F1は、2021年型マシンの空力デザインモデルを風洞実験で走らせる様子を、独占映像として公開した。
今年10月にはF1の新たな規則が決まることになっているが、F1とFIAは過去12カ月間にわたり、2021年導入のマシンについて、空力デザインの研究開発に力を注いできた。
初期の研究では、F1の持つ最先端のCFD(計算流体力学)が駆使された。その後、検証を行う目的で開発作業の場所は風洞施設に移され、50%スケールのモデルを使って、厳重な機密保持の条件下でテストが行われた。
F1のチーフテクニカルオフィサーであるパット・シモンズが率いる開発チームは、ザウバーがヒンウィルの拠点に持つ最新鋭の設備を使い、独立したコンサルタントグループとともに実験を行った。その際、アルファロメオF1チームに対してもあらゆる情報は部外秘とされ、施設への立ち入りも禁止となった。
これまで2021年型デザインのレンダリング画像とデザイナーによるスケッチは見ることができたが、公開されたビデオには18インチのホイール、サイドポッド、バージボード、そしてまだ比較的単純な形状のフロントウイングなどを含む実際のデザインコンセプトが初めて映し出されている。
全体として、デザインはすっきりとシンプルに整理された印象となっている。このデザインのマシンで、ドライバーがどんな状況下でも互いに接近して激しく戦えるようになることを、誰もが期待している。
「我々が行っている風洞実験は、チームが行うものとは若干異なっている」と、シモンズはF1公式サイト『Formula1.com』のインタビューで語った。
「チームは主にマシンが走り回るさまざまな状況において、どれだけパワーを出せるかに特化してテストを行う」
「我々も当然そうしたパワーや、特にマシンの走行中に起きる変化に関心を持っているが、それ以上にマシン後方で発生する乱気流の動きに注目している」
「そのため、我々が行う開発作業の大部分はチームにおいては通常あまり用いられないCFDで行っているものの、そうしたバーチャルなシミュレーションの結果を現実のシミュレーションで裏付けていくことを想定している」
「また、我々は60%スケールではなく50%のモデルを選択し、風洞でかなり長い距離を走らせることにした。そうすることによってマシンの乱気流の実態を最も良く調べられるからだ」
マシン後方に発生する気流は、一般的にオーバーテイクや別のマシンの直後につけたドライバーの走りに影響を与える。シモンズは、実験において2台目のマシンを1台目の後ろに配置する方法を採らなかった理由について、以下のように説明した。
「その方法は2008年に実施した。またオーバーテイクに関する研究も2009年に行っている。そのときは4分の1スケールのモデルを使わざるを得なかったが、それは実際に小さすぎた」とシモンズは語った。
「そのため今回はそうしないことを決めた。ザウバーの風洞ほどに大きな設備でも、現実にはひとつの形状で、2台のマシンを相当接近させなければならないだろう」
「我々がやろうとしているのは、実際のシミュレーションにCFDを用いることだ。実験は単に相互の関係を確認するために行っている」
F1の研究作業の進捗状況と、そこからより接近した面白いレースやもっと多くのオーバーテイクにつながるような知見が得られているのかを問われて、シモンズは研究結果が「実際に私がプロジェクト開始当時に想定していた達成目標を上回っている」と答えた。
「現時点のマシン形状については、素晴らしい実験結果を得ている」
FIAのシングルシーター部門の技術責任者を務めるニコラス・トンバジスは、広範囲に及ぶ研究開発プログラムで非常に有益な結果が得られている語る。
「今のところは大きな驚きがあるわけではない。気流の乱れについては、現行の50%レベルと比べて5~10%になっている。ただし、実験する厳密な形状その他の条件によって結果は異なってくる」とトンバジス。
シモンズは、進行中の研究開発プログラムから得た知見やデータはF1の全チームと共有しており、一方でいくつかのチームからも独自の研究結果を提供してもらっていると語った。
「各チームも非常に協力的だ。リソースを持つチームは多くのプロジェクトに参画してくれているし、進捗状況はすべてチームに共有されている」とシモンズは付け加えた。
「我々は数カ月おきにミーティングを行っており、またマシンの形状を知らせている。それを各チームがそれぞれのCFD環境下で走らせ、実験結果を我々にフィードバックしてくれている」
「それぞれが、できるかぎり関与してくれている。もちろんリソースを投入する余裕がないチームもあるがね」
「ある段階に到達するまでは、すべてのチームの実験結果は共有される。それ以降は、それぞれが新たなルールのなかで作業を続けていくことになる」
2021年型マシンの製作が目前に迫っているかのようだ!