全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦もてぎでメディア向けの定例会見が行われ、2020年から全日本F3選手権を引き継ぐ形で新たに立ち上げられる『全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)』の概要が明かされた。これまで1979年から40年に渡って続いてきた全日本F3選手権はスーパーフォーミュラとの関連を強くして、新しいカテゴリーへと生まれ変わることになった。
スーパーフォーミュラ・ライツの2020年からの発足についてはすでにJAFの公示で明らかになっていたが、その一方で、今年の春にFIA リージョナルF3規格のマシン『DOME F111/3』の開発を童夢が発表するなど、現在のF3規格の今後のカテゴリー展開については、さまざまな懸念の声が聞こえていた。
「FIAがF1からF4まで新たなピラミッド構造を作り、我々が今まで40年間担ってきたF3のカテゴリーが2段階に分かれ、インターナショナルF3とF3リージョナルに分かれました。我々F3協会としては、今までのF3を、リージョナルも含めてどうしていけばいいのだろうかということを十分に検討しました」と会見の冒頭で話すのは全日本F3協会の水野雅男会長。
「その結果、トップドライバーになるための登竜門であるF3を、今までのマシンにヘイローをつけて安全性を向上させ、スーパーフォーミュラの名前をお借りして『スーパーフォーミュラ・ライツ』という名前で継続していきたいと考えてJAFに申請し、認可をいただきました」と水野会長は新カテゴリーへの名称変更の理由を説明した。
車両に関してはすでに発表されている通り、ダラーラ社製の『ダラーラF320』を使用することが決定。スーパーフォーミュラ・ライツはワンメイクでの選手権となり、現行シャシーはヘイローの装着が難しいことなどから使用できなくなるが、サスペンションアームなどのパーツに関しては部分的にダラーラF320でも使用できるという。エンジンは現行と同じく、2.0リッター4気筒のレーシングエンジンの使用となる。
日本フォーミュラスリー協会(JF3A)の田口朋典事務局長によれば、「現状では新規の参加エントラントがあるかどうかはわかりませんが、現行車両と同じくらいの12台以上を見込んでおります」とのこと。マスタークラスに関しては、参加ドライバーの状況を考慮し、ニーズによってはクラス創設もあるようだが、ジェントルマンクラスのドライバーの参戦がなければなくなるという。
なおスーパーフォーミュラ・ライツにおけるスーパーライセンス・ポイントの付与に関しては、日本フォーミュラスリー協会からJAFに問い合わせたものの、まだ回答は得られていない。
気になるところとしては、スーパーフォーミュラ・ライツ立ち上げの一方で、日本におけるFIA-F3リージョナルシリーズとの関連だ。スーパーフォーミュラ・ライツは現行の全日本F3と同じでJAFの承認を得て開催されるため、2020年のスーパーフォーミュラ・ライツは『全日本』の名前を使用する選手権になる。日本のF3リージョナルシリーズは今のところJAFへの申請はないとのことで全日本選手権としては開催されない方向のようだが、スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーション(JRP)の倉下明社長によれば、F3リージョナルとも協力することを考えているという。
「日本におけるF3リージョナルも来年立ち上がろうとしております。FIAと向き合うことを考えてもJRPとしては、F3リージョナルが立ち上がり、そちらもまたひとつのステップアップのカテゴリーとしてきちんと日本に根付いていくというのが我々の期待するところです。我々としてもF3リージョナルに対して、できることがあればフォーミュラを盛り上げることを目標として協力をしていきたいと考えております」」とJRPの倉下社長。
国内F3リージョナルとスーパーフォーミュラ・ライツの併催は週末のスケジュール上、難しいようだが、JRPとしてはスーパーフォーミュラへのステップアップなどに関して分け隔てなく対応していく姿勢を見せた一方、スーパーフォーミュラ・ライツの年間チャンピオンにスカラシップ的なチャンス、テスト走行などの機会を提供する案があることを明言した。
現在のFIA F4とJAF F4、そして現在のF3格式も来季はスーパーフォーミュラ・ライツとF3リージョナルに分かれる形となり、モータースポーツファンとしてはなかなか理解するのが複雑な状況となるが、今はカテゴリーの目的、そして安全性やテクノロジーの発達とパフォーマンス面など、世界的にモータースポーツが再編成を迎えているタイミングでもある。今後の国内フォーミュラがどのような形となるのか、混沌としている状況だけにスーパーフォーミュラ・ライツとF3リージョナルの今後に注視していきたい。