑑賞的な感動とも、ライブで感じるカタルシスとも異なる、ある気づきと出会えた。


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 有名、著名、名高い……の意味を持つ“Famous”。SHINeeとして韓国でデビューしたのが2008年のこと。メンバーからもファンからも末っ子として可愛がられ、その愛情を一心に受けてすくすくと育ったテミン。そして、天使のような無邪気さと、ずば抜けたダンスのセンスで知られる存在になった。愛されキャラで、天真爛漫で、天才的。それが“Famous”なテミンだ。


 ソロで発表された楽曲も、持ち前の中性的な雰囲気を活かした妖艶な振付の楽曲や、踊ることが好きでたまらないという野性的な才能がほとばしるダンサブルな楽曲が目立った。いわば私たちが知るテミンの魅力を濃縮したような、「これぞテミン」と膝を打ちたくなるような作品たち。だが、本作では、その“Famous”なテミンでは終わらない、何かがあるのだ。リード曲「Famous」を聴きながら、始めのうちはいつものようにまぶたの裏で踊るテミンを脳内再生していた。そう、テミンの楽曲はいつだってダンスと歌がセットだった。楽曲を聞けば、いつも無意識的に“早くパフォーマンスが見たい“と思っていた。


 しかし、この作品では歌声そのものがすでに踊っているのだ。テミンの歌声が著しく進化している。それこそが、本作で出会った新たな気づき。そう悟った瞬間、メデューサと目が合い石にされるかのように、心がガシッと掴まれる感覚に陥る。そして“Famous”になったテミンの、まだまだ底知れぬ魅力があることに少し恐ろしさを感じながらも、覗き込まずにはいられない気分にもなる。


 2曲目の「Slave」では、〈ご褒美のキスして 指先で〉とセクシーな歌詞を吐息混じりのウィスパーボイスで歌い上げる。まるでその歌声が聴く者の肌を撫でるようで、思わずゾクゾクしてしまうほど。〈まだ君の気づいていない いいところ 教えてあげるから〉と低く響く歌声は大人の男の色気が匂い立ち、そこから〈いこう そう何度も 夜は長いから〉と一気にファルセットを用いて情緒たっぷりに歌い上げる。これまでダンスで魅せてきたものを、歌声の抑揚で表現しているようだ。


 そんな聞き手がうっとりとしているところに流れ込んでくる「Tease」は、アップテンポながらどこか余裕たっぷりな表情の歌声。いたずらっぽく笑う、少しSっ気さえも感じる。続く「Exclusive」では、テミンが出演していたドラマ『ファイナルライフ-明日、君が消えても-』(Amazonプライム・ビデオ)を彷彿とするようなミステリアスな雰囲気で、まるで声だけでパーティからヒロインを連れ出すシーンを演じているかのようだ。


 語感のいい歌詞が続く「It’s you」では、歌声が軽やかに細かなステップを踏む。そして、「Colours」では〈七色またたくColours〉と歌う声に、“こんな声色もあるのかと“改めてテミンが持つ才能のカラフルさに驚かされる。


 『TAEMIN ARENA TOUR 2019 ~X™~』では、「いつものテミンとは違う、より進化したステージを見せたかったですね」と語っていたテミン。「もっと新しい要素を取り入れたい」「僕自身が余裕を持って、ファンのみなさんを引っ張っていく姿を見せたい」と、常に向上心を持ってライブを作り上げてきた。(参照:Kstyleインタビュー)


 ダンスから歌へ、ライブからアルバムへ。目に見えるパフォーマンスの経験が、目に見えないパフォーマンススキルも引き上げているようだ。踊ることが好きでしかたない気持ちがほとばしるダンスナンバーは、もちろんテミンの真骨頂。しかし、テミンはそこでは終わらないということ。


 生まれ持った才能に甘んじることなく、圧倒的な努力によって、歌声そのもので踊り、魅了する力も手に入れたのだ。声でファンの心に触れたり、雨を感じさせたり、ドラマの1シーンのような風景を想像させたり……。きっと今度は歌声からダンスへと、相互作用的に表現力が高まっていくことだろう。果たして、次はどんな進化で私たちをハッとさせてくれるのか。これからも“Famous”なテミンが塗り替えられ、世の中が驚いていく様を楽しみにしている。