2019年08月16日 10:21 弁護士ドットコム
「実家依存の妻から離婚を切り出されました」。子どもが生まれてから、何度も実家に帰省する妻に悩まされてきたという男性が弁護士ドットコムにこのような相談を寄せています。
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男性は妻とは結婚5年目で、2歳の子どもがいるようです。
「子どもが生まれてから2年間、妻は子どもを連れて約10回程度実家に帰省しています。1度帰省すると1から2カ月は帰ってきません。帰省する日程は前日または当日に知らされ、戻ってくる日も教えてもらえません」と相談者はいいます。
我慢の限界に達した男性が「帰省を控えてほしい」と怒ったところ、妻に「怒られてこわかった。もう一緒に生活できない」と離婚を切り出され、音信不通となったようです。
男性は離婚したくないようですが、このような場合は離婚が認められる可能性はあるのでしょうか。
夫婦2人の話し合いにより合意すれば、どんな理由であっても離婚することは可能です(協議離婚)。しかし、今回のケースの場合、相談者は離婚をしたくないと考えていることや、妻が音信不通になっていることから、協議離婚は難しいでしょう。
協議離婚できなかった場合には、裁判所での調停、裁判へと進みます。この場合には、法律(民法770条1項)が定める離婚理由が必要となります。
民法770条が定める離婚事由は、(1)不貞行為 (2)悪意の遺棄 (3)生死が3年以上、明らかでないとき (4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、の5つです。
今回のケースは(1)から(4)にはあたらないでしょう。しかし、「(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と判断されれば、離婚が認められる場合があります。
ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるか否かの判断はケースバイケースです。判断にあたり、裁判所はさまざまな事情を総合考慮します。
そして、夫婦関係が破綻し、回復が困難であり、これ以上は結婚生活を続けていくことが難しいと判断された場合に、離婚が認められることになります。
今回のケースでは、妻は夫に「帰省を控えてほしい」と言われたことを理由に、離婚を切り出しています。このことのみをもって、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、ただちに離婚が認められることはないでしょう。
「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかを裁判所が判断するにあたり、別居期間も考慮されます。別居期間のみで離婚が認められることはありませんが、長期間の別居が続いた場合は、夫婦関係が破綻しているとして、離婚が認められる場合もあります。
ただし、長期間の別居が続いていたという理由で、ただちに離婚が認められるわけではありません。別居期間中に夫婦の間に定期的な交流があるなどの事情があれば、夫婦関係が破綻していると認められにくくなります。
小田紗織弁護士は「生計を共にするなどして、相互に協力関係にある別居(転勤や一時的な帰省)は夫婦関係の破綻につながる別居とはいえません」と説明します。
では、今回のように、妻が「もう一緒に生活できない」と離婚を切り出し、実家に帰省した場合はどうでしょうか。
小田弁護士は「離婚を切り出され、音信不通となった時期から夫婦関係の破綻につながる別居が始まったといえるでしょう。さらに別居が続くようであれば、同居期間との比較や子の有無・年齢など様々な事情を総合考慮して、夫婦関係の修繕は難しい=夫婦関係破綻=離婚と認められるでしょう」。
【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/