トップへ

高畑充希が振り返る、初めて尽くしの『引っ越し大名!』の経験 「必死になって撮影をしていた」

2019年08月29日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

高畑充希

 『超高速!参勤交代』の土橋章宏が原作・脚本を手がけ、『のぼうの城』の犬童一心が監督を務めた映画『引っ越し大名!』が8月30日に公開される。本作は、書庫にこもりっきりで人と話すのが苦手な“引きこもり侍”の片桐春之介が、姫路から大分への国替え(引っ越し)という超難関プロジェクトに挑む模様を描いたエンターテインメント時代劇。


参考:高畑充希が語る、『メゾン・ド・ポリス』座長としての務め 「愛がある方ばかりですごく安心感」


 主演の星野源や共演の高橋一生、小澤征悦、濱田岳、及川光博らがキャストに名を連ねるなか、ほぼ紅一点で出演しているのが、於蘭を演じた高畑充希だ。昔から知り合いだったという犬童監督や共演歴のある星野とのエピソードから、過酷だったという撮影、そして主演というポジションについてまで、本人に話を聞いた。


ーー犬童一心監督とはもともと知り合いだったそうですね。


高畑充希(以下、高畑):犬童さんとは10代の頃から知り合いで、度々連絡を取り合うこともありました。最近はあまり接点がなかったんですけど、久々にいただいた連絡が今回のオファーだったので、すごくビックリしました。ちょっと懐かしい気持ちも芽生えつつ、とても嬉しかったです。今回の『引っ越し大名!』は時代劇ではあるのですが、少しレールから外れた作品なので、どうなるのかワクワクしながら現場を楽しみにしていました。


ーー今回高畑さんが演じた於蘭というキャラクターは、原作では独身の控えめな女性ですが、映画では夫に離縁された“出戻り”で、一人息子がいるたくましい女性という設定に変更されています。


高畑:こういうツンデレみたいなキャラクターはこれまであまりご縁がなかった役です。私のことを昔から知っている犬童さんが、原作とは設定が変わったこの於蘭という役に何か通ずるものを感じて私を選んでくださったということで、期待に応えたいと思いました。


ーー犬童監督は高畑さんについて、「昔から一緒にいるとなぜか彼女の方が年上な気がする」「高畑さんの中にある“正しさ”みたいなものがひとつの芯となって、大人に感じるのかもしれません」とコメントしていました。


高畑:んー。私自身はあまりそうは思わないです(笑)。自分では結構二面性が激しい性格だと思っているんです。確かに大人ぶったところは昔からあるんですが、幼い部分、いい加減な部分もあって、自分ではそれを制御できていない気がします(笑)。


ーーそうなんですね(笑)。犬童監督は於蘭について、「高畑さんの姉御肌的な魅力がうまくはまったと思います」とも言っていましたが、自分ではそこもあまり感じないですか?


高畑:どうなんでしょう……。必死になって撮影をしていたので、自分では全然わかりません(笑)。学ばなきゃいけないことも多かったですし、わからないことだらけだったので、「於蘭さんはこういう人だからこうしよう」みたいなことをやってないというか、やる余裕がなかったんです(笑)。たぶん、私の中にある要素と、於蘭さんという人が合体して、ああいうキャラクターになったんだと思います。自分の要素は少なからずありますが、私はあんなにできた女性ではないというか……(笑)。女性像としてはすごく憧れる存在ですね。


ーー「わからないことだらけだった」というのは具体的にどういうことが?


高畑:時代劇をほとんどやったことがなかったので、最初から最後まで「どうしたらいいのかな?」という感じだったんです。やっぱりこれまでやってきた現代劇と時代劇の違いは大きかったですし、それに加えて、私にとってはこの時代特有の女性の“所作”というのも大きなハードルでした。馬に乗るのも初めてでしたし、(星野)源さんや(高橋)一生さんとお芝居でちゃんと絡むのも、京都の撮影所も初めてで、初めて尽くしの現場だったんです。なので、いろんな人を指針にしながら、必死に後についていく感じでした。


ーー映画やドラマに大活躍の高畑さんにとっても初めての経験が多かった現場だったんですね。


高畑:本当にそうですね。中でも圧倒的に印象に残っているのが馬です。小さい頃にポニーに乗ったことはあったんですけど、乗馬というのは完全に初めてだったので、衝撃でした。しかも馬に乗る女性というのもなかなかない役なので、オファーをいただいたときに、台本に「於蘭さん、馬に乗る」って書いてあって、すごく楽しみで。時間がない中で練習もしていたんですけど、実際は見た目の何倍も難しかったです。先生にもいろいろ教わりましたし、大河でずっと馬に乗っていらっしゃった濱田岳さんや一生さんにアドバイスをいただいたりしました。馬自体はすごく可愛かったんですけど、全速力で走るし、どう進むのかもわからなかったので、何テイクも撮れるわけではないんですよ。今回は本番一発OKだったんですけど、そもそも2回もできないみたいな感じで(笑)。そういう緊張感もあったので、すごく度胸がつきました。


ーー普通に馬に乗るだけでも緊張するのに、役として演じながらというのもまたすごいですよね。


高畑:とても不安でした。普通の乗り物と違って、いつ落ちるかわからないですし、最悪の場合を考え出すとキリがなくて……。でも怪我がなくて本当によかったですね。生きて帰れてよかったなと(笑)。


ーーそんな過酷な撮影がありつつも、現場自体はとても楽しそうだったのではないかと感じました。


高畑:実際は体力的に過酷な撮影だったんです。私はそこまで出ずっぱりというわけではないのでまだ大丈夫でしたが、主演の源さんは大変だったと思います。なので、ちょっとした愚痴ぐらい聞けたらと思っていました。撮影が過酷だった分、楽しい空気の映画になってほっとしています(笑)。


ーー性別は逆でしたが、星野さんとは『おげんさんといっしょ』(NHK)でも夫婦役を演じられていましたね。


高畑:当時『おげんさんといっしょ』の撮影では1日ぐらいしかご一緒していなかったので、今回の撮影に入るまでほとんど喋ったことがなかったんです。なので、すごくご縁がある1~2年だなという感覚はあったんですけど、まだ親しい間柄ではなかったんです。そんな中、撮影の過酷さを共有していくうちに距離も縮まって、短い時間で親睦を深めることができました。私は今回ほぼ紅一点だったんですが、現場で浮いてしまいがちなところを、源さんに引き留めてもらえていたような気がします。


ーー演技面ではいかがですか?


高畑:源さんは、私にとっては“The 座長”、という感じです(笑)。源さんが作る音楽にも感じることなのですが、スタンダードなことをまっすぐやりつつも、そこにいつもひとさじ遊び心があるんですよね。ご本人の性格もあると思うんですけど、その遊び心にすごく心が踊ります。お芝居も、奇をてらったことはされないけど、いつも遊び心がエッセンスとして入っているから、見ていてすごく楽しいですし、いい気持ちになれるんです。それに周りも感化されるので、主演にぴったりの方だなと思います。


ーー高橋一生さんとも、お芝居でちゃんと絡むのは今回が初めてというのは意外でした。


高畑:一生さんとはいくつも同じ作品に出てはいるんですけど、ほぼ絡んだことがなかったんです。今回も2人のシーンはワンシーンぐらいしかなくて……(笑)。いつもそういう感じなので、私にとって一生さんは、近いようで遠い存在なのかもしれません。


ーー高畑さんは今年、『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)で主演を務め、映画『町田くんの世界』では新人2人をサポートする役割を担いましたが、主演、ヒロイン、脇役などのポジションは意識されますか?


高畑:ポジションはあんまり考えていないです。私としては、どんなポジションでもどんな役でも、その役が面白そうであれば何でもやりたいなと思っています。でもやっぱり、主演をやらせていただいたことは、本当に特別なことでした。肩にのしかかるものの重さは、どれだけハートが強い人にとっても、とても大きいということは実際に主演をやってみてわかったことなので、自分が主演じゃないポジションになった時の、主演の方に対する思いの持ち方はすごく変わった気がします。


ーーそれこそ、「できるだけ負担がないように」ということですよね。


高畑:はい。それは主演を経験したからこそ想像できることだったりもするので。私自身は、自分のことをずっと主演タイプの人間ではないと思っていたんです。でも、主演をやらせてもらうようになって知れたこともたくさんあるので、本当にやれてよかったですし、これからもいただける限りやっていけたらと思っています。(取材・文・写真=宮川翔)