2019年08月26日 10:31 弁護士ドットコム
「家事育児もろくにせず、ヒモ状態のモラハラ夫と財産分与したくありません」。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられています。
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相談者は夫と離婚することを考えています。
しかし、夫は週2回ほど実家が経営する会社の手伝いをするのみ。生活費を家に入れたことはないようです。一方で、海外旅行やコンサートに行ったり、17万円の時計などの高額な買い物をしたりすることも少なくなかったといいます。
相談者は子どもの教育費のため、コツコツと貯金をしてきたようです。その貯金が財産分与の対象になってしまうことに不安を抱いています。
「真面目に働き、家事育児をがんばってきたのに、私は報われないのでしょうか」と相談者は落ち込んでいる様子です。
離婚する際に、夫婦2人で築いてきた財産を分けることを「財産分与」といいます。分与の割合は公平であることが必要です。そのため、原則として、分与割合は「夫婦で半分」の2分の1となります。
しかし、夫婦の分与割合を2分の1とすると、不公平な結果を招いてしまうこともあります。たとえば、今回のように夫が生活費を入れずに浪費している一方で、妻がコツコツと貯金をする倹約家であるケースです。
民法768条3項は、夫婦が「その協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」分与の額および方法を定めるとしています。そのため、さまざまな事情を考慮し、2分の1とはならないケースもあります。
給与や貯金、不動産などのプラスの財産はもちろん、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も財産分与の対象となります。
ただし、夫婦どちらかの個人的な借金は対象とはなりません。たとえば、家族で使うために購入した車のローンは対象となりますが、ギャンブルや個人的な買い物のためにした借金は対象外です。そのため、連帯保証人などになっていないかぎり、このような借金を負ってしまう可能性は高くないといえるでしょう。
また、離婚前に別居していた場合、別居中にそれぞれが築いた財産は「共有の財産」とはなりません。そのため、財産分与の対象からは外れることになります。
今回のケースにおいて、相談者が子どもの教育資金のために貯めていた金銭は、財産分与の対象となるのでしょうか。
離婚問題に詳しい田村ゆかり弁護士は、貯金の名義や管理方法によって変わると説明します。
「貯金の名義が相談者である妻の場合、特有財産(夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産、婚姻中に相続・贈与等により取得した財産等)を除いて、共有財産として財産分与の対象となります。
一方、子ども名義の貯金で、すでに通帳・キャッシュカード・銀行届出印の保管や入出金手続等の管理を子ども自身がおこなっている場合は、子ども固有の財産として財産分与の対象から外れます。また、子ども名義の貯金の原資が子ども自身がもらったお年玉や祝い金、バイト代などである場合も同様です。
お子さんがある程度の年齢であれば、お子さん名義の貯金としてその通帳等の管理を任せたり、お年玉や祝い金をその口座に入金したりするなど、財産分与の対象から外すよう準備をしておいてはいかがでしょうか」(田村弁護士)
【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/