2019年08月24日 10:31 弁護士ドットコム
なにかと話題のキャッシュレス。新しい決済手段が次々に登場し、利用者の囲い込みを狙って大規模なキャッシュバックキャンペーンを行う会社も出てきました。
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たとえば、ソフトバンクグループ傘下の「PayPay(ペイペイ)」は2度の「100億円キャンペーン」を実施し、大きな話題を呼びました。現在も別のキャッシュバック企画が続いています。
キャッシュバックは魅力的ですが、会社の経費や飲み会の費用をキャッシュレス決済で払ったとき、キャッシュバック部分を自分で使っても良いのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。
キャッシュレス決済のキャッシュバックは、利用者と決済会社との関係での割引サービスです。具体的には、利用者が支払う代金の一部を決済会社が負担し、利用者に返金していることになります。
そうだとすると、キャッシュバックで戻ってきたお金やポイントはあくまでも決済会社から利用者に支払われたものであり、利用者がこれをどのように使おうと問題無いようにも思われます。
しかし、会社の経費を立て替えて支払う場合を考えると、通常は従業員が実際に立て替えた金額について、領収証等の資料と引き換えに会社が精算する形になります。
そうだとすると、キャッシュバックを受けた部分については事実上の支出がありませんから、従業員がその部分の金額を立て替えたと考えることはできません。
そうであれば、特に会社が許している場合を除き、キャッシュバック部分について会社から精算を受けたならば、この部分を二重取りすることはできないと考えるべきです。
キャッシュバック部分を含めて経費の精算を受けることは、実際に支出した金額より高額な領収証を提出することと実質的に同じであると考えるべきでしょう。
会社によっては社内規則でキャッシュバック等の利用を禁止したり、キャッシュバックを受けた場合にはその部分を差し引くよう規定したりしているところもありますが、規定がある場合はもちろん、規定が無い場合でも会社がOKといわない限り、キャッシュバック部分を着服したら、会社との関係で後々問題となる可能性が高いと考えるべきです。
また、友達同士の飲み会の精算でも、後々トラブルにならないように、キャッシュバック部分を立て替えた人がもらってもいいのか、それともキャッシュバック部分を差し引いて精算するのかをはっきりさせておく方がいいでしょう。
では、会社の経費支払いで航空会社のマイルやクレジットカード、各店舗のサービスカードのポイントをつけることはどうでしょうか。
これについても、会社によっては社内規則でポイントの付加を禁止したり、個人のクレジットカードでの決済を禁止したりしているところがあります。その場合にはポイントを付加することは会社との関係で問題になることは言うまでもありません。
では、明確に禁止していない場合はどうでしょうか。あくまでも筆者の私見ではありますが、キャッシュレス決済のキャッシュバックと異なり、どこの店舗でも使えるというわけではなく、また受け取ったポイントやマイルを現金相当額に換算した場合の金額もはっきりしない場合もあることから、マイルやポイントは必ずしも現金と同視することはできず、明確に禁止されていない限りグレーな状態である、と考えています。
もっとも、後々問題になる可能性はありますので、事前に会社に確認をしておいたほうがいいでしょう。
なお、QUOカードでのキャッシュバックをしているホテルの宿泊費もありますが、QUOカードはコンビニなど多くの店舗で現金と同様に使えることから、どちらかというとキャッシュバックに近い性質のものとして考えられると思います。
【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。交通事故や消費者被害などの民事事件のほか、刑事弁護にも取り組む。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、接見交通の問題に力を入れている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp/