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「秋採用」を成功させるためには「隠れ就活生」を発掘せよ

2019年08月28日 07:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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就職みらい研究所の最新の調査では、既に7月1日時点で2020年卒の大学生の就職内定率は85.1%でした。それから2ヶ月近く経つのですから、おそらく9割程度、つまりほとんどの学生はどこかに内定をもらっていると考えてよいと思います。

ただ、内定をもらっても、進路を決めずに就職活動を続ける学生も一定数います。同調査では進路確定率、つまり内定先に入社することを決めた率も出しており、こちらは7月1日時点で71.3%となっています。(人材研究所代表・曽和利光)

内定をもらっても就活を続ける学生たち

つまり、3割程度の学生は内定をもらっても、就職活動をし続けているということになります。採用側にとってはまだ希望が持てる数字です。

もっとも、自社が内定を出している学生が就活を続けているかもしれない、という点では恐怖でもありますが……。そういう状況を踏まえて、就職メディアやSNSなどを見ていても、「秋採用やります」という企業は少なくなさそうです。

2019年卒の採用では、採用目標数を充足した企業は50%にも達しませんでした(就職みらい研究所「就職白書2019」)。採用難の状況がそれほど変わっていない今年も、潜在的には半数もの企業が採用ニーズを今でも残していると考えてよいでしょう。

ただし、就活を続けている学生の数と残っている企業の採用枠では、圧倒的に学生が少ないと思われます。秋採用は、春夏の採用よりもさらに厳しい競争下の採用です。様々な工夫をしなければ成功はおぼつかないでしょう。

対象者探しの第一歩は「内定者へのヒアリング」

秋採用の最大の問題は、誰が採用可能な対象者なのかがわからないということです。

内定をもらっている学生がほとんどであることを考えると、ある日突然「もうここで決めよう」と思えば対象者ではなくなりますし、逆に「行こうと思っていたけど、やっぱりもう一度就活してみようか」と思えば対象者になります。

これらは彼らの頭の中の出来事なので、容易に計り知ることはできません。だからと言って、就活を終えた人ばかりの就職ナビに大量のDMなどを打っても費用が嵩むばかりで効果は薄そう。「隠れ就活生」をいかに探し出すかが、秋採用の成否を分けるポイントになります。

最もお勧めの発掘方法は、自社の内定者などの学生に「周りでまだ就職活動をやっている人や、内定を受諾しようかどうか迷っている人はいないか」とヒアリングを行うことです。

内定をもらったはよいものの、そこに決めてしまうことに一抹の不安を感じて憂鬱になる「内定ブルー」の情報は、どこかのサイトに登録されることはなく、友人たちにこっそり打ち明けられるだけです。相談された学生しか、その存在を知り得ません。

ですから、そういう人を探すには、内定者に聞くのが有効なのです。一種のリファラル採用(紹介による集客)がこのタイミングこそ効くということです。

「キャリアセンター」へのアプローチも効果あり

もう一つ、学生のことをよく知っているところがあります。それは、各大学のキャリアセンターです。

中小企業など知名度が高くない会社は「キャリアセンターは相手にしてくれない」と思いがちです。確かに就職活動の前半は、キャリアセンターは「いかに有名な人気企業に受かってもらうか(学生も望んでいるので)」というところに目標を置きがちです。

しかし、後半になると話は変わります。今度は「すべての学生が仕事に就けること」、つまり内定率・就職率が目標になります。目標が変わったキャリアセンターに、

「まだ就職活動を続けている学生を紹介してもらえませんでしょうか」
「学内で説明会を開かせてもらえませんでしょうか」

と打診してみると、意外に受け入れてくれるところあります。

留学生、既卒など時期ズレ組もターゲットに

残るは、留学生や既卒者など、一般的な就職活動の時期に乗れなかった人です。

現在、毎年10万人以上の学生が海外留学に行っています。この中にはちょうど日本の就職活動の時期に帰国できず、日本に帰った時には企業の採用活動のピークは終わっていたというような学生も大勢いると思われます。

しかも、彼らは単に就職活動ができなかっただけで、企業を落ち続けてきた人ではないため、採用対象としては最適です。

また、最近では一定数、卒業してから就職活動をゆっくりしようという人も増えてきました。例えば、NPO法人キャリア解放区は「就活アウトロー採用」と称し、既存の就活スケジュールの乗らなかった既卒者等と企業の接点を作る活動をしています。

このような場に出向くことで、あまりターゲティングされない既卒者とも出会うことができます。

秋採用は見つかれば採りやすい

以上、本稿では、まだ採用目標に到達していない企業が秋採用をするために注意すべきポイントについて述べてきました。要は、春夏の採用ピーク時とは異なる学生発掘活動が必要になるということです。

「手間がかかるな……」と思われたかもしれませんが、秋採用の良いところもあります。それは「見つけにくい」ということは「見つかれば、競争が激しくなく、採用しやすい(内定を受諾してくれやすい)」ということです。

春夏は、少し探せばいくらでも就職活動中の学生にアプローチできたかもしれませんが、その分、彼らはたくさんの企業を受けており、内定を出しても辞退されてしまうことが多かったと思います。

秋採用はその逆です。結局、探すのに労力がいるのか、口説くのに労力がいるのかということですから、決して秋採用も捨てたものではありません。ぜひトライしてみてください。

【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。

■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/