2019年08月22日 09:21 弁護士ドットコム
雑草の「クズ」を知っていますか。ネット上では「最強の雑草」とも言われるほど、しぶとく、たくましく育つ雑草です。そんな雑草に悩まされる方が、弁護士ドットコムに質問を寄せました。
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相談者によれば、毎年夏になると、隣家からクズが侵入してくるそうです。その様子は「たくましい生命力で茎を水平に延し、周囲を覆います。放置すると1カ月後には拙宅の庭は厚いクズの層で覆われます」と、ゾッとするような光景です。
隣家に頼んでも除草はせず、市役所に頼んでも効果はありませんでした。そこで「簡易裁判所での調停」という手段を考えているそうです。このような場合、簡易調停は申し立てることはできるのでしょうか。民事調停官の経験がある横山清亮弁護士に聞きました。
「最近はお隣同士でも関係が希薄化し、互いの生活様式を巡ってトラブルになることがあります。市民同士の問題に関しては、行政ではなく、裁判所が紛争解決機関となる民事調停という手続きがあります」
具体的には、どのような制度でしょうか。
「一言でいえば裁判所を利用した話し合いの手続です。
まず、当事者の一方が申し立てをすると、裁判所が期日を定めて相手方当事者を呼び出し、話し合いの場を設定します。
期日では通常、裁判官もしくは民事調停官と調停委員2名から成る調停委員会が手続を主宰し、各当事者は調停委員を通じて話し合いを進めて行きます。
そして、互いの言い分が出尽くし、双方の合意点を見いだせた場合には、裁判所が合意内容を記載した調停調書を作成します。この調停調書は裁判の判決と同じ効力を持ち、内容にもよりますが約束違反に対しては強制執行も可能です」
法律に詳しくない人でも、進められるのでしょうか。
「申し立ては裁判ほど難しくなく、当事者本人だけでも利用が可能です。簡易裁判所の窓口に行けば、申し立ての仕方を教えてもらうことができます。
民事調停は、話し合いにより合意を目指す手続という特性から、トラブルに対して柔軟な解決を図りうることがメリットであり、裁判のように厳密に権利や義務があるといえなくても利用は可能です。
さらに調停委員が公平な立場でトラブルの解決に向けて尽力してくれますので、当事者だけでは感情が先立ってしまう事柄でも解決可能な場合があります。
本件は、お隣同士で今後も関係が続くことを考えれば、双方の言い分を踏まえた解決を図ることが妥当であり、まさに民事調停による解決が適切な事案といえます」
【取材協力弁護士】
横山 清亮(よこやま・きよあき)弁護士
簡易裁判所にて民事調停官として2期4年間執務した後、現在、民事調停委員。民事調停官在任中は約370件の民事調停事件を担当。民事のほか刑事、家事全般を扱う。
事務所名:エバー総合法律事務所
事務所URL:http://ever-lawyers.jp/