2019年08月21日 20:02 弁護士ドットコム
インターネット上で漫画やアニメを無断掲載する「海賊版サイト」の対策をめぐり、京都弁護士会(三野岳彦会長)は8月21日、ブロッキング(アクセス遮断)の導入や、ダウンロード違法化の範囲拡大することに反対する意見書を公表した。ダウンロード違法化の範囲拡大については、有志の弁護士が反対声明を出していたが、弁護士会が意見書を出したのは今回が初めて。
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この意見書は、ブロッキングについて、「インターネットにおける情報の受信を強制的に阻害するものであり、(通信の秘密を定めた)憲法21条に違反する疑いが極めて高い」「安易に認められるなら、今後、海賊版サイト以外の情報の受信に関してもブロッキングが提供される途を開くことになりかねない」「改めて議論の俎上にあげること自体相当でない」と強く批判している。
また、ダウンロード違法化の範囲拡大についても、「海賊版サイト対策としての有効性が乏しいにもかかわらず、刑罰対象の拡大により、インターネット利用者の情報収集に対するいたずらな萎縮効果を不可避的に伴う」「さまざまな活動が不当に阻害されるおそれが高い」と反対している。
政府はこれまで、海賊版サイトの対策として、ブロッキングの導入やダウンロード違法化の範囲拡大を検討してきた。
しかし、ブロッキングは「通信の秘密」を侵害するおそれがあるという批判が強くあり、その法制化の議論はまとまらず、無期限延期とされている。また、ダウンロード違法化の範囲拡大も、「ネット利用を萎縮させる」と反対されて、法案提出が見送りとなった経緯がある。
だが、時事通信によると、今年7月、政府・知的財産戦略本部の有識者会議で、出席した委員の中から、ブロッキング法制化の議論を早期に再開する意見が出たという。また、同会議で提示された海賊版サイトの総合対策案では、「ダウンロード違法化を速やかに進めること」が明記されていたという。
こうした状況から、少なくともダウンロード違法化の範囲拡大の法案が「ゾンビのように蘇ってくるのではないか」という声があがっている。
京都弁護士会の意見書は、安倍晋三首相と平井卓也内閣特命相(知的財産戦略)など5人の閣僚に向けたもの。ブロッキングの導入とダウンロード違法化の拡大に反対したうえで、プロバイダ責任制限法を改正して、著作権者による事後的な救済を容易にする方法など「より謙抑的な方法」について、具体的な検証を十分におこなうことを提案している。
【京都弁護士会】海賊版サイト対策のためにブロッキングの導入及びダウンロード違法化の範囲拡大をすることに反対する意見書
https://www.kyotoben.or.jp/pages_kobetu.cfm?id=10000035&s=ikensyo