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レッドブル・ホンダのマシン性能を100%引き出し天性の走りで観客を魅了したフェルスタッペン【今宮純のドイツ&ハンガリー採点】

2019年08月10日 08:11  AUTOSPORT web

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F1第11戦ドイツGPで優勝したマックス・フェルスタッペンと3位表彰台のダニール・クビアト
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はF1第11戦ドイツGP&第12戦ハンガリーGP編だ。
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☆ ロバート・クビサ(ウイリアムズ)
 ドイツGP=10位/ハンガリーGP=19位


 雨のホッケンハイム決勝、誰よりもハンデがあった。2011年から公式タイヤとなったピレリ雨用タイヤは初体験、混乱戦をミスなく12位で走りきる。彼自身、2010年韓国GP以来のウエットレース(ロータスで5位入賞)。レース後アルファロメオ勢のペナルティで繰り上がり10位へ、ウイリアムズに18年イタリアGP以来の入賞を達成(あの腕でよくぞ……)。

☆ ランス・ストロール(レーシングポイント)
 ドイツGP=4位/ハンガリーGP=17位


 この2連戦に『ふたりのストロール』を見た。5回ピットストップをこなし、何度かコースを外れながらドイツGPで4位。昨年後半に名称を変えたレーシングポイントにとっては最高位の結果だ。上位に進んだときにはチャンスを逃さず、勝負強さを見せる。だがハンガリーGPではスタートで遅れてしまいその後も精彩を欠いたレースに。まるでもうひとりのストロールのよう(?)。

☆☆ アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)
 ドイツGP=6位/ハンガリーGP=10位


 この連戦中に明らかな変化が見られた。ホッケンハイムではガスリーと接触する闘いを、ハンガロリンクではチームメイトと果敢なサイド・バイ・サイドを。序盤よりも“強気”なドライビングに転じているのは、マシンパッケージを信頼できるから。確実に次の成長ステップに進む。

☆☆ ランド・ノリス(マクラーレン)
 ドイツGP=リタイア/ハンガリーGP=9位


 ルノーPU関連にトラブルがありながら、少ない周回数で自分のセッティングを見いだす。先輩のカルロス・サインツJr.にひけをとらないタイムペース、第2成長期に入った彼をチームは手厚くサポート。今季のマクラーレンは前半戦でダブル入賞4回だ。


☆☆ ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)
 ドイツGP=3位/ハンガリーGP=15位


 雨に強いイメージはこれまであまりなかったがドイツGP終盤、濡れ乾き路面を力走。猛追してきたベッテルを2位に出してからはしっかり3位をキープ。過去2回の表彰台獲得レースを再現した(61周目に自己ベストラップも記録)。中団チーム勢の3位は2018年アゼルバイジャンGPのセルジオ・ペレス、2017年同GPのストロール、いずれもメルセデス製パワーユニット(PU/エンジン)を搭載したチームだ。それだけに彼の3位は、今年4台供給を開始したホンダの挑戦心をパワーアップする戦果だ。

☆☆ キミ・ライコネン(アルファロメオ)
ドイツGP=12位/ハンガリーGP=7位


 夏ヨーロッパラウンド、第8戦フランスGP:7位/第9戦オーストリア:9位/10戦イギリスGP:8位/11戦ドイツGP:7位(ペナルティ降格12位)/第12戦ハンガリーGP:7位。

 ベテランの開発効果によって再び上昇してきたアルファロメオC38。ドイツGP予選5番手(高速セクター2:5番手)、ハンガリーGP予選10番手(中速セクター2:12番手)。

 高速エリアは伸びるが低中速エリアが劣る特性を受け入れ、その妥協点を探りつつ走り込むキミ。彼がここにいなかったら今年“中団チーム戦線”はこれほどヒートアップしなかっただろう。

☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
ドイツGP=5位/ハンガリーGP=5位


 今年のサインツは、完璧なエースドライバー役を務めている。ドイツGPで直近ライバルのルノーが消えると、マクラーレンのマネージングディレクター、アンドレアス・ザイドルは堅実な“3ストップ作戦”に移行。45周目までインターミディエイトタイヤでカバーを指示、サインツはそれに応じて5位入賞を果たした。

 ハンガリーGPでは数少ないソフトタイヤでのスタート、29周目まで引っ張る“1ストップ作戦”を遂行し5位へ。マクラーレン82点=ランク4位、復興への階段を着実に上る。

☆☆☆ ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)
ドイツGP=11位/ハンガリーGP=16位


 2003年ミナルディ新人時代のフェルナンド・アロンソにそっくり。未入賞がつづいているがエアロアップデートとともに彼自身も“バージョンアップ”。ハンガリーGP予選16番手は自己ベストラップ、セクター2タイムはライコネンに迫る13位相当(!)。レースではストロールを抑える16位、今の環境でベストを尽くしている。


☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
ドイツGP=2位/ハンガリーGP=3位


 サーキットのタイプが異なるこの2戦、コース上でフェラーリSF90の最大限パフォーマンスを引き出そうとまさに格闘していた。いくつものアップデートを試すプログラムを不順な天候条件で消化できず、妥協したセッティングで予選アタックに。

 第11戦ドイツGPは予選20番手→決勝2位、第12戦ハンガリーGPは予選6番手→決勝3位、これ以上のリザルトを今のSF90には期待できまい。この2連戦にやるべきことをやったベッテル。

☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
ドイツGP=決勝9位/ハンガリーGP=1位


 本人が後で「体調不良」を明かしたが、ドイツGP初日から彼らしくないコースアウトが目立った。それでも土曜PPラップに集中したのはさすがと言うほかはない(昨年もこの時期に体調を崩していた)。

 三日間ほどモナコで静養、自身のバッテリーをチャージした勝負師は病み上がりながら、フェルスタッペンとのハンガロリンク対決に競り勝ってみせた。

 汗だくでやや疲弊した表情に映ったが前半12戦に8勝目、250点、席巻するシリーズリーダーは2位フェルスタッペンを称える余裕をみせた。6冠王を目指す彼にいま必要なのは“癒しの休日”だろう……。

☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
ドイツGP=1位/ハンガリーGP=2位


 93戦目に史上100人目のポールシッターとなったアタックラップは流麗そのものだった。狙うラインを外さず、アクセル開度は素早く高く、カウンターステアはほとんど見られない。

 とくにセクター3、難関のここで予選2番手のバルテリ・ボッタスは“3回半くらい”修正動作をしていたが、フェルスタッペンはいっさいなかった。セクタースピードは20位/11位/12位と遅く、それでいてセクタータイムは4位/2位/1位。

 レッドブルRB15とホンダ製PU『RA619H』、そしてフェルスタッペンが一体化した戦闘力の証を見た――。

 戦略的な流れで2連勝はならなかったものの、前半最後の5戦“ミニ・チャンピオンシップ”でフェルスタッペン93点、ハミルトン88点。お楽しみはこれからだ。

PS 皆さま、良い夏休みを――。