ジネッタのLMP1カーでWEC世界耐久選手権に挑む、チームLNTの一員となったクリス・ダイソンが、6年ぶりのLMP1カテゴリー復帰決めた理由とブリティッシュブランドの名を冠す最新プロトタイプカーの可能性について語った。
2度のALMSアメリカン・ル・マン・シリーズ(現IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権)のシリーズチャンピオンであるダイソンは今週、2019/2020年からWEC最高峰クラスに参戦するイギリスチームのドライバーラインアップに迎えられることが発表された。
母国アメリカでLMP1クラス王者に輝いたベテランは、かつてともに栄冠を勝ち取ったガイ・スミス、ジネッタワークスドライバーのマイケル・シンプソンとトリオを形成し、チームLNTの6号車ジネッタG60-LT-P1・AERでトヨタとレベリオン・レーシングに戦いを挑む。
そんなダイソンは近年、スポーツカーレースの舞台から離れていたが、現在のLMP1カーの持つ「スピードとパフォーマンスが自身を奮い立たせ、背中を押したと」言い、最高峰クラスへの復帰を決断させたという。
ダイソンにとってLMP1カーのドライブは、ダイソン・レーシングのローラB12/60・マツダでALMSに参戦した2013年以来、6年ぶり。プロトタイプカーでの公式戦出場もLMP2カーを駆った2014ル・マン24時間レース以来、5年ぶりとなる。
親族がAER(アドバンスド・エンジン・リサーチ)の経営権を握るダイソンは、イギリスメーカー製のプロトタイプカーにまだ開発の余地が残されていると確信している。
「ローレンス(・トムリンソン=ジネッタ会長)はこの機会を利用して、レギュレーションだけでなく現在のLMP1カーをとりまく状況に重大な変化を与えることに、非常に熱心に取り組んでいた」とダイソン。
「エンジンの側からすると僕たちの家族はAERと長年の関係があり、今では世界をリードする製品を持っていると思う。これは、テクノロジーと優れた人材の素晴らしい組み合わせによるものだ」
「それは僕にとって、とても興味深い機会だったよ。僕はこのカテゴリーに復帰することに興奮しているし、ガイ(・スミス)もそうであると理解している。もちろん、マイケル(・シンプソン)と一緒に仕事をすることもとても楽しみだよ」
ダイソンはポール・リカールで先月行われたプライベートテストで、初めてジネッタG60-LT-P1・AERでのラップを記録した。マシンの印象について41歳のアメリカ人は、パフォーマンスと全体的なパッケージに「衝撃を受けた」と述べた。
また、彼は2018年限りで“ベントレー・ボーイズ”を引退したスミスと再びマシンをシェアする機会を得られたことは、互いをよく知っていることから非常に理にかなった選択だと語る。
「ドライバーラインアップについて話をしたとき、僕たちはガイが有力候補に挙がることに同意していた」とダイソン。
「最大の疑問は、彼が再びレースをしたいかどうかだった」
「ガイはテストに出てきて、すぐに素晴らしい走りをみせた。彼もまた僕と同じようにクルマに衝撃を受けたようで、僕たちはふたりして本当に興奮していたよ」
現在、アメリカのトランザム(Trans Am)シリーズでランキング首位に立つダイソンは、最終戦直前のラウンドと日程が重複する第2戦富士を除いて2019/20年シーズンの全戦に出場する予定だという。計画どおりにプログラムが進めば、来年6月には6年ぶりにル・マン復帰を果たす予定だ。
■「頭数合わせなんてまっぴら。誰もパレードなんて見たくない」
EoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)の大幅な見直しと“サクセス・ハンディキャップ”の導入によって、今季はノンハイブリッドLMP1カーとトヨタTS050ハイブリッドの間で「真の競争が繰り広げられる」とダイソンはまもなく開幕するシーズンを楽観視している。
「我々はそれがどのように揺れ動いていくのかを見なければならない」
「確かに、レベリオンは素晴らしいクルマを持っている。だが、ジネッタが作り上げたプロトタイプもまた素晴らしいものであると信じているんだ」
「良いレースになると思うよ。誰もパレードなんて見たくない」
「今季はFIA国際自動車連盟が、本当に新しいレースモデルだということを示した最初の年だ。現実的に(トヨタと)勝負ができるチャンスがあるならば、それは本当に良いシーズンといえるだろう」
「頭数合わせなんてまっぴらだ。そんな理由のためなら絶対に行きたくないね」
2010年代半ばから急速に高速化を果たした現在のLMP1カーをチェックしていたダイソンにとって、外から傍観し続けるのは難しかったという。
「現世代のLMP1カーは、少なくとも最近ではスポーツカーとして最高レベルのスピードとパフォーマンスを誇る」
「ここ数年、僕はこれらのクルマがどれだけ速くなり、どのレベルの性能に達しているのかを見てきたので、それを外から見ているだけというのは難しかった」
「今回、実際にテストに参加して、マシンをドライブする機会を得たことは、僕にとって励みになったよ!」
「しかし、これが非常に限定的で特別な時代であることは分かっている。だから、僕は僕たちのチームがこの場にいる間にレースを楽しみたいと思っているんだ」