TCRジャパンと同様、2019年に初年度シーズン開幕となったオーストラリア大陸の新シリーズ第4戦が、8月2~3日の週末にクイーンズランド・レースウェイで開催され、このラウンドにゲスト招聘されたTCRインターナショナル最後の王者、ジャン-カール・ベルネイ(アウディRS3 LMS)が土曜レース1で貫禄のポール・トゥ・ウイン。しかし日曜を前に突然の体調不良で代役ドライバーにシートを譲るハプニングとなった。
オーストラリア大陸東海岸、ブリスベン近郊に位置するイプスウィッチを舞台に開催されたTCRオーストラリア2019年シーズン第4戦は、ここまでバサースト1000勝者のガース・タンダーにアウディRS3 LMSのステアリングを託していたMPC(メルボルン・パフォーマンス・センター)が大物助っ人を起用。WTCR世界ツーリングカー・カップ参戦中のベルネイが"ダウン・アンダー"デビューを飾ることとなった。
そのベルネイは、アウディスポーツ契約のエキスパートとして実力を遺憾なく発揮し、コーナー数わずか6つの全長3.13kmのストップ・アンド・ゴー・レイアウトをいち早く攻略すると、アシュリー・シューアード・モータースポーツのデュラン・オキーフ(アルフォロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR)や、MPCの同僚となった元VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー王者のラッセル・インゴール(アウディRS3 LMS)らを置き去りにし、7秒952のギャップを築いて完璧なポール・トゥ・ウインを飾った。
大役を果たした安堵も混じりつつ、フィニッシュ後の会見に臨んだベルネイは、開催初年度にも関わらず、このオーストラリアの新選手権が数あるTCRナショナル・シリーズの中でも最高レベルのクオリティを備えている、との印象を語った。
「まず初年度の参加台数が18台にのぼるというのも、他のTCRシリーズと比較しても素晴らしいことだよね。予選のタイム差を見ても、このシリーズのコンペティションレベルがいかに高いかが証明されている」と、Wall Racingのジョン・マーティン(FK8ホンダ・シビック・タイプR)に対し、0.006秒差でポールシッターとなっていたベルネイ。
「とくにスーパーカー出身ドライバーたちの速さは疑いようがないね。タイトルを獲得した実績のある彼らは百戦錬磨の技術を持っている。それにもっと驚いたこととしては、各マニュファクチャラー間の性能差がとてもクロスした状態に保たれていることだ」
「僕らが普段戦っているWTCRでは『今週は僕らアウディの番、ホンダとヒュンダイは次のラウンド』みたいな暗黙の空気がある。それほどラウンド間で性能調整ウエイトの変動幅が大きいんだ。でも、ここではコンマ1秒の中にアルファロメオ、ホンダ、ヒュンダイが並んでいる。素晴らしいことだよね」と続けたベルネイは、初参戦のレース1を振り返った。
「オープニングラップはタイヤの内圧が上がり切らず、2周ぐらいはスライドが収まらずにコントロールが難しかった。このトラックはライン外のダストが多く、レコードを維持することに気を配ったよ。そこからマシンの速さは一貫していて、ドライブが楽しかった」
「本当はコース図を見たとき、ここがオーストラリアでも楽しいトラックに入るとは思えなかったんだ。でも実際は全然異なっていて、非常に面白かったよ。新しいレーストラック、新しい国、新たな学びの経験ができて本当にハッピーだ」
そう語って、明けた日曜のレース2もポールポジションからスタートを切る予定だったベルネイだが、その晩に体調不良となり突然のダウン。早朝に医師の診断とアドバイスを受けた結果、レース参加を取り止める事態となり、代わってアウディRS3 LMSは豪州ツーリングカー界のビッグネーム、グレン・シートンの息子であるアーロンが起用され、MPCのエースカーはグリッド最後尾からのレースに。
この変更でポールに繰り上がったオキーフのアルファロメオがレース2、そしてレース3を制し、「ここまでマシンの感触が良かったので、この週末は狙っていた」と、日曜の2ヒートを完全制圧している。
続くTCRオーストラリア・シリーズ第5戦は約1カ月のインターバルを経て、メルボルン近郊のウィントン・モーター・レースウェイで、8月31日~9月1日に3ヒートが争われる。