86/BRZ第6戦十勝第2ヒート表彰台 GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第6戦が十勝スピードウェイで、8月17~18日に開催され、プロフェッショナルシリーズでは谷口信輝(KTMS 86)が1年ぶりの優勝を飾り、クラブマンシリーズでは水野大(GRガレージ新大阪86 DL)がEXPERTクラスで2勝目をマーク。そして初めての混走となったOPENクラスでは、今井清則(すごいねBR-ROM 86)の連勝となった。
台風10号接近の影響が大いに心配された、十勝が舞台の第6戦ながら、その台風は北海道に近づく前に日本海で温帯低気圧に変化したため、金曜日の夜半こそ強い風雨に見舞われたものの、土曜日の朝には青空が広がるまでに。
予選が始まるまでには路面も乾いていたが、まさに台風一過。北海道とは思えぬ猛暑の中で、予選と決勝ヒート1が行われた。
前日まで雨で路面が濡らされ、しかもコースサイドの芝や土は雨をまだ含んでいたこともあり、完全に乾いていたといっても、路面状態は決して良いとは言えないなか、まずクラブマンシリーズの予選が行われた。
そんな状態でも早めにアタックした神谷裕幸(ネッツ中部GRGミッドレス86)がトップを守り続けていたのは、コースアウトする車両が相次ぎ、そのつど路面は汚れていったためだ。
不運だったのは、ポイントリーダーの橋本洋平(カーウォッチBS 86 revo)で、後半勝負をかけるも、それが黄旗2本振動のタイミング。あえてアクセルを緩めざるを得ず、8番手に甘んじてしまったのだ。
しかし、ほとんどのドライバーがアタックを終えて、コースがクリアなセッション終了間際に神谷のタイムを上回ったのが水野だった。
「いったんピットに戻って、聞いたらコンマ1秒差というので、『行けないことはない』と思ってもう一度。賭けに出ましたが、自分の中では『吉』と出たと信じています」と水野。というのも、それまでに8周も走っていたからだ。
逆転された神谷は「このコースは確かに抜けないですが、そんなに走ったら……。今日はともかく明日がたぶん厳しいはず」と冷静に分析していたのだが。
そんな状況を見ていたから、続いて行われたプロフェッショナルシリーズの予選は、まるでスーパーGT GT500クラスかのように誰もすぐピットを離れず。4分間経過して、ようやく服部尚貴(OTG DL 86)ら数人がコースインするも、想定どおりのタイムは出ていなかった。やむなく残り5分間にアタックが集中する羽目に。
そのなかでもギリギリまでの我慢を、谷口が実らせてポールポジションを獲得することとなった。
「残り5分からって決めていたんですが、みんな出ないからビックリ。誰かのタイムを見てから路面のグリップ感を想像しようと思っていたら、服部さんが行ってくれたので『路面、悪いな』って。で、残り5分で行ったら計測器が動かなくて、自分のタイムがまったく分からなかったので、念のためにもう1周行って帰ってきたら、ポールだっていうから嬉しかったね。スパ(スパ24時間)に行ったから前回の富士を休んでいるんで、タイトル争い的にも、この十勝で(得点を)稼がないといけないと思って乗り込んできて、抜けないサーキットだし、とにかく予選が大事だってことで、第一関門をいちばんいいところでクリアできて良かった」と谷口。
ランキング2位の近藤翼(DTEC☆神奈川トヨタ86R)が谷口にコンマ15秒差で続き、3番手は佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)。一方、近藤を0.5ポイント差で抑えてランキングトップの堤優威(ADVICSカバナBS 86)は、制御系トラブルで15番手に沈んでいた。
■2018年王者の谷口信輝、ヒート1&2で連勝で十勝制覇
クラブマンシリーズのヒート1は、フロントローに並んだ水野、神谷が揃ってスタートを決めて、いきなり激しく火花を散らし合う。その争いに近づいていったのが、鶴賀義幸(栃木トヨタBS ED/T2F 86)だった。鶴賀の勢いに押された神谷は、やがて水野のリードを許してしまったばかりか、10周目の1コーナーで逆転されてしまう。
終盤の水野、鶴賀は単独走行。神谷は背後に大島和也(Team MDI/P京都WM 86)と松井宏太(ネッツ青森アップルRC 86 DL)を置いた状態ながら、辛くも3番手をキープした。「今のところ、賭けはまだ『吉』のままです。後半は抑えることができましたし、タイヤもキープできたと思います」と水野。一方、橋本はふたつ順位を上げて6番手でゴール。
日曜日のヒート2は、鶴賀がスタートを決めて水野の前に出たのに対し、神谷は完全にスタートを失敗。大きく順位を落として、目論見に反した状態になってしまう。驚くべくは、そういった波乱にも乗じて、橋本が3番手に躍り出ていたことだった。予選でタイヤを使っていたこと以上に、このレースウィークの水野は絶好調。いったんは逃げようとした鶴賀を3周目には捕らえ、5周目の4~5コーナーで再びトップに浮上する。その後のスピードにも衰えはなく、水野が第1戦以来の2勝目をマークした。
橋本は松井の追撃を最後まで凌ぎきり、3位でゴールを果たした一方で、神谷は6位でゴールするのがやっとだった。
「レース2で前に出られた時は『どうしよう』と思ったんですが、やっぱり自分の方がペースいいのは、すぐ分かったので、後ろから見て速いところ、遅いところをしっかり見定めてアタックできたのは、ポジション取り戻せた要因かと。まだしっかり頑張って、残り2戦戦っていきたいと思います」と水野。
なお、混走のOPENクラスは2ヒートとも今井がトップでチェッカーを受け、前回の富士に続く2連勝を達成。快進撃の理由は「練習の賜物っす!」と強く語っていた。
志賀俊方(c.s.i GRG水戸インター86)が2位で、3位は元プロ野球選手の山崎武司(OTG TN滋賀86)が獲得。予選では元スピードスケート金メダリストの清水宏保(GR Tokyo Racing 86)が、山崎を上回っていたが、ヒート1のクラッシュが響いて完走扱いにならず。スポーツマン対決で、山崎に軍配が上がっていた。
プロフェッショナルシリーズのヒート1は、近藤が好スタートを切って谷口に迫るが、しっかりインを締められて逆転ならず。その後、佐々木と青木孝行(ケーエムエス フェニックス86)も加えて激しいトップ争いを演じるも、7周目の1コーナーで近藤にブレーキミスが。その間に広げた差を最後まで守って、谷口がトップチェッカーを受け、1年ぶり、2019年シーズン初優勝を掴んだ。
「僕のクルマはストレートがあっち(近藤)に負けていて、1コーナーがいちばん危ないんだけど、幸いリミッターがあるおかげでなんとか。後ろを見ながら得手、不得手を探りながら行っていたら、セクター3は僕の方が速いから、そこまではビシバシ来るんだけど、そこでなんとかストレート守れるという感じ。翼がミスして離れてくれた周だけはプッシュしました。明日も逃げたいと思います」と谷口。
ヒート1は平穏のうちに幕を閉じたが、ヒート2はまるで対照的な展開となった。ただし、谷口のまわり以外で。4番手からスタートするはずだった青木が、パンクでタイヤ交換を強いられたことで、ピットスタートとなったことも、その要因のひとつか。
ここでも序盤は谷口と近藤の一騎討ちにならず、佐々木と井口卓人(CG ROBOT BRZ BS)も含めた4台でのトップ争いに。だが、「序盤は我慢」と静観を決めていた谷口に、思いがけず好機が訪れた。
5周目の1コーナーで井口が佐々木に迫り、その余波が先行する近藤にも及んでしまったのだ。3人の順位はそのままながら、これでやや間隔が空いたことで、谷口は一気にプッシュ!
さらに6周目の7~8コーナーでも混乱があり、これで近藤も単独走行とした一方で、井口と6~7番手を走行していた平中克幸(GY RACING 86)や服部らが大きく順位を落とす。代わって4番手には久保凛太郎(CG ROBOT BRZ BS)、5番手には堤が浮上。
そして11周目の1コーナーでも佐々木と久保に波乱が生じ、その脇をすり抜けた堤が3番手に浮上する。堤は11番手から、予選から振り返れば15番手からの大躍進だ。
そんな後続の大きな順位変動を尻目に、谷口は難なく逃げ切って十勝で2連勝。「(タイヤの)内圧低めというのもあったけど、とりあえず間が空くまでは無理せず行こうって。一回、1コーナーでゴタゴタがあって空いたから、さぁ逃げようって! そこからプッシュして逃げました。翼が残念ながら2位だけど……。えっ、堤も3位? なにしとんねん(笑)」と谷口。
残るは、もてぎと岡山の2戦のみ。まだまだチャンピオン争いは、熱く繰り広げられそうだ。