2018年10月に公式シリーズラウンチが行われてから、状況進捗や動静が伝わらない期間が続いている電動版TCRの『ETCR』だが、予定どおり2020年にも最初のレースを開催するスケジュールで準備が進んでいるという。
100%電気自動車による世界初のツーリングカーレースを標榜するETCRは、ヨーロッパを中心にアジア、北米での選手権開催を計画。2021年からの本格的チャンピオンシップ開始を目指している。
使用されるマシンも、そのシリーズ名称にあるとおり内燃機関による現行TCR規定ツーリングカーと同様、市販ロードカーでのボリュームゾーンとなるCセグメント級ハッチバックやセダンが中心に据えられる。
電動モータースポーツを専門に扱うウェブサイト、e-racing365によれば、プレシーズンとなる2020年には全4戦のレースが予定されているという。
TCRプラットフォームを運営するプロモーターのWSC Ltd.,のスポークスマンによれば、2020年の6月下旬または7月上旬にヨーロッパでETCR最初のイベントを開催する計画で、世界初の電動ツーリングカーによるレースが行われる。
このイベントを皮切りに、10月から12月にかけて“海外戦”として、2~3戦のレースが予定されているという。
WSCの声明では「最終的な詳細は9月に決定される」と明示されており、詳細は近日中に明らかになる予定だ。
ETCRの初期計画では、2020年は完全な“インターナショナル・シリーズ”として選手権を立ち上げ、TCRでも採用した戦略に則り、その後にヨーロッパ、北米、アジアなどのリージョナル選手権、そして国ごとのナショナル・シリーズを創設するプランとなっていた。
WSCテクノロジー社のCEOであるマウリシオ-ズラビエロ・カンポスによれば、「おそらく、世界選手権が始まって2年以内には、ヨーロッパ、アジア、そしてアメリカでも地域シリーズを開始することになるだろう」と語っている。
「我々の最終目標であり、メインゴールは、将来的にETCRも現在のTCRが実現させたのと同じコンセプトで、グローバルにチャンピオンシップを広げていくことだ」
現時点で、2020年のプレシーズン開始時に何社のマニュファクチャラーが電動ツーリングカーを用意できるかは未知数であり、シリーズラウンチ時に公式パートナーとして紹介されたクプラ(セアト)のみが、マシン製作と販売を公式表明している。
また、2018年11月にシリーズへのコミットを表明していたヒュンダイも、この8月に同社史上初の電動レースカー製作と発売をアナウンスしており、9月に発表されるそのモデルが、ETCRをターゲットにした車両と見られ、シリーズ参戦の可能性は濃厚だと考えられている。
シリーズラウンチ時にスペイン・バルセロナのカタルーニャ・サーキットで『セアト・クプラ e-Racer』がトラックでの走行を披露して以降、ETCRを取り巻く情報はほとんど更新されておらず、シリーズ創設を危惧する声も聞こえてくる中、クプラ、ヒュンダイに続き、中国系資本となるボルボなども、ポールスター・ブランドでのETCR参戦の可能性が噂されている。
また、ETCRシリーズのオフィシャル・サプライヤーとして、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社がバッテリーと車両制御モジュール(VCM)の設計、開発、製造、供給の契約を締結し、TCRシリーズと同様にユーロスポーツイベントがシリーズプロモーターとして選ばれている。