2019年08月23日 11:11 弁護士ドットコム
親も頭を抱えてしまう小学生の夏休みの宿題。中学受験を控えた子どもがいるという親が「夏休みの宿題はしんどいです。『宿題代行サービス』などを利用しますか」という質問をインターネットのQ&Aサイトに寄せています。
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読書感想文や自由研究などを代わりにおこなってくれる「宿題代行サービス」。実際に代行サービスの仕事をしているという40代の女性は「夏休みは多くのお母様から依頼をいただきますよ。自由研究の仕事は時給6000円です。コンクールに出展する場合は時給1万円以上いただくこともありますね」と話します。
親子ともに負担は減りそうですが、「宿題をお金で解決することには反対」などという意見も少なくないようです。
投稿に対しても「中学受験を考えているような子は、2日もあれば、自力で感想文と自由研究以外は終わらせます」、「当たり前のことを当たり前に出来なくてどうしますか」などと問題視する意見が多くを占めました。
一方、「学校の夏休みの宿題なんてやってる余裕はありません。読書感想文の宿題外注は、値段が安いので、頼む家庭も多いと思います」という肯定的な意見も。中には、宿題代行サービスには頼まないものの「親がやっている」場合もあるようです。
そもそも、「宿題代行サービス」を利用することに法的に問題はないのでしょうか。中西祐一弁護士に聞きました。
ーー「宿題代行サービス」の利用は「犯罪」にあたる可能性はあるのでしょうか 「夏休みの宿題が成績評価に関係するかどうかによって結論が異なってくるでしょう。夏休みの宿題の提出の有無が成績評価において考慮されないならば、犯罪にはならないと思われます。
しかし、成績判定の材料となる場合は、実際には『宿題をしていない』にも関わらず『宿題をした』として提出することになります。そのため、『嘘をついて学校の成績判定業務を誤らせた』こととなります。
これは、刑法233条に定める『偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した』として、『偽計業務妨害罪』にあたる可能性が高いと思われます」
ーーコンクールに出展する場合も「偽計業務妨害罪」にあたる可能性はあるのでしょうか
「あります。コンクールの審査業務を誤らせる恐れのある行為として、『偽計業務妨害罪』になる可能性が高いといえます。
また、コンクールの入賞者に対して何らかの賞品が与えられる場合には、『詐欺罪』にあたる可能性もあるでしょう」
ーー「宿題代行サービス」の利用については、否定的な意見も少なくありませんが、肯定的な意見もあるようです。中西弁護士はどのようにお考えですか
「たしかに、夏休みの宿題については、『量が多すぎる』とか、『宿題を真面目にやっていると受験勉強や夏休みにしかできない体験に割く時間がなくなる』という問題も指摘されているところです。
しかし、『自分でやらなければならないものをお金で解決する』、『本当は自分でやっていないのに、自分でやったと嘘をつく』ことを親が子どもに教えることは、教育上、好ましいこととは思えません。
教育上の観点からも、『宿題代行サービス』の利用は控えた方がよいのではないでしょうか」
【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net