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あおり殴打の男性「出頭する」と主張するも逮捕…「指名手配」だったら仕方ない?

2019年08月19日 18:51  弁護士ドットコム

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茨城県守谷市の高速道路で「あおり運転」をして、20代男性が運転する車を停車させて、「殺すぞ」と怒鳴りながら、顔を殴ってケガさせたとして、会社役員の40代男性が8月18日、傷害の疑いで逮捕された。茨城県警に指名手配されていた。


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報道によると、男性役員は8月18日、大阪市内のマンション近くの駐車場で、張り込んでいた茨城県警の捜査員に身柄を確保された。テレビ局のカメラが、その様子をとらえている。 サングラスとマスクをつけた男性役員は、携帯電話を片手に次のように主張している。



「ちょっと待ってください。自ら出頭するっていうことを今(警察署に)電話してますので。今から行きますので。自分の意思で。後ろを張り付くように付いてきてください。ホントに。ホントに。逃げも隠れもしません」



このあと、捜査員ともみあいになり、警察車両で連行され、さらに茨城県に移送されている。「殴ったことは間違いない」と容疑を認めているということだが、今回のように、指名手配されていた人が「出頭したい」と言っても認められないのだろうか。



刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士に聞いた。



●指名手配されても「出頭」することはできる

まず、指名手配の法的性質について押さえる必要があります。



指名手配とは、法律上の制度ではありません。捜査機関の内部規則に定められているものです。内部規則の1つである『犯罪捜査規範』で、「逮捕状の発せられている被疑者の逮捕を依頼し、逮捕後身柄の引渡しを要求する手配」と定義されています(同31条)。



少しむずかしいですが、要は、ほかの警察署等に逮捕するよう要請して、捕まえたら送ってもらう(場合によっては引き取りに行く)よう、お願いする手続きと考えればよいでしょう。



指名手配は、あくまで捜査機関の内部手続きですので、被疑者が出頭できなくなるわけではありません。指名手配がされてもなお、被疑者は任意に出頭することができます。



●「自首」にはならない

ただ、このような任意の出頭がすべて「自首」になるわけではありません。



自首は、法律に定めがあります。「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」とされています(刑法42条1項)。したがって、刑の減軽がありうるのは、「捜査機関に発覚する前」におこなう必要があります。



この「捜査機関に発覚する前」とは、犯罪事実が発覚していない場合や、犯人が誰かわからない場合を指します(最高裁判決昭和29年7月16日)。



このように自首は、要件が定められており、「発覚する前」のほかにも、申告の内容はどこまでのものが要求されるかといった論点が多く存在します。



実務上、そこまで簡単には自首が成立しないことには注意が必要です。また、法律上、刑を減軽することが「できる」と定められているので、かならず減軽されるわけでもありません。



指名手配の場合は、「逮捕状が発せられている」ことが前提になっています。逮捕状が出ている場合、捜査機関としては犯罪があったことは把握していますし、犯人とにらんでいる人もわかっていることになります。そうすると、指名手配された人は、その事件との関係では「自首」は成立しないということになります。



●情状として有利に考慮される場合もあるが・・・

仮に起訴されて、有罪となった場合、自首にまで至らなくても、任意に出頭した事実が情状として有利に考慮される場合があります。



ただ、任意の出頭という一事をもって罪が軽くなるわけではなく、出頭したタイミングやその態様はどうだったか、それが反省の現れなのか、といったさまざまな事情を加味して有利な情状と言ってよいのか判断されます。



さらに、現在の実務は行為や結果といったもので罪の大枠を決めて、そのほかの事情はその枠内で調整するものとされていますので、有利に考慮されるとしても、限定的になることが多いです。



今回の事件については、まだ起訴されていない段階で、多くを語るのは難しいのですが、仮に有罪判決となった場合であっても、先ほど述べた要素から考えて、出頭しようとした事実を大きく考慮することは難しいのではないかと思われます。




【取材協力弁護士】
神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」弁護士を目指している。
事務所名:弁護士法人ルミナス法律事務所
事務所URL:https://www.sainomachi-lo.com