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今、ハロプロに何が起こってるのか メンバー卒業&加入、BEYOOOOONDSの躍進などから解説

2019年08月10日 19:41  リアルサウンド

リアルサウンド

BEYOOOOONDS『眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A! /Go Waist』(通常盤A)

 21年目を迎えたハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)の陣容が大きく変わりつつある。7月から始まった『ハロコン』と呼ばれる合同コンサートツアー(『Hello! Project 2019 SUMMER「beautiful」/「harmony」』)を目撃したファンは、大きくメンバーが入れ替わったグループの現有戦力と今後の展開について熱心に討論。その一方で、『TIF』(TOKYO IDOL FESTIVAL 2019)や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』といったイベントに出演したグループは大きな爪痕を残し、「最強アイドル集団」の名を欲しいままにしている。以前からアウェーで滅法な強さを発揮するハロプロ勢だが、この夏はまだまだフェスやイベントの出演も控えているため、新体制を内外にアピールするいい機会となりそうだ。


(関連:BEYOOOOONDS、なぜMVが次々話題に? 人気ハロプロ作品と共通する3つのキーワードから解説


 今、ハロプロ内で何が起こっているのか? 順を追って整理しよう。まずもっとも大きな話題といえば、現ハロプロで7組目となる12人組グループ・BEYOOOOONDSがメジャーデビューを果たしたことだろう。BEYOOOOONDSは「前代未聞」「異色」「トリッキー」といった形容詞が似合う集団だ。多くの楽曲は寸劇チックなセリフ回しを軸に構成されており、ステージングは極めてシアトリカル。メンバーにはミュージカル経験者や女優志望も多く、「歌とダンスのスペシャリスト集団」と呼ばれるハロプロにあって唯一無二の路線を切り拓いているのである。


 8月7日にリリースされたトリプルA面シングル『眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go Waist』はフラゲ日だけで推定売上8万枚を突破し、デイリーランキング1位を記録(参照:https://www.oricon.co.jp/rank/js/d/2019-08-06/)。これはモーニング娘。’19の数字を凌駕するもので、ハロプロ内の序列を一気に塗り替える可能性すら出てきた。グループ結成が決まったのは2年以上前だが、そこから進捗状況が遅々として発表されないなど、ここまで紆余曲折を経てきた彼女たち。それだけにメンバーの喜びと手応えはひとしおのようで、メンバーである平井美葉は「パフォーマンスを重ねるたびに、自分たちの勢いが加速しているなと実感しています」と力強くコメントしている(参照https://natalie.mu/music/news/342743)。


 BEYOOOOONDS以外のグループでも、人事異動が頻繁に行われている。まず6月17日・18日にJuice=Juiceのリーダー・宮崎由加(25)とアンジュルムのリーダー・和田彩花(25)が日本武道館公演で相次いで卒業。特に和田に関してはハロプロ全体のリーダーでもあり、ハロプロエッグの1期生としてプロデューサー・つんく♂の薫陶を受けてきたキーパーソンだ。これをもってして「平成時代の終了からほどなくして、アイドルの世界でもひとつの時代が終わった」と見る向きも多かった。さらに和田卒業の余韻も覚めぬ6月26日には、同じくアンジュルムの勝田里奈(21)もグループ卒業を電撃発表している。


 去っていく者もいれば、来る者もいる。Juice=Juiceに2人、アンジュルムに1人、モーニング娘。’19に3人の新メンバーが加入がすると6月から7月にかけて矢継ぎ早に発表された。特にアンジュルムは昨年11月にも太田遥香(15)と伊勢鈴蘭(15)の2人も加わっている。和田や勝田の卒業と合わせて、首脳陣が大胆なシフトチェンジに踏み切ったことは間違いない。


 では新たに加わったのは、どんなメンバーなのか? Juice=Juiceに加わったのは松永里愛(14)と工藤由愛(14)の2名。どちらもデビュー前から、熱心なハロプロファンによく知られた存在だった。松永は、実力診断テスト(Hello! Project 研修生発表会2019 ~春の公開実力診断テスト~)でベストパフォーマンス賞を獲得。完全実力主義で知られるこのイベントで観客を納得させた彼女は生粋のディーヴァであるといえるだろう。


 モーニング娘。の新メンバーは北川莉央(15)、岡村ほまれ(14)、山﨑愛生(14)の3人。ハロプロ研修生だった山崎以外の2人は、一般からのオーディション加入である。近年のハロプロでは「オーディション不合格→ハロプロ研修生加入→メンバー正式加入&デビュー」という道が主流になりつつあるので、新鮮な風を吹かせる存在になるだろう。現時点ではまだパフォーマンスに参加しておらず、実質的な合流は秋から始まるモーニング娘。の全国ツアーから。パフォーマンスの実力は未知数ではあるものの、加入時の配信映像で先輩メンバーに容赦なく突っ込むなど、物怖じしない姿勢が喝采を浴びている。


 アンジュルムに加わった橋迫鈴(13)は「大豊作」といわれたハロプロ研修生26期の一員。同期がデビューを次々と決めていく中、3年近く腕を磨き続けた。尊敬する先輩にアンジュルム新リーダーの竹内朱莉(21)を挙げていることもあり、ファンも納得の加入劇であった。研修生時代は幼い容姿や発言をからかわれることも多かったが、ここに来て凛とした美少女に進化しつつある点にも注視したい。


 グループのリーダー2人を含む3人が卒業し、8人の新人が加入──。これだけ入れ替われば、当然、グループのカラーにも変化が生じている。新メンバー加入によって、ますますパフォーマンスが先鋭化したのはJuice=Juiceだろう。『うたコン』(NHK総合)や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』などの大舞台に出るたび、「こんなにすごいアイドルがいたとは……!」と“見つかった”状態が続いている。ソウルフルな声の持ち主である高木紗友希(22)と段原瑠々(18)、変幻自在の表現力を持つ宮本佳林(20)、艶っぽいアクセントを随所で与える金澤朋子(24)など、どのメンバーも歌唱エースとしてセンターに立てるような逸材ばかりなのだ。


 新章に突入したアンジュルムも、難しい舵取りを竹内が懸命にこなしている。もともと陽気な性格で人望も厚いだけに、メンバーは和田体制と変わらず一枚岩で邁進中。蒼井優と菊池亜希子が編集長を務めた『アンジュルムック』が売れたことで女性ファンもさらに急増しており、ここから一気呵成に上を目指していくことだろう。


 カントリー・ガールズ、こぶしファクトリー、つばきファクトリーはメンバー変動がなかったものの、もちろん指をくわえて変革の季節をやり過ごしているわけではない。メンバーはBEYOOOOONDSのメジャーデビューによって尻に火がついたような焦りを抱えているし、曲がり角を迎えるハロプロ内で下克上を虎視眈々と狙っているはずだ。少女たちの熱い夏は、まだ始まったばかりである──。(小野田衛)