もてぎ5年連続表彰台獲得中で2勝を挙げている石浦宏明(P.MU / CERUMO · INGING)得意のもてぎで浮上のきっかけを作りたいところ スーパーフォーミュラ真夏の恒例イベント、第5戦ツインリンクもてぎ戦がいよいよ今週末、開催される。昨年、そして一昨年とそれまでのレース内容と評判を覆すオーバーテイク連続のレース展開だっただけに、今年のもてぎ戦も楽しみな要素が多い。果たして今年のもてぎ戦はどんな展開になるのだろうか。
2016年にソフトタイヤが試験的に投入されて、ミディアムタイヤとの2種類の選択性になって、ツインリンクもてぎ戦のスーパーフォーミュラはオーバーテイクが増え、格段に濃密なレース内容となった。それまではオーバーテイクが難しいストップ・アンド・ゴーのサーキットだったのが嘘のようなパッシングの多さに、多くの関係者が驚かされた。
特に印象的だったのが、一昨年は塚越広大、そして昨年は平川亮が2ピット作戦を選択して、軽めの燃料でプッシュし続けてオーバーテイクを連発したシーンだ。もてぎのピットロードは他のサーキットよりも短く、ロスタイムが少ないだけに、1ピット、2ピットとレース戦略のウインドウ(幅)が広い。今年はマシンが変わり、タイヤも変わったことから昨年同様の戦略が採れるかはこれからの走行データ次第になるが、最後までどうなるか分からない展開になることは間違いない。
特に予想が難しいのは、今週末の暑さだ。夏休みのお盆を直撃した超巨大な台風10号が過ぎ、フェーン現象で酷暑、猛暑が予想される今週末のツインリンクもてぎ。関東圏の最高気温は36度とも予想されるが、その高温下で路面温度がどこまで上がり、タイヤのデグラデーションにつながるのか。今年はソフトタイヤがどのサーキットでも1レース分もっているが、ミディアムタイヤもこの高温下で最適に作動してタイムがよいとなれば、これまでの戦い方は一変することになる。
チャンピオンシップに目を移せば、このもてぎを含めて今シーズンは残り3戦。このもてぎで大量得点を獲らなければチャンピオン争いから脱落してしまうために、必勝態勢で臨むドライバーが多い。一昨年のチャンピオンで現在まさかのランキング15位の石浦宏明(P.MU/CERUMO · INGING)もそのひとりだ。昨年の石浦はこのもてぎ戦でポール・トゥ・ウインを飾り、終盤のタイトル争いに食い込んだ。一昨年のもてぎ戦では予選17番手から、4位フィニッシュと驚異のジャンプアップを果たしている。
「そうですね、このもてぎは得意です。ほとんど表彰台に上がっているんじゃないですかね(5年連続表彰台獲得中、優勝2回)」と石浦。このもてぎ戦を今年の不振からの転換点にしたいとろこだが、「ですけど、今日(金曜専有走行)の感じだとあまり(クルマのフィーリングは)良くない。これから考えないといけないです」と金曜の走行の手応えはいまいちの様子。金曜のタイムは参考にならないとはいえ、気になるところだ。
また、同じくこのもてぎ戦で結果を残したいのが牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)だ。前回の第4戦富士では同じルーキーでチームメイトのアレックス・パロウがスーパーフォーミュラ初優勝を飾り、先に優勝を奪われてしまった。
「もちろん、全部のサーキットで結果を残したいですけど、前回の富士でアレックスが勝って、自分としても勝ちたい気持ちがさらに強くなりましたし、負けていられないという気持ちもすごく強くなりました」と、牧野。
「もてぎは個人的にもすごく好きなサーキットですし、金曜専有走行も感触的には悪くはないのでうまくできれはチャンスはあるのかなと思っています。もてぎはこれまでの他のサーキットに比べてストラテジーの幅は広いと思いますが、まずはしっかり予選で前に行けるように準備したいですね」と、今週末への期待を語った。
もちろん、石浦、牧野意外にも虎視眈々を上位を狙うドライバーがいるのは間違いない。現在のポイントラインキングではトップの山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)27ポイント、2位のニック・キャシディが22ポイントで3位のパロウが14ポイントと『2強』が抜けている状態だけに、なんとしても2人の前でフィッシュしたいと思うのはどのドライバーも願うこと。当然、山本とキャシディもチャンピオンシップを意識しないはずはなく、常にターゲットとしてお互いが前に行く意地の戦い、そして心理戦が繰り広げられることになる。
ツインリンクもてぎはストップ・アンド・ゴーで強いブレーキングが必要なコーナーが多く、高速コーナーの横Gでの負担とは違った体力的な負担の多いサーキットでもある。36℃を越えるような未曾有の暑さが予想される52周のレースは、ドライバーにとって過酷という言葉意外では表現できないような厳しい戦いでもある。
さらに今季のスーパーフォーミュラで見逃せないのが、これまでの4戦でいずれもセーフティカーが導入されている点だ。荒れた展開でセーフティカーのタイミング次第で勝敗が分かれる可能性も高く、技術だけでなく負けられない気持ち、そして体力勝負に運と、今回の真夏のスーパーフォーミュラ第5戦もてぎ戦はさまざまな可能性が想像される。最後にトップでフィニッシュラインを駆け抜けるのは、果たして誰になるのだろうか。