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26年前に中学教師から受けた「性被害」、訴えた教え子が敗訴 「時間の壁」越えられず

2019年08月23日 17:13  弁護士ドットコム

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中学3年生だった15歳の時から、当時在校していた札幌市立中学の男性教師にわいせつな行為をされ、その後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したとして、フォトグラファーの石田郁子さん(41歳)が教師と札幌市を相手取り、約3000万円の損害賠償を求めて提訴した裁判の判決が8月23日、東京地裁で言い渡された(田中秀幸裁判長)。


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訴状などによると、石田さんは1993年3月、中学卒業式の前日に教師から呼び出され、キスされるなどわいせつな行為をされたという。わいせつな行為は19歳になるまで繰り返され、石田さんは2016年2月にPTSDを発症したと訴えていた。



争点となったのは、20年間を経過すると賠償請求の権利が消滅してしまう「除斥期間」を過ぎているかどうかだった。石田さん側はPTSDと診断された2016年を起算点としたが、裁判所はこれを認めず、除斥期間は過ぎていると判断した。石田さんは控訴する意向を示している。



●「どんな性被害があったのか裁判で聞いてもらえなかった」

石田さんは裁判や取材で度々、子ども時代に受けた性被害の特殊性を訴えてきた。



「性被害に遭ったことを、すぐに気づくことは子どもには難しいです。大人になって体に不調が出てから、やっと気づく場合もあります。医療関係者の間では、被害から20年、30年経って発症するのは当たり前だそうですが、世の中には知られていません。子ども時代に性被害があっても、時間が経っているからとあきらめてしまう人もいます」



除斥期間はこれまで同様の裁判でも、「壁」となってきた。最高裁は2015年5月、幼少期に親族の男性から性的虐待を受け、後にPTSDやうつ病を発症したと女性が訴えていた裁判で、2006年に発症したうつ病については請求権を認めた二審の札幌高裁判決を支持した。



しかし、1983年に発症したPTSDは除斥期間が過ぎているとして認めていない。今年7月にも、約30年前に通っていた富山県内の小学校で当時教頭だった男性からわいせつ行為を受け、PTSDを発症した40代女性が損害賠償を求めたが、金沢地裁は除斥期間が壁となって、女性側が敗訴している。



今回も、判決文では「仮に損害賠償請求権が成立するとしても、除斥期間の起算点は教師による最後の加害行為のあった1997年7月ごろになり、20年の除斥期間は経過している」と結論づけた。



判決後、石田さんは、「性被害の事実認定をする前に判決が出てしまいました。どんな被害があったのか、聞いてももらえない」と悔しさをにじませた。石田さんは提訴前に、札幌市教育委員会に教師の処分を求めてきたが、教師が否認しているなどとして拒否したという。石田さんは、控訴の意向について、「これ以上、自分と同じような被害者を出したくない」と語った。



判決を受けて、札幌市では「原告の訴えが棄却されたという事実だけ把握していますが、判決の内容を確認した上で、誠実に対応していきたいです」と話している。