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山崎はるかが語る、自分であることを手放す“自分らしさ”「人と同じじゃなきゃいけないなんてない」

2019年08月27日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

山崎はるか

 山崎はるかが、1stフルアルバム『Cʼest Parti !!』を8月28日にリリースする。『ハヤテのごとく!』(水蓮寺ルカ役)や『アイドルマスター ミリオンライブ!』(春日未来役)で知られる声優の山崎はるか。2018年5月にTVアニメ『魔法少女サイト』エンディングテーマ「ゼンゼントモダチ」でアーティストデビューし、今作が初のアルバムとなる。


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 同作のテーマは「遊園地(テーマパーク)」。山崎自身がデモ制作やアートワークのデザインなどにも参加した意欲作で、収録曲「ヒヤシンス」で初めて作詞にも挑戦。彼女が考える“楽しい”を余すことなく詰め込んだ1枚となった。声優の中でもひときわ目を引く髪色やファッションで個性を発揮する山崎はるかが、念願の1stアルバムで表現した“自分らしさ”とは。歌手デビューから現在までを振り返りつつ、今後目指すべき歌手像についても話を聞いた。(編集部)


■私の“楽しい場所”のイメージがイコール遊園地


ーー昨年5月に、シングル『ゼンゼントモダチ』でアーティストデビューした山崎さん。その際の反響はいかがでしたか?


山崎はるか(以下、山崎):私が思っていた以上に反響がありました。デビューシングルは本当にたくさんの人が聴いてくれて、感想をいただけたのもうれしかったし、その流れで今回の1stアルバムに期待してくださってる方も多くて。私、「ぴょん吉」ってあだ名で呼ばれているんですけど、ジャケットを公開した直後から「ぴょんちゃんらしいね」とか「こういう感じ、似合う」って声をたくさん頂いたんです。アルバム自体はもちろん、ジャケットにも私の好きなテイストを詰め込んだので、それを「好き」と言ってもらえるのは本当にうれしいです。


ーー1stアルバム『C’est Parti!!』は、「遊園地(テーマパーク)」をテーマに作られた1枚だそうですね。


山崎:私、遊園地が大好きで。ディズニーランドに限らず、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)、富士急ハイランド、よみうりランド……と、いろんなテーマパークに足を運んでいるんです。世の中に様々な娯楽施設がある中で、私の“楽しい場所”のイメージがイコール遊園地なんです。


ーー昔から家族ともよく行っていたんですか?


山崎:そうですね。ホームビデオを見ると、「こんな小さい頃から行ってたんだ」ってビックリするくらいの年齢から。もともと私というより親が遊園地大好きで、物心つく前から休日はいつも連れて行かれました。自分で行けるようになってからも友達と行きまくって、ひとつのアトラクションのために1日を捧げることも(笑)。お気に入りの絶叫系に何十回と乗るんですけど、全然飽きないです!!


ーー好きな気持ちがよく伝わります(笑)。で、そんな愛してやまない場所と音楽を結び付けたのが今作だと。


山崎:はい。私のアルバムを聴いたときやライブを見たときに、まずは「楽しい」と思ってほしくて。だから私のイメージする最上級の「楽しい」をお届けしたい、という思いを持って作り始めました。メリーゴーラウンドやコーヒーカップをイメージした曲は可愛らしい音楽が流れているし、ジェットコースターならとにかく速い感じ……って、音やリズムのイメージもいろんな方向に考えられそうだなって。そんなところから、「1日限定の遊園地」みたいなコンセプトを頭に描きながら作っていきました。


ーーデモ曲のチョイスから山崎さんが関わったんですか?


山崎:いろんな作家さんにデモを作っていただいて、そのコンペディションから参加しました。メリーゴーラウンド、コーヒーカップ、ジェットコースター……って、ほとんどがアトラクションや曲の雰囲気を指定して1曲ごとに募集しました。


ーーということは、相当数のデモを聴いたんじゃないですか?


山崎:たくさん聴きましたね。選曲のポイントは「好み」と言ってしまえばそれまでなんですけど、中には、お風呂の中で何曲も聴いて「やっぱりこれが耳に残るな」みたいな直感的な選び方をした曲もあります。その選ばせてもらったものに対して「この部分のメロディだけ変えてください」とリクエストしたり、細かいところまでこだわって作っていきました。


ーー実際に完成したアルバムを聴くと、「遊園地」の1日の流れを意識したコンセプチュアルな1枚になっていますね。


山崎:順番はいろいろ考えたんですけど、これはあくまで遊園地を回るときの一例というか。「私ならこう回るな」っていう朝から夜までの流れをイメージして並べてみました。


ーー1曲目「パンピーナ!」はコーヒーカップ、2曲目「キセキ的☆スマイリュージョン」はメリーゴーラウンドがテーマの曲。最初はわりとマイルドなアトラクションからですね。


山崎:そうなんです。まずは肩慣らしからということで(笑)。


ーー中でも賑やかなサウンド感とファンタジックな歌詞が印象的な「キセキ的☆スマイリュージョン」は、本当に脳内でメリーゴーラウンドが回りました(笑)。


山崎:ありがとうございます。「キセキ的☆スマイリュージョン」はアルバムの中で一番年齢が低いイメージで、5歳くらいの子がメリーゴーラウンドの世界に入ったら……みたいな。曲中にはセリフもあって、せっかく声優としてもいろんな役をやらせていただいているので、もしCDから私のことを知ってくださる方がいたら、「声優」の部分をこのセリフで感じてもらえたらうれしいです。


ーー次は、お化け屋敷の「Dark Sweet Nightmare」へと進みます。


山崎:「Dark Sweet Nightmare」は、このアルバムを個人的な趣味として見たときの一番の推し曲です。日本ではなく外国の洋館のイメージで、入口からゴーストたちがウヨウヨお出迎えするようなちょっと不気味な雰囲気……。その世界観が個人的にはどストライクなんです。私が今言ったような曲のイメージをスタッフさんに伝えたら「そういう世界観が得意な人がいるよ」って紹介されて、エンドウ.さんというアーティストの方に依頼しました。そして曲が上がってきたときは、ただただ「わあ、すごい!!」って。まさに思い描いたとおりの世界観で、楽曲に一目惚れみたいな感覚でした。


ーー「Dark Sweet Nightmare」の歌詞は、多くのアニソン作品を手がける人気作詞家・こだまさおりさん。こちらもご指名だったんですか?


山崎:こだまさんはスタッフさんが私に仕掛けたサプライズというか(笑)。知らない間にオファーしてくださってて、「(こだまさんに)書いてもらったよ」って言われたときは本気で驚きました。こだまさんには今まで自分のキャラソンを書いてもらったことはあったんですが、ソロの曲まで担当してもらえるとは思わなかったし、そもそも私にとっては神みたいな存在。いただいた歌詞を見ると、エンドウ.さんのときと同じく「なんでこんなに私の脳内が分かるんですか!?」って。こちらからお伝えしたほんのちょっとのリクエストからここまで作品が膨らむなんて感激のひと言でした。しかも、こだまさんはレコーディングにも立ち会ってくださったんですよ。その日が初対面だったので、半泣きで「大ファンです」って伝えて写真も撮ってもらって……。レコーディングは最初、妙にドキドキして落ち着かなかったです(笑)。


ーーそして4曲目、休憩タイムのイメージで作られた「ChuChuパフェ☆SP」は本当に楽しくてアガる1曲ですね。


山崎:これはコンペで決まったんですが、その時点から「1曲だけ突拍子もない曲があるな」って。いわゆる電波ソングというか、とにかくこの曲だけいい意味で浮いてたんです(笑)。でも私はもともとそういう曲も好きだし、突き抜けてるからこそ引っかかるものがあるなって。歌詞はレーベルの先輩であるKOTOKOさんにオファーしました。KOTOKOさんに「好きなお菓子は?」とか「ウエハース好き?」って事前にいろいろ質問されて、「なんだろう?」と思いつつ私がお返事したその答えも盛り込みつつ、パフェをテーマにしたかわいくて面白い歌詞を書いていただきました。KOTOKOさん本当に天才的だなって思います。


ーーアルバム後半も、ジェットコースターがテーマの「Supersonic Mighty Dream」と「Dragon Dance」でアガり、帰り道を描いた「キャラメル」、パレードが浮かぶ「おいでBrand-new World!」とコンセプチュアルな楽曲が続きます。1日の終わりまでしっかり遊園地を楽しめる展開が見事ですね。


山崎:「Supersonic Mighty Dream」はとにかく速さを追求したジェットコースターで、「Dragon Dance」は大きく揺れて円も描いちゃうようなジェットコースター。同じアトラクションの中でもそういう違いを作れたのは楽しかったです。「キャラメル」はイルミネーションを見ながら帰りのゲートへ向かう感じ、「おいでBrand-new World!」はアルバム全体のイメージをまとめたような、まさに「遊園地」を象徴する1曲。最後まで思いきり楽しんで、それぞれお気に入りのアトラクション(曲)も見つけてもらえるとうれしいです。


■初めての作詞テーマは“ファンへの感謝”


ーーそんな今作の中には、自身初の作詞曲「ヒヤシンス」も収録されています。こちらは「遊園地」のテーマ性からちょっと離れた作品ですが、どんな思いが込められていますか?


山崎:まず作詞をした経緯からお話すると、スタッフさんに「自分でも書いてみたら?」って提案されたんです。でも未経験だし、自信もなかったので、最初は悩みました。私が書くより、その道のプロにお願いしたほうがいいんじゃないかって。そしたら「いい歌詞はプロにも書けるけど、思いを素直に込めるのは本人にしかできない」ってスタッフの方に言っていただいて、そこで「確かに……」と心が動きましたね。歌詞のテーマはいろいろ考えて、最初は「ファンの方への感謝」にしようと思ったんです。でも歌手デビューしてからまだ1年強で、それは早いかなというのがあり、それよりは「私がみんなを導いていくね」とか「ついてきて!」みたいな内容がいいかなって。


ーーなるほど。


山崎:あとは、じゃあそんな「私」の源はどこから来ているのかっていうのもファンの方に知ってもらいたくて、亡き母との思い出や母への想いみたいなところも詞の中で素直に書き綴っています。私、「遊園地が一番楽しい場所」っていうのもそうだし、料理や漫画好きになったのもみんな母の影響が大きいなって。当たり前ですけど自分のルーツとして切っても切り離せない存在だし、そんな親からどれほど愛をもらったか……というのも分かってもらうために、私しか知らない、あえてリアルな描写も入れました。もうずいぶん時間が経ったし、今書いても重たすぎないかなって。


ーーそういうことだったんですね。初めての作詞作業に対する感想はいかがでしたか?


山崎:本当に難しかったです。バラードなので音数が少なく、そこに言葉をはめていくとなると「これじゃあ音符が足りないな」とか。作詞をするって決まってから書き出すまでに、テーマを考えたり断片的に浮かんだワードをメモしたりしていたんですけど、思うようにはいかなかったですね。作詞期間は約1週間で、家だといろんな誘惑に勝てないので主に電車で、携帯のメモ帳を使って集中して書きました。


ーー「ヒヤシンス」というタイトルは何を意味しているのでしょう?


山崎:歌詞を分かりやすくしたぶん、タイトルはちょっと詩的というか、カッコつけたいなと(笑)。ヒヤシンスの花言葉に「悲しみを超えた愛」というのを見つけたときにコレだ! と閃きました。「ヒヤシンス」という名前の響きも曲調に合ってる気がして、迷うことはなかったです。


ーーこれを機に作詞は続けてみたいと思いますか?


山崎:機会があればやりたいです。ただ、ストレートな歌詞というよりもワケの分からない曲を書いてみたくなりました(笑)。私にしか分からないような言葉がループしてるとか、ちょっとした電波曲みたいなのも楽しそうですよね。もしくはオタク曲が書きたい!(笑)。普通の人には理解されないオタクの人だけに伝わるマニアックな歌詞をいつか書いてみたいです。


“自分は自分のままでいい”と思えるきっかけになった
ーー(笑)。では、本当に振り幅の広い全12曲が入った今作のタイトル『C’est Parti!!』についても教えてもらえますか?


山崎:フランス語で「さぁ、行こう!」といった意味なんですけど、私って、みんなに支えてもらうというよりはみんなの先頭に立って引っ張っていきたいタイプなんです。だから今回は遊園地の案内人になった気持ちで、この言葉をフランス語の中から見つけて名付けました。昔からフランス語の語呂やかわいいニュアンスが好きなのもあって。


ーー冒頭にも少し話題に出た今回のジャケットですが、胸元の「HARUKA.Y」のネームプレートはそういう理由だったんですね。


山崎:はい、テーマパークのキャストのイメージです!


ーーそれにしても今回のジャケット写真はポップでキュートでカラフル。鮮烈なアートワークになりましたね。


山崎:コスチュームは、私が紙でデザイン画を描いて、それを衣装さんに作ってもらったんです。遊園地に売ってそうなお菓子をいっぱい付けたいなと思って、ワンピースの首元にはポップコーンのモチーフを付けてもらいました。他にも、ジェットコースターの線路、アイスクリームが垂れてるところ、風船、観覧車……いろんな「遊園地」の要素が詰まっているのでぜひ注目してほしいです。中でもイチ押しは腰のシートベルト。普通の黒いベルトかと思いきや、本物のアトラクションのシートベルトなんです。なのでちょっと重いんですけど、どうしても「本物」を付ける夢を叶えたくて(笑)。


ーー面白いアイデアですね。山崎さんはそういうビジュアル面も含め、現在の女性声優アーティストの中で独自の方向性を進んでいる印象があります。


山崎:今回のジャケ写やアー写は、他の女性声優さんがあまりやってない「金髪」って部分を生かせたなと思うんですけど、誰もやってないような方向にとことん振り切って、キャラクターっぽく見てもらってもうれしいなって。全然興味のなかった人が、CDショップで「こういう世界観好き」ってジャケ買いしてくれてもありがたいし。


ーーなるほど。ちなみに髪色は常に明るめなんですか?


山崎:デビューしたての頃は少し暗めにしてたんですけど、ちょっと生きづらい感じがして(笑)。もともと根暗なので、髪が暗いと心まで沈んでしまうんですよ。だから基本は明るめ。私、小2から髪を染めていて、今まで真っピンクとか真紫っていうのもやったことがあって……。うちの地元、地域的に周りの子もみんな髪を染めてて1人だけ浮くとかはなかったし、私も髪色をイジるのは嫌じゃなかったので、自分からもお願いして定期的に染めてもらっていました。


ーーそうだったんですね。あと声優さんのアーティストデビュー作は、キャラソンではない「自分」の歌の表現に最初悩む人も多いと思うんです。そんな中、山崎さんは1stアルバムからここまで練り上げたコンセプトで表現しているのがすごいなと。


山崎:答えになってるか分からないんですけど、歌に関しては「自分」がなくていいやと思ってて。私、普段からカラオケに行ってもモノマネしかしないし、仕事でもキャラソンのキャラとしてでしか歌ったことがないんです。だから「私」として歌う瞬間は人生で本当にない。でもそのどれも自分だし、私の歌だし……っていう気持ちがずっとあって。だから今回も全部の曲に主人公を立てて、その目線で歌っているんです。「ヒヤシンス」でさえも「こういう子」というのを決めて、その子の物語として歌っています。


ーーどれも自分だし、自分じゃない。


山崎:だから言ってしまえば全部「CV:山崎はるか」みたいな。そこから好きな子を選んでもらえたらいいなって。


ーーでもそのほうが、ジャンルやスタイルを狭めることなく表現できそうですしね。


山崎:はい。友達の声優アーティストを見てると、1本のちゃんと確立した芯みたいなものがあって、自分もそういうふうにならなきゃって最初はちょっと焦った時期もあったんです。でも今回のアルバムを作るにあたって、歌いたい楽曲をピックアップしていったときに、やりたいことを1つに絞るなんてやっぱ無理だなと。人と同じじゃなきゃいけないなんてない、自分は自分でいいんだなって、今作はそう思えるきっかけにもなりました。


ーーそれによって、この突き抜けるような楽しいアルバムが完成したんですね。


山崎:歌に関してはもっとスキルのある人はいるし、まだ自信が持てないんですけど、「これを聴いて元気になってほしい!」とか「とにかく楽しい5分間(1曲)を作る」みたいな自信はちょっと出てきています。ライブに関しても、自分が上手く歌えたかどうかというより、みんなが笑っていたか、お客さんのどういう思い出になったかというのを今は重視していて。「楽しかった」とか「最高の1日になった」って言われたらやっぱり一番うれしいし、私のこの有り余る元気を、みんなにちょっとでもお裾分けできたらいいなって思っています。(川倉由起子)