ハンガリーGPで、ついにポールポジションを獲得したレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペン。今シーズンはすでに2回の優勝を決めていて、フェルスタッペンは驚異の連続入賞を続けている。その要因はもちろん、ホンダPU(パワーユニット)の信頼性とパフォーマンスの向上、そしてレッドブルRB15のアップデート・パッケージが当たり、タイヤグリップの向上と神経質だった部分が解消されてきた結果による。
今季のレッドブルはホンダという新しいメーカーのエンジン/パワーユニットを迎えた新しいパッケージであり、車体面としては表向きのエアロの変更が注目されがちだが、RB15のハンガリーGP仕様は同じエアロでもホイールのインターナルエアロが面白かった。
メルセデスは今回のハンガリーGPのレースでは逆転で優勝はしたものの、ブレーキの問題を抱えていて、ディスクのオーバーヒートと摩耗に苦しめられていた。
実際、TV映像ではフルブーレキングで左フロントのホイールスポークを抜けて毎周、大量のカーボンダストが吹き出していたが見えた。あの状態のままでは、ブレーキへの耐久性の面で危なかったと言う。ブレーキのオーバーヒートの問題を克服するには、当たり前だがブレーキ・アクスル周りの熱をきちんと制御し、適正温度を維持する必要がある。
だが、結果的にメルセデスはこのブレーキトラブルに苦しみ、後半でピットインしてタイヤを履き替える作戦変更を余儀なくされたが、むしろこれが的を射て優勝に結びついた。
そのメルセデスがブレーキのオーバーヒートで苦しんだ一方、PPのレッドブル・ホンダはブレーキ温度にはそれほど悩まされることはなかった。
ハンガロリングは右回り、強いブレーキングが必要な3つのコーナはすべて右、つまりブレーキングでの負担の多くが左フロントに集中して、左側のブレーキのオーバーヒートと過度摩耗が起こりやすくなっていた。
これに対してRB15ではアップライト全域を覆うホイールドラムに冷却口を前後に開けている。それも、左側のブレーキドラムに。右側のブレーキドラムはと言うと、この開口がまったくない。つまり冷却のオフセット、左右での温度変化の違いを受けてのクーリングのシステム変更で、左右の辻褄を合わせているわけだ。
左右の冷却のキャパシティーを変えるのは決して珍しくはないのだが、これほど大胆なのも珍しい。つまり、ハンガロリンクのコース特性と真夏の気温によって、こんな極端なオフセットが必要なほど左右のブレーキへの負荷が大きく異なってくると言うわけだ。
レッドブル・ホンダはたしかかに、まだメルセデスに完全には追いつけていないと言われるが、今回のレースでもレッドブルRB15は細部に至まで全域でアップグレードを施し、メルセデスを追い詰め始めた。