オーストラリア大陸最大のツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーを運営するオーガナイザーのテクニカル部門は、シリーズに参戦するフォード・マスタング・スーパーカー、ホールデン・コモドアZB、ニッサン・アルティマL33のうち、今季からカスタマースペックを走らせるニッサン陣営のケリー・レーシングに対し、次戦までのエアロキットのアップデートを許可する方針を決めた。
2019年に投入されたフォード・パフォーマンス謹製の新型Gen2モデル、マスタング・スーパーカーが早くもマニュファクチャラー・タイトルを獲得したVASCシリーズは、ここまでも車両重量配分やCoG(センター・オブ・グラビティ/重心高中心)などの調整で性能均衡化策を施してきたが、ここまで苦戦を強いられているニッサン勢に対し、さらなる緩和措置を認めることとなった。
2018年限りでファクトリープログラムを休止したニッサン・モータースポーツに対し、今季はプライベーターとして引き続きL33型アルティマを走らせているケリー・レーシングは、これまでもVASC技術部門に対してマシンのテクニカルパートの変更をリクエストしており、そのなかにはフロントアンダートレイ、トランクリッド、リヤウイングのガーニーフラップの形状変更など空力性能に関する要望も含まれていた。
そのため、ケリー・ニッサンはCFDによる検証データをVASC委員会に提出の上、第9戦のイプスウィッチ・スーパースプリント終了後に単独テストを受け、そのデータが裏付けられたとして、性能向上につながるエアロパーツのアップデートが承認された。
チームオーナーで自らも数年前までアルティマのステアリングを握っていたトッド・ケリーは、この変更承認がアルティマをグリッドの前方へと押し上げる最初の一歩になると期待を語っている。
「それは本当に小さな一歩かもしれないが、我々がこのマシンに何ができるをを考え、具現化できた内容にはとても満足している」と語ったケリー兄弟の長兄でもあるトッド。
「2019年シーズンを席巻したフォードのマシンと、Gen2規定をいち早く取り入れたホールデン・コモドアZBの2台は、このシリーズ前半戦にも細かな性能調整を受けて性能均衡化を進めているが、我々のアルティマはその2台とはボディ外観の構成からして大きく異なっているんだ」
「シーズン半ばで技術的に重要な変更を加えるのは最善の方法ではないかもしれないが、フロントのアンダーボディとリヤエンドのわずかな形状に変更を加える我々のアイデアは、小さな修正で最大限の効果を得る、良い妥協点だと考えている」と続けたトッド代表。
「シーズン後半に向け、弟のリック、そしてアンドレ(・ハイムガートナー)とシモーナ(・デ・シルベストロ)、そしてギャリー・ヤコブセンには、より良いレースカーを提供したい。グリッドを10個も飛び越えるマシンにはならないかもしれないが、今までの仕様よりは確実に向上し、さらに重要なことはもう少し調整可能な範囲が残されていることだね」
スーパーカー・シリーズのモータースポーツ部門責任者を務める元VASCチームオーナーのエイドリアン・バージェスも、この変更がケリー・レーシングにとってどんな意味をもたらすかを、詳細に解説する。
「もちろん、彼らはこの変更に先立って早急な対応を要求してきたが、我々としても彼らに存分なアップデートを進めて欲しいと思っているんだ」と語ったバージェス。
「この変更は、基本的に彼らにさらなるダウンフォースを与えるものにはなっていない。しかし、彼らの空力中心を調整することでマシンのピッチセンシティブな部分を改善し、よりドライバビリティとセットアップ感度に優れたマシンになるはずだ。これにより、ドライバー、エンジニアはさらに広域なセットアップ・ウインドウを活用することができるだろう」
ケリー・レーシングは8月23~25日に開催される第10戦ザ・ベンド・スーパースプリントを前に、8月13日にウィントンで実施されるインシーズンテストで、マシン変更点の確認とセットアップ作業を進める計画となっている。