2019年08月23日 11:11 弁護士ドットコム
「SNSで知り合った男性と肉体関係を持ち、子どもを出産しました。認知してもらうことはできますか」。弁護士ドットコムにこのような法律相談が寄せられています。
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相談者によると、男性と会った回数は3回とのこと。妊娠が分かったときに男性に相談するも、男性は「知らない」と一言。その後は連絡が途絶えてしまったようです。
「妊娠6カ月が過ぎてしまい、中絶することもできず、出産に踏み切った」と相談者はいいます。男性に認知してほしいと思っていますが、相手とのやり取りなどはすべて削除してしまったため、不安を抱いている様子です。
このような場合、男性に認知をしてもらうことはできるのでしょうか。
認知には、「任意認知」と「強制認知」の2種類があります。「任意認知」は、子の父親でる男性が自分の意思で認知することをいいます。父が認知届を市区町村役場に提出すれば、認知の手続きは完了となります。
しかし、今回のように、父が任意に認知をしてくれない場合もあります。この場合は、裁判上の手続きによって、強制的に認知をさせる「強制認知」を求めることになります。
強制認知を求めるためには、まずは家庭裁判所に認知調停を申し立てなければなりません。離婚の手続きと同じように、調停が成立しなければ審判、そして裁判へと進みます。
認知が認められるためには、親子関係の証明が必要です。証明するための方法としては、DNA鑑定があります。
相談者に限らず、男性がDNA鑑定を拒否することへの不安を抱いている人も少なくありません。しかし、男性がDNA鑑定を拒否したとしても、その他の客観的な証拠から父子関係があると判断されることもあります。
相手の男性が行方不明の場合でも裁判をすることはできます。この場合は「公示送達」という手続きが取られることになります。
公示送達は、裁判所の掲示板に文書を掲示することで、相手方に訴状が届けられたことにするというものです。公示送達後2週間がすぎると、相手方が出頭しなくても裁判を進めることができます。
相手男性の親族や身内とのDNA鑑定も可能ですが、強制することはできません。このため、立証が難しくなることから、行方不明者が相手の強制認知は困難といえるでしょう。
今回のケースでは、相談者は客観的な証拠となりそうなやり取りの履歴などを削除してしまったようです。このような場合において、相手男性がDNA鑑定に非協力的な場合は認知は難しいのでしょうか。
男女問題に詳しい田村ゆかり弁護士は「認知の訴えにおいて、母・子側は子が相手男性の子であることを立証する責任があります。DNA鑑定をおこなえば、100%に近い確率で父子関係の存在が判明します。しかし、相手男性がDNA鑑定を拒否した場合、裁判所がこれを強制する方法はありません」。
では、DNA鑑定ができない場合、どうすればよいのでしょうか。
「母・子側は(1)母がこの懐胎時期に相手男性と性的関係があり、(2)子と相手男性との間に血液型の違背がないことを立証すれば、父子関係の証明がなされたものとされます(最高裁判所昭和32年6月21日判決)。
(1)の立証のためには、もちろん母と相手男性とのやりとりの履歴があった方がいいですが、ない場合には陳述書・証言等で立証可能かを検討しつつ、方針を決めることになるかと思います」(田村弁護士)
【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。
事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/