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香取慎吾、萩本欽一と久々の共演 二人のタッグから感じたテレビの本質的な役割

2019年08月19日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

香取慎吾

 香取慎吾が、萩本欽一による台本&リハーサルなしのエンターテインメントショー『欽ちゃんのアドリブで笑』(BSプレミアム)の、8月18日放送回にゲスト出演した。


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「BSつけたら、慎吾ちゃん!」


 放送開始そうそうテレビに映った香取の弾ける笑顔と、愛嬌たっぷりのコメント。それだけで、お茶の間がパッと明るくなるような感覚を受けたのは、筆者だけではないはず。やはり彼はTVスターなのだと、改めて感じられる瞬間だった。


 新しい地図を広げると同時に、「ゼロになる覚悟だった」と語っていた香取。その言葉通り、しばらくテレビから遠ざかっていたのも事実だ。だが、一方で以前よりもPCやスマホの画面からは、香取の活躍を確認できる機会は増えた。


 そして多くのNAKAMAとともに、SNSという新たな遊び場を見つけた。放送前から香取や、番組の公式Twitterでは、カウントダウンをしながら、そのときを楽しみに声が次々とつぶやかれていた。その様子は、香取が稲垣吾郎、草なぎ剛と挑んだ『72時間ホンネテレビ』(AbemaTV)、月1回のレギュラー番組となった7.2時間生放送の『7.2 新しい別の窓』(AbemaTV)の開始前に通じるものがあった。


 そして、オンエアと同時に「慎吾ちゃん」「#香取慎吾」「#欽ちゃんのアドリブで笑」がSNSのトレンド上位を独占。その様子を見ていると、テレビから遠ざかっていたというより、より大きくなって帰ってくるための伏線だった、とさえ言いたくなるほどだ。もちろん、それは香取自身の、そして支え続けたNAKAMAの努力があればこそなのだが、そんな後出しジャンケンのようなことを言いたくなるほど、香取の歩みは全てが“今”に繋がっているのだ。


 それができるのは、彼が誠実に人と向き合ってきたからにほかならない。この番組へのゲスト出演も、萩本との絆があればこそ。『仮装大賞』(日本テレビ系)で20年近くMCをつとめてきたふたり。「慎吾を呼んできて無茶振りしたら最高だな」と、萩本が熱望して今回のゲスト出演が実現したと明かされている。


 この番組は、「視聴率100%男」の異名を持つ萩本が、「これが最後の番組」という覚悟でのぞんでいるもの。「笑いだけを考える2年間にしたい」と全力を注ぐ今、香取を呼んだのには特別な想いが見え隠れする。


 “何が起こるかわからないワクワク“を届けること。萩本が愛したテレビとは、そんな心踊るコンテンツだったのではないだろうか。ステージの上で、演者にムチャ振りと呼ばれるお題を出して即興コントを作るのもそうだが、多くの視聴者が望んでいるゲストに出演交渉をすることもそうなのではないか。それは、制作側へのムチャぶりと言えるかもしれない。


 だが、そんなふうにちょっぴりムチャなことをやりながらも、みんなが「楽しい」とつい笑ってしまう。エンターテインメントの世界とは、そうであってほしいと思うのだ。もちろん、多くの人が見るものだからこそ、多方面に気を配る必要はある。だが、気を使いすぎた結果、まるで地雷を避けるだけのようなやりとりでは、ワクワクするのは難しい。


 「欽ちゃんは友だち! 本当はそうじゃないんですけど(笑)。本当はとっても大先輩ですし、友だちっていうと欽ちゃんに褒められると思うんで」と、公式HPの動画インタビューに答えている香取のように、気を配りながらも、気を使いすぎない信頼関係を楽しんでいればこそ、見る人を笑顔にするのではないだろうか。


 そして「ギリギリのお話でも駆けつけますので、また呼んでいただけたら」と、また遊ぶ約束を取り付けるかのように結んだ。さらに、香取はTwitterでこうつぶやいていた。「いつまでも慎吾ちゃんでいさせてください! 欽ちゃんのように」。


 この年齢もキャリアも全く違う、普通に生きていたら知り合うことなどなかったかのようなふたりが、テレビ番組という媒体で出会い、化学反応を起こして、友だちになってしまう奇跡。それはきっと現実社会でも起こりうること。楽しい番組を介して、あるいは好きなコメディアンやアイドルを通じて、新たな友だち(NAKAMA)ができることを私たちは知っている。


 香取と萩本の番組を見ていると、そんなテレビの本質的な役割を再確認させられるようだ。願わくば、こんな番組が今回限りで終わらないことを。また、「いよいよ始まる!」とテレビ画面の前で放送開始時間をワクワクして待つ、バラエティ番組を届けてほしい。(佐藤結衣)