MotoGP第11戦オーストリアGPの決勝レースはアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)とマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の一騎打ちとなった。制したドヴィツィオーゾは開幕戦カタールGP以来の2019年シーズン2勝目。ドヴィツィオーゾの勝利を決定づけたのはタイヤのグリップだった。
オーストリアGPの決勝レースで、ドヴィツィオーゾが選んだタイヤはフロントにミディアム、リヤにソフト。対してマルケスはフロント、リヤともにミディアムだった。このリヤタイヤの選択が勝負を分けた。
レースでは序盤からドヴィツィオーゾとマルケスが火花を散らした。オープニングラップの3コーナーでは並んで飛び込み、ふたりそろってラインを外してポジションを落とす。ポジションを回復してからは、中盤にはマルケスがドヴィツィオーゾに先行するが、終盤にはドヴィツィオーゾがトップに立ち、お互いに勝負を仕掛け合った。
ドヴィツィオーゾは何度もストレートで加速してマルケスに並び、先行してコーナーに飛び込んだ。チャンピオンシップのトップと2番手の意地がまさに激突するかのような激しい戦いだ。そんななか、ドヴィツィオーゾが最後の勝負を懸けたのは最終コーナーだった。
マルケスが先行して迎えた最終ラップの最終セクター。テール・トゥ・ノーズで追うドヴィツィオーゾは9コーナーの立ち上がりでややラインをずらすとマルケスの内側に位置取り、最終コーナーでマルケスのインに入った。
内側にラインを取った分、立ち上がりでややはらむドヴィツィオーゾ。しかしドヴィツィオーゾはそのまま先頭で加速していき、トップでフィニッシュラインに飛び込んだ。
このオーバーテイクを可能にしたのは、タイヤのグリップ差だった。ドヴィツィオーゾは「レース終盤、僕はタイヤの右側にグリップが残っていた。これで最終コーナーでのオーバーテイクができたんだ」と語っている。最終コーナーはまさに右コーナーだった。ドヴィツィオーゾは自分が持つ残りの武器から、勝負を仕掛ける場所を把握していた。
「終盤には、マルケスのタイヤの方が消耗していると思った。だからマルケスにぴたりとつけて、あの最終コーナーでのオーバーテイクにトライしたんだ」
ドヴィツィオーゾは、序盤からマルケス攻めるマルケスに追随できたとも語る。マルケスはトップに立ったあと、ドヴィツィオーゾを引き離すことができなかった。
「僕の戦略は、オープニングラップから積極的に攻めることだった。けれど、マルケスはもっと攻めていたよ。マルケスは自分のリズムを築こうとしていたけれど、僕はそれに反応できた」
「本当に今日の勝利がうれしい。僕にとってとても重要な優勝だ」と喜びを語ったドヴィツィオーゾ。2勝目の歓喜を噛みしめた。