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佐野SAのストライキが話題、法的にはどんな場合に認められる?

2019年08月16日 18:22  弁護士ドットコム

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東北自動車道の佐野サービスエリア(SA・上り)でフードコートと売店を運営する「ケイセイ・フーズ」の従業員のストライキにより、8月14日未明から突然、店舗が営業を休止した。


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SAには「社長の経営方針にはついていけません」「解雇された部長と支配人の復職と、経営陣の退陣を求めます」との貼り紙が残されていたという。



「ケイセイ・フーズ」の岸敏夫社長は15日に会見し、仕入れ業者との注文の食い違い、社員の不当解雇があってストライキになったと説明。14日に従業員の解雇を撤回し、営業再開に向けた打ち合わせが進んでいるとした(「日刊スポーツ」8月16日ほか)。



ストライキから2日後の16日、「NEXCO東日本」の公式HPでは、ショッピングコーナーの営業再開が発表されている。レストラン、フードコートについては「営業再開に向けて準備を急いでおります」とのことだ。



Uターンラッシュの真っ只中、突然の事態に利用客からは困惑の声が上がった。一般論として、ストライキが法的に認められるためには何が必要なのか。(監修・髙橋裕樹弁護士)



●「正当な争議行為」ならば刑事・民事責任は免責される

ストライキなどの争議行為をおこなうことは、憲法28条によって保障されている権利だ。「正当な争議行為」であれば、刑事責任、民事責任ともに免責される。つまり、処罰されたり、賠償請求されたりしないということだ。



たとえば、建造物侵入、威力業務妨害などがおこなわれたとしても、「正当な争議行為」であれば、罪に問われないことになる。ただし、暴力をふるった場合は「正当」とはいえないことから、処罰の対象になる。



今回のストライキでSAが営業休止したことによって、会社には損害が発生している。しかし、「正当な争議行為」によって発生した損害については、使用者は労働者に賠償を請求することはできないのだ。



また、ストライキをおこなった従業員を懲戒処分にしたり、不当な配置替えをするなどの「不利益取り扱い」についても禁止されている。



●「正当」といえるには労働組合であること、予告などが必要

しかし、従業員のストライキが日常的に起きれば、会社の経営は回らなくなる。そのため、ストライキが「正当な争議行為」と認められるか否かが重要なポイントとなる。



「正当」なストライキとして認められるための要件は、(1)労働組合であること、(2)労働条件の改善が目的であること、(3)手続違反や権利侵害を伴う態様・行為ではないことだ。



ストライキは「団体行動をする権利」に含まれ、団体交渉を前提とする。そのため、労働組合であることが必要なのだ。



特定の労働者らの配置換え拒否等の人事に関する事項や経営判断事項、政治問題に関する事項を目的とするストライキは「労働条件の改善」とはいえないことから、認められないことになる。



手続や態様も重要だ。ストライキを実施する前には、手続きを踏まなければならない。そのため、団体交渉をおこなうことなく、予告なしに実施したストライキは「正当」ではないことになる。また、労働組合法は「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない」と規定している(労働組合法1条2項)。



今回の佐野SAのストライキについては、状況が不明確な部分もあり、判断は難しいが、お盆期間中に実行したことで、社会に大きなインパクトを与えたことは間違いない。



【監修協力】髙橋 裕樹(たかはし・ゆうき)弁護士
無罪判決多数獲得の戦う弁護士。依頼者の立場に立って、徹底的に親切に、誰よりも親切でスピーディな、最高品質の法的サービスの提供をお約束!でも休日は魚と戦う釣りバカ弁護士!
事務所名:アトム市川船橋法律事務所
事務所URL:http://www.ichifuna-law.com/