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鍵はソフトタイヤとクリーンエア。1ピットに2ピット、分かれる決勝のストラテジー【スーパーフォーミュラ第5戦もてぎ決勝展望】

2019年08月18日 00:01  AUTOSPORT web

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土曜のフリー走行では右フロントタイヤに変化が見られたが大きな問題にはならなかった。決勝ではソフトタイヤの摩耗が勝負の分かれ目になりそうだ。
スーパーフォーミュラ第5戦ツインリンクもてぎの予選は、金曜から好調さを見せたアレックス・パロウ(TCS NAKAJIMA RACING)がポールポジションを獲得し、同じく金曜専有走行でトップタイムをマークしていた平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が2番手と、ドライコンディションが続いた金、土で同じような顔ぶれがタイムシートの上位に続くことになった。

 金曜の専有走行と土曜の決勝では路面温度が10℃以上異なり、予選開始時には気温38℃、路面温度49℃という酷暑になり、コンディションは大きく変わったが、「気温が上がると一般的にオーバーステア傾向になるので、その変更で対応できました」と平川が話すように、上位のドライバーたちは持ち込みのセットアップを大きく変えることなく、結果を残すことができたようだ。

 土曜の午前のフリー走行ではほぼ全車、右フロントタイヤの表面に筋が入るようなシーンが見られたが、ヨコハマタイヤによると表面のゴムが拠れて中心に集まったのためのようだが、ドライバーの感想としてもグリップダウンなどの影響はなかったようで大きな問題にはならなかった。

 決勝のポイントとしては、そのタイヤのパフォーマンスとデグラデーションが鍵になる。予選日のタイムでもわかるように、ミディアムのニュータイヤでアタックしたQ1とソフトタイヤでアタックしたQ3のタイムでは約2秒の差がある。もちろん、予選Q2、Q3と路面状況が良くなったこともあるが、ソフトタイヤとミディアムタイヤのニュータイヤの時点での約2秒差が、その後の周回を重ねたロングランでも続く可能性が高く、このもてぎの高温下でもミディアムタイヤがソフトタイヤのパフォーマンスを上回るクロスオーバーは起きないだろうというのが大方のエンジニアの感想だ。

 つまり、これまでのドライコンディションでのレースの戦い方と同じで、ミディアムタイヤでの周回数をできるだけ減らして、ソフトタイヤでの周回をできるだけ多くすることが日曜のレースの基本戦略となる。

 満タンスタートで足りない燃料はドライバーにもよるが5~7周と見られており、最初にミディアムでスタートして5~7周を終えた時点でピットストップを行ってソフトタイヤに変えるのがもっともリスクの少ない戦い方になると考えられる。

 予選上位陣として難しいのが、一見、ソフトタイヤでスタートダッシュを決めてギャップを広げ、最後の残り5~7周でミディアムタイヤに変更するというのが王道パターンに思えるが、この戦略ではソフトタイヤ走行時にセーフティカーが入ってしまった場合、最初の5~7周でピットインを済ませたドライバーたちとのギャップがなくなってしまうため、逆転されてしまうというリスクがある。

 もうひとつ懸念されるのが、決勝日の路面コンディションだ。予選開始時の路面温度49℃を越えるような展開になれば、ソフトタイヤのデグラデーション(性能劣化)は大きくなり、ラップタイムの落ち幅も大きくなる。そうなってくると、2ピット作戦が有効になってくる。昨年は平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が予選9番手から2ピット作戦で2位表彰台を獲得したように、軽めの燃料搭載でプッシュしてオーバーテイクを連発できれば、十分に勝機も見えてくる。

 ピットストップ時のロスタイムは約20秒+制止時間(約15秒)と見られており、1ピット戦略組よりも最低でもおおよそ35秒、コース上でタイムを稼ぐことができれば2ピット戦略が成功する。今年は予選2番手となった平川は「おそらく明日も2ピットの方が速いですけどリスクがあるので2番グリッドからその戦略を使うのは難しい」と話したが、日曜日の路面温度、そしてソフトタイヤの摩耗次第では、昨年以上に2ピット戦略を選ぶドライバーが多い展開になるかもしれない。

 いずれの戦略を選ぶにしても、先頭で走るか、ピットアウト時に前にクルマがいないクリーンな状態になるか、前車のタービュランスを受けずにダウンフォースを存分に受けながらタイヤと燃費のマネジメントをうまく行うのが鉄則。ピットアウト時にクリーンエアを受けるためにはチームの判断力と運も必要で、チーム/ドライバーのストラテジーが大きな見どころになりそうだ。