NHKスペシャル『#あちこちのすずさん ~教えてください あなたの戦争~』が、8月10日21:00からNHK総合、NHKラジオ第1で放送される。
「#あちこちのすずさん」は、アニメーション映画『この世界の片隅に』の主人公・すずのように、戦時中であっても恋をし、食事などの家事についてあれこれ工夫しながら日々の暮らしを生き抜いた人々のエピソードを募るキャンペーン。戦争を知る世代の記憶を引き継ぎ、戦争体験を未来の世代に伝えるための試みだ。
■『この世界の片隅に』片渕須直監督をはじめ、Hey! Say! JUMP八乙女光&伊野尾慧、広瀬すず、千原ジュニアらが出演。イラストやアニメで戦時中の暮らしを伝える
NHKスペシャル『#あちこちのすずさん ~教えてください あなたの戦争~』には、ゲストとして千原ジュニア、八乙女光(Hey! Say! JUMP)、伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)、広瀬すず、そして映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督が出演。NHK総合の『あさイチ』、NHKラジオ第1『らじらー!』などと連携して集めたエピソードを、アニメやイラストで再現し、「すずさんたちの青春」を蘇らせる。
8月3日にNHK総合で地上波初放送された『この世界の片隅に』。Twitterの日本トレンドで1位、世界トレンドでも2位を記録するなど、大きな反響があった。NHKの「#あちこちのすずさん」特設サイトには片渕須直監督のコメントが掲載中だ。
<戦争中という時代を生きた人々は、今の私たちとは隔絶した存在だったのか、それとも、同じようなところを持つ人たちだったのか。僕は、「僕らと同じ心」を探したいんです。それが確かめられたなら、僕らが感じるあの時代の意味も、また変わってくるように思うんです。>
また『らじらー!』に出演している八乙女光、伊野尾慧、NHK朝のテレビ小説『なつぞら』に出演中の広瀬すずら、若い世代が参加している意義は大きい。八乙女光と伊野尾慧へのインタビューがNHKの広報サイトで公開されている。
インタビューで八乙女は、「戦争を経験された方々が亡くなられたり、ご高齢になられたりで、お話を直接伺うことができるのって、きっと僕らがぎりぎりの世代ですよね。当時の様子を後世に伝えていくことの大切さを感じましたし、僕自身もきちんと理解して取り組んでいきたいと思いました」と語っている。
伊野尾は「戦争のことって聞いちゃいけないのかな? という気持ちもありましたし、もしかしたら話したくない、聞きたくないという方もいらっしゃるかもしれません。けれど今回当事者からお話を伺えるというのは、とてもありがたいことで、貴重な機会だなと。僕らの世代はもちろんのこと、それよりも若い世代へも伝えていくことが大事だと思っています」とコメント。番組では、2人によるロケ取材の様子も放送される予定だ。
■「#あちこちのすずさん」と、暮しの手帖『戦中・戦後の暮しの記録』。一般の人々から戦争体験を募る
「#あちこちのすずさん」は、もともと、昨年8月に『クローズアップ現代+』で放送された番組『#あちこちのすずさん ~庶民がつづった戦争の記録~』から生まれたもの。この番組では暮しの手帖社の書籍『戦中・戦後の暮しの記録』を取り上げていた。
『戦中・戦後の暮しの記録』は、一般の人々から寄せられた戦争中のエピソードをまとめ上げた体験集。第1集は1969年に刊行され、昨年7月には昨年から『戦中・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ』を刊行し、その後2冊の続編を世に送り出した。2017年に実施したエピソード募集では、暮しの手帖社のもとに2千点以上の戦争体験記が届けられたという。
『戦中・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ』には、谷川俊太郎や黒柳徹子、内田樹らに混じって、片渕須直監督とのんもコメントを寄せていた。
「#あちこちのすずさん」キャンペーンは、Yahoo! JAPANを運営するヤフー株式会社と連携。戦争の記憶と記録を100年後の未来に伝えるプロジェクト「未来に残す 戦争の記憶」内で、SNSにハッシュタグ「#あちこちのすずさん」をつけて投稿されたエピソードや写真などを紹介している。加えて、「未来に残す 戦争の記憶」では広島・呉の空襲に関するレポートや当時の写真をAIテクノロジーでカラー化した「呉軍港空襲の記憶/カラーで見る呉空襲」、勝地涼や片渕須直ら著名人10人による未来に向けた平和へのメッセージを掲載する「未来への手紙」といったコンテンツを展開している。
■脈々と営まれ続けた、小さな「日々の暮らし」への温かなまなざし
『この世界の片隅に』や暮しの手帖社の『戦中・戦後の暮しの記録』シリーズ、そして「#あちこちのすずさん」に共通しているのは、「戦争」という巨大な激流の中にあっても、脈々と営まれてきた日々の暮らしへの温かなまなざしだ。人は戦時中であろうと笑うし、おっちょこちょいだし、小さなことでくよくよするし、恋をするし、愛を語るし、おしゃれが気になるし、おなかが空くし、できれば美味しい食べ物を食べたいと思うし、明日に希望を持ったり持たなかったりしながら暮らす。集まったエピソードたちが私たちに聴かせるのは、現代を生きる私たちとそっくりな、血の通った人々がそこで確実に鳴らしていた心臓の鼓動、そのかすかな残響だ。現代日本において実際に第二次世界大戦を体験した人はもう多くないし、多くの人にとっては現実感の伴わない「歴史のお話」かもしれない。だがこの小さな鼓動に耳を澄まして、想像することはそんなに難しくはないはずだ。