マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)とアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)の一騎打ちとなったオーストリアGP決勝。スタートから最終ラップまで、28周にわたって続いたマルケスとドヴィツィオーゾの攻防は、最終ラップの最終コーナー進入で、ドヴィツィオーゾがマルケスのインをついて前に出ると、そのままトップでチェッカーを受けた。その差は0.213秒。優勝したドヴィツィオーゾのレースタイムは昨年優勝したホルヘ・ロレンソのレースタイムを約6秒上回るものだった。
オーストリアGPの舞台となったレッドブル・リンクは、これまでマルケスが勝利したことのないコース。オーストリアGPが復活して以来、レッドブル・リンクでは2016年にアンドレア・イアンノーネ、2017年にドヴィツィオーゾ、2018年にホルヘ・ロレンソとドゥカティが3連勝を飾っている。
マルケスは2019年もフリー走行からレースシミュレーションを想定して順調に調整を進め、オーストリアGPでは2年連続となるポールポジションを獲得。しかし、土曜日までドライコンディションだったレッドブル・リンクは、日曜朝に雨が降り、MotoGPクラスのウォームアップセッションはウエットコンディションとなってしまう。
その後、雨が降り続くことはなく、MotoGPクラスの決勝はドライコンディションで争われることになったが、土曜日までのコンディションと比較すると、決勝レースは気温で約10度、路面温度で約20度前後低い条件でのレースとなる。その上、朝に降った雨の影響で微妙に路面のグリップにも変化があったようで、それによりタイヤチョイスが明暗を分けるレースとなった。
マルケスは前後ミディアム、ドヴィツィオーゾはフロントにミディアム、リヤにソフトのスリックタイヤを選んでレースに臨んだ。結果的にレース終盤までグリップがよかったのはドヴィツィオーゾのタイヤチョイスだった。
「レース終盤にタイヤの右側のグリップがいいことが分かっていたから、最終コーナーで信じられないようなオーバーテイクを仕掛けることができた」とドヴィツィオーゾ。
「終盤、マルクのタイヤの方が僕のタイヤよりも摩耗していることが分かったから、最後の最後まで彼の後ろにぴったりついて、最終コーナーで前に出ることができたんだ」
一方、マルケスは次のようにコメントしている。
「今日はリヤタイヤの選択でミスをした。ソフトのほうがグリップがいいことがすぐに分かった。安定性もミディアムを選択したボクたちよりもソフトのほうがよく、厳しい戦いとなったが、最後まで頑張った。最終コーナーはかなりスライドして、うまく走ることができなかった」
ドゥカティはレッドブル・リンクで負け知らずの4連勝を達成。これまでの4年間、ドゥカティ勢はライバルよりソフト寄りのタイヤチョイスで勝利を収めてきたが、今年もそれは同様だった。
今シーズン3勝目を記録したドゥカティだが、得意とするコースでは勝てているものの、マルケス駆るホンダRC213Vがエンジンパフォーマンスの面で巻き返しており、最高速データなどではドゥカティはトップクラスのエンジンパフォーマンスを誇っているものの、その差は縮まっているのが現状だ。
加えてドゥカティは長年抱えている旋回性の問題を解消できずにいる。サマーブレイク前には、ドヴィツィオーゾがこの点に関して、「4年間訴え続けたが、聞き入れてもらえない」と手厳しいコメントを残している。
オーストリアGPを終えてランキングトップのマルケスとランキング2位のドヴィツィオーゾとのポイント差は58ポイント差とわずかに縮まった。