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ファーウェイがアフリカで政府のスパイ支援? 反政府勢力の動き封じ込める

2019年08月20日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイ(華為)が、アフリカのウガンダ・ザンビア政府が国内で行なうスパイ活動を支援している、との報道が過熱している。


(参考:ファーウェイ、独自OSで米中貿易戦争へ対抗 Androidよりも「安全・高速・柔軟」?


・実績あるアフリカで一線を越える、ファーウェイは否定
 元々ファーウェイは、アフリカ等の開発途上地域で政府向けに監視やセキュリティーに用いられるビデオ監視システムや顔認証システムといった機器の販売実績が豊富だ。しかし、政府の情報当局の要請を受け、ファーウェイの従業員が一線を越えて、同社のテクノロジーやイスラエル製のスパイウエア等を用いて通信アプリを傍受し、反政府勢力の動きを封じ込めていたことを『ウォール・ストリート・ジャーナル』が8月14日に報道した。


 『ウォール・ストリート・ジャーナル』はこのことについて、「ビデオやインターネット、携帯電話メタデータの監視は国家安全保障の取り組みとしては、ごく一般的だが、治安当局関係者によると、ファーウェイの場合は、当局の情報部門等に直接トレーニングを施しており、かなり踏み込んだ関与を行っている」と報じた(参考:https://www.wsj.com/articles/huawei-technicians-helped-african-governments-spy-on-political-opponents-11565793017)。


・反政府コンサート未遂で多数の検挙者、当局が事前に察知
 33年間、ヨウェリ・ムセベニ政権が続くウガンダでは、ラッパーで政治家のボビ・ワイン氏のゲリラライブに11人の政治家が登場し、ヨウェリ・ムセベニ大統領の退陣を要求する段取りになっていた。しかし、当局は、通常の音楽コンサートと異なる政治集会であることを突き止め、参加者を一網打尽にした。会場に向かっている途中に身柄を拘束された関係者もおり、恐ろしいくらいの手際の良さだった。


 当局は、ワイン氏がWhatsappやSkypeといった通信アプリで交わしたやり取りの暗号解読に成功し、反政府勢力の動きを把握していたという。ワイン氏は逮捕され、頭蓋骨が欠けるほどの暴行を受けた。何ら予告もなかった政治集会や登壇予定者詳細を嗅ぎ付けられたボビ・ワイン氏は、スパイされていることを確信したそうだ。逮捕された多くの支援者の裁判は今も続いており、ウガンダの野党議員であるボビ・ワイン氏は、アメリカを訪れ、複数の米国議員の支援を取り付けたという。


 ファーウェイは「そのような行為をする契約も能力もなく、一切関与していない」と主張しており、ウガンダ政府のオフウォノ・オポンド報道官も、通信傍受について「詳しい情報を公表することはできない」と声明を出している。


・中国は抑圧的統治手法の世界波及を目指す?
 中国外務省は、国同士が治安維持で協力することは一般的で、アフリカの生活や事業環境を改善すべく安全都市建設を行なっているという。


 『テレグラフ』は、ファーウェイがウガンダに新たに1億2,600万米ドル分のCCTVシステムを供給したと報じており、最大野党である民主的変化フォーラム(Forum for Democratic Change)のイングリッド・トゥリナウェ総裁は「CCTVプロジェクトは、私たちを追跡し、狩り、迫害するツールにすぎない」と語った(参考:https://www.telegraph.co.uk/news/2019/08/15/huawei-employees-helped-african-governments-spy-opponents/)。


 電気などインフラの整備が行き届いているとはいい難いアフリカの国の、舗装されていない道に監視カメラがびっしりと並んでいるのは、確かに異様な光景だ。都市の治安維持のためとはいうが、反体制派の監視の意味合いの方が強いとの見方もある。


 ザンビアでは、ファーウェイの従業員が、エドガー・ルング大統領に批判的なブロガーの電話やFacebookページに、政府当局がアクセスし、追跡・逮捕する支援をしたという。米国ワシントンDCにあるRWR Advisory Group社のアンドリュー・ダベンポート氏は「中国政府は、中国の非自由主義的な統治規範やデジタルを世界各地で採用させる目標がある」と述べた。


 今回の件が事実であるなら、一党支配の続く中国政府のスパイ支援要請を今後、拒否することがファーウェイにはできるのだろうか。このままでは「ファーウェイが中国政府のスパイ行為に関与している」というアメリカ政府の主張を勢いづける可能性があり、その動向が気になるところだ。


(Nagata Tombo)