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「離婚調停に協力して」頼んできたのは、不倫相手の妻だった

2019年08月24日 10:31  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

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過去に不倫をしていた女性が、「相手の妻から、離婚調停に協力して欲しいと言われている」と、弁護士ドットコムに質問を寄せました。不倫相手とはすでに別れており、その際、妻に10万円の慰謝料を渡しています。8年前のことでした。


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その際、肉体関係は認めませんでしたが、実は不貞行為はありました。



妻は、複数女性との不貞行為を理由に離婚を要求しているものの、夫は事実を認めないため、書面で証言して欲しいと望んできました。相談者は「当時、家庭内の不仲を聞いていましたが、私も家庭を持ち、いかに甘い判断で相手の発言を鵜呑みにしてしまったか反省しております」として、妻に協力したいと考えています。



ただ、自分が慰謝料を支払わなくてはいけないのであれば、証言はできないとも考えています。女性が妻に協力する場合、逆に慰謝料を請求される可能性はあるのでしょうか。小坂誉弁護士に聞きました。



●「妻から慰謝料の支払いを求められる」可能性

「相談女性が、不倫相手の妻に協力した後、妻から慰謝料の支払いを求められることは想定される事態です。



妻は不倫相手の女性に対して、特段の事情がなければ離婚に伴う慰謝料は請求できません(最判H31.2.19)。したがって、この場合に問題になるのは、不貞行為慰謝料です」



相談女性は、以前10万円の慰謝料を支払っています。



「この際、妻との間で、肉体関係の有無にかかわらずそれ以上の請求はしない旨の合意を成立させていたのだとすれば、その合意を理由に支払を拒めます。



しかし、もし肉体関係が存在しない前提で合意がなされていたような場合、妻から、もし肉体関係があったと確信していれば合意などしなかったとして、詐欺又は錯誤を理由に合意の無効を主張されることもあります」



●不貞の時効は3年、経過していない可能性も

ーー8年前の合意でした。時効は関係しないのでしょうか。



「不貞は不法行為の一種なので時効期間は3年です。しかし、相談女性は肉体関係を認めていなかったのですから、消滅時効の起算点である妻が『損害を知った』時が訪れておらず、時効期間が経過していない可能性があります。



そこで、相談女性が協力する場合には、妻に対して『仮に肉体関係等が発覚したとしても妻から相談女性に対して不貞慰謝料等の要求は一切しない』旨の合意書の作成をお願いし、当該合意書が作成された後で妻に協力するという方法をとればよいと思います。



ただし、こうした申し入れ自体、肉体関係の存在を推認させる行為ですので、妻の真意を見極めて信用できると思えた場合にのみ申し入れを行うべきでしょう」




【取材協力弁護士】
小坂 誉(こさか・ほまれ)弁護士
大手渉外事務所である西村あさひ法律事務所においてパラリーガル、アソシエイト弁護士として勤務した経歴を持つ。依頼者のニーズを把握して、徹底したリーガル・リサーチに基づく解決策の提供を心がけている。離婚事件を多く手がけている。
事務所名:弁護士法人栃のふたば法律事務所
事務所URL:http://www.tfutaba.com