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フー・ボー監督29歳の遺作『象は静かに座っている』予告編、坂本龍一ら賛辞

2019年08月22日 11:10  CINRA.NET

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『象は静かに座っている』 © Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen
映画『象は静かに座っている』の公開日が11月2日に決定。予告編とビジュアルが公開された。

『第68回ベルリン国際映画祭』国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞スペシャルメンションを受賞した『象は静かに座っている』は、29歳のフー・ボー監督が自身の同名短編小説を映画化したもの。炭鉱が廃れ、世間に見放された中国の田舎町を舞台に、暴力で自分を守る男、将来の目的を見い出せない少年、教師と関係を持つ少女、家族に突き放された老人の4人のある1日を描く。同作はフー・ボー監督の長編デビュー作となり、監督は作品完成後に自ら命を絶った。

公開された予告編では、女性が「彼には関わらない方がいい、危ない奴だから」と口にする姿をはじめ、男性が「お前なんかクズだ! 最低の人間だ!」と叫ぶ様子、「世界は一面の荒野だ」という言葉、バットで殴られた人物が叫び声をあげるシーンなどが確認できる。

またビジュアルには、登場人物たちの姿が写し出されているほか、「世界の果てを一緒に見に行こう きっと未来は変わる」というコピーが使用されている。

さらに、坂本龍一、タル・ベーラ、『東京フィルメックス』ディレクターの市山尚三のコメントが公開。坂本龍一は「20歳台の若い監督が作ったのに、とてもノスタルジックだ。好きな映画だ。29歳で自殺した監督、胡波フー・ボーの映画を、たくさん観たかった」と評している。

タル・ベーラは「彼は気品に溢れ、共に素晴らしい仕事をすることができた。彼の目には並々ならぬ、強い個性が表れていた。クソ!彼をちゃんと守れなかったことに、私は責任を感じている」、市山尚三は「これほどの才能ある監督の新作をもはや見ることができないという事実は悲劇でしかないが、一つ一つのショットに刻み込まれた魂の記録とも言うべき本作に心揺さぶられないものはいないだろう」と述べている。

■坂本龍一のコメント
この映画のペースが好きだ。4時間近くと長い映画だが、無駄なショットがあった記憶はない。昨今、目にすることの多い、金満でIT先進国で資本主義的な中国とは全く違った日常が映し出される。その暗いけれど、甘く懐かしいトーンが好きだ。それは音楽からも来ていると思う。歪んだギターを中心に、昔聴いたことのあるチープなシンセのシンプルな絡み。20歳台の若い監督が作ったのに、とてもノスタルジックだ。好きな映画だ。29歳で自殺した監督、胡波フー・ボーの映画を、たくさん観たかった。

■タル・ベーラのコメント
私の“生徒”であり、私の友、私の家族である君がいないことを残念に思う。何百人もの中国人監督が私と働きたいと出願してきたが、彼に会い、すぐに心が決まった。一切の迷いもなく!彼は気品に溢れ、共に素晴らしい仕事をすることができた。彼の目には並々ならぬ、強い個性が表れていた。クソ!彼をちゃんと守れなかったことに、私は責任を感じている。残念でならない。彼は、両方の端から彼というろうそくを燃やしていたのだ。今ここにあるすべてを手に入れようとした。私たちは彼を失ったが、彼の映画は永遠に私たちと共にある。フー・ボーの映画を迎えてください。そして私と同じように彼を愛してください。

■市山尚三のコメント
「象は静かに座っている」は次々と新たな才能が登場しつつある近年の中国映画の中でも稀有な傑作である。まずは、この作品が日本で劇場公開されることを喜びたい。これほどの才能ある監督の新作をもはや見ることができないという事実は悲劇でしかないが、一つ一つのショットに刻み込まれた魂の記録とも言うべき本作に心揺さぶられないものはいないだろう。