2019年08月21日 20:02 弁護士ドットコム
塗装会社の女性社員2人(いずれも20代)が、長時間労働やセクハラ、パワハラが原因で精神疾患を発症したとして、労働基準監督署に労災認定されたことがわかった。代理人弁護士が8月21日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで記者会見し、明らかにした。
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2人が働いていたのは、塗装会社「ユーコーコミュニティー」(神奈川県厚木市)。同社は女性の塗装職人が多く働いているとうたい、複数のメディアに「女子力で急成長」「塗装女子 急増のヒミツ」などと取り上げられている。
代理人の笠置裕亮弁護士は「女性が働きやすいとアピールしている会社。求人の文句につられて就職した若者が、使い潰されてしまっている」と指摘する。
2人は美術大学を卒業後、2017年4月に同社に入社。2人は技術職希望だったが、支店への仮配属後は営業をする決まりで、1日200軒の訪問や月300万円などの厳しいノルマがあった。「逃げたくなったら死ぬ気でやれ」といった指導や社内恋愛を推奨するようなセクハラも行われていたという。
2人は2017年11月ごろ、うつ病を発症し、2018年6月に労災を申請。Aさんは2019年1月11日付で平塚労働基準監督署、Bさんは19年7月2日付で厚木労働基準監督署から労災認定された。
Aさんは時間外労働が85時間29分にのぼり、同期社員がいる前で会長から「お前のことを嫌いになるよ」など叱責されたこと、セクハラなどがあったことが認められ、心理的負荷の総合評価が「強」と判断された。
Bさんも労働時間の変化やセクハラ、2週間以上の連続勤務などの事実が認められ、心理的負荷の総合評価が「強」と判断された。
会見でAさんは「女性が活躍できる、している会社だと前面に打ち出して求人をしているが、いざ入社してみると、長時間労働は当たり前で、セクハラパワハラは見て見ぬ振りという非常に劣悪な労働環境でした」と告白。
Bさんは、仕事が多い時には200軒の訪問と合わせて、2軒の工事現場管理・写真撮影、日没からはチラシを200枚配布し、帰りが深夜になることもあったと話した。
200軒のノルマがこなせない場合は、夜の終礼でなぜ達成できなかったか大声で言わされたり、罵倒されたりしたこともあったといい、Aさんは「必ず達成しないといけないという強迫観念のようなものがあった。逃げる選択もあったと思うけど、過剰なノルマと長時間労働で思考力も奪われていった」と振り返る。
代理人の笠置弁護士によると、2人の同期社員は16人いるが、入社から1年たらずで半数程度が離職。1人は横浜地裁で残業代とパワハラの慰謝料を求める訴訟を提起しているといい「異常な会社だ」と指摘。「精神的に会社に縛り付ける文化が蔓延していた」と話した。
ユーコーコミュニティーは弁護士ドットコムニュースの取材に、以下のようにコメントした。
「弊社の元従業員の方が精神疾患に罹患されたことにつきましては、弊社といたしましても大変遺憾に存じます。労災認定につきましては、労働基準監督署の調査結果等の内容を確認できておりませんので、コメントを差し控えさせていただきます。
弊社では現在、労働環境の改善に向けた諸般の施策を実施しており、今後も労働環境の改善に向け、真摯に取り組んで参る所存です」