WEC世界耐久選手権のボス、ジェラール・ヌーブCEOはトヨタとアストンマーティンが参加表明を行っている2020/2021年シーズン導入予定の“ハイパーカー”規定に、第3のメーカーが加わるかどうかは分からないと述べた。しかし、同氏は新規定のプラットフォームが、長期的な成功に向けて“現実的”であることを改めて主張している。
今年6月、ル・マンで確認された名称不定の新規定にはトヨタとアストンマーティンの2社が参戦に名乗りを上げており、マクラーレン、ポルシェ、ランボルギーニも大きな関心を寄せていると考えられている。
しかし、すでにプログラムを確認している日英2メーカーを除いた各ブランドは、2020年半ばにスタートする新規定のデビューシーズンのための準備が整っていない。
ヌーブは現在も“多くの”OEMメーカー(=マニュファクチャラー)と話をしているというが、短絡的には期待値を現実的なラインに置く必要があると述べた。
「(メーカーが参加するか否かは)どちらの方向にも意思決定が非常に早く傾くものなので、今すぐに状況を語るのは非常に難しい」とSportscar365に語ったヌーブ。
「我々はまずシーズン8をスタートさせる必要がある。その後の2020年半ばには、新シーズンが始まる9月の状況がよく見えてくるだろう。それまでは何かを語るにしても時期尚早だ」
トヨタとアストンマーティンに続く第3のOEMメーがーが、2020年から始まるシーズン8に向けて準備を進めているのか、またその見通しが立っているのかを尋ねられたヌーブは、この短い期間の間にそれを完了させることは非常にチャレンジングだと述べた。
「2021年に向けた動きはあるだろう」と語ったWECのボスは、「2020年については、すべての準備を整えるために今から動き出した場合、既存のシャシーを使用する場合を除いて、非常に集中的な作業をする必要があるため現実的ではない。相当な難しさがあるだろう」と続けた。
「舞台裏では多くの議論が行われている。関心は相変わらず高いよ。しかし、私はとても現実的なものの見方をする。関心があるのはひとつだけ、その唯一のものは最後のコミットメントだ」
「個人的には、議論が行われている間は静かに見守らなければならないと考えているんだ。いずれかの決定があれば、それについての発表があるからね」
■量を求めるジャン・トッドFIA会長と質重視のヌーブCEO
FIA国際自動車連盟のジャン・トッド会長は、ハイパーカー規定の将来について強気の姿勢であり、プログラムへの参加について対話する可能性のある5つの自動車メーカーを名指ししている。これについて、ヌーブはFIAのトップが量より質の向上に努めていると主張する。
「率直に言って、トップカテゴリーに10のマニュファクチャラーを招き入れる必要はない」とヌーブ。
「2~4メーカーさえ居れば充分だ。近年のLMP1では3つのメーカーによって非常に見応えのあるチャンピオンシップが展開されたしね」
「反対にそれ以上のメーカーを抱えれば、別の問題が生じてくるんだ」
■今後のシリーズ発展に向けてWECが必要なこと
その一方で、ヌーブは早ければ2021年までにWECの構造とフォーマットを変更する可能性を示唆した。
昨季“スーパーシーズン”から開始されたル・マン24時間を最終戦とするウインターシリーズのフォーマットを維持することを計画しているヌーブだが、選手権は絶えず変化する自動車産業に寄り添っていく必要があると語った。
「事実、オーガナイザーとプロモーターの立場から、2021年のチャンピオンシップをどのように設定したいかを確認するために、注意を払う必要があるというのが私の信念なんだ」
「世界は急速に変化している。自動車のグローバル市場は以前とは比べ物にならないほど変わっており、絶えずプレッシャーを受け続けている。それは難しいことだが、同時に良いことでもあるはずだ」
「これは多くのことをリセットし、再考しなければならない期間だと思う。シリーズのフォーマットとそのマネジメント方法について再考する良い機会だよ」
「我々は経済的な側面や予算、チームと一緒に移動する方法、ガバナンスプロセスについても注意しなければならないと考えている。これは非常に重要だと思う」