8月23~25日に行われる第48回サマーエンデュランス『BH オークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース』に向け、8月6~7日の2日間、二度のF1ワールドチャンピオンであるミカ・ハッキネンがPlanex SmaCam Racingのマクラーレン720S GT3でテストを行った。今季の鈴鹿10時間のなかでも注目を浴びているハッキネンの参戦だが、テスト後、メディアに向けてテストの印象や鈴鹿について語った。
鈴鹿サーキットモータースポーツファン感謝デーでは走行しているものの、この日ひさびさにレーシングスピードで鈴鹿を走ったハッキネン。多くのファンが詰めかけるなどその人気は健在だったが、1時間半のテストのなかで、休憩を挟みながらもしっかりと走り込み、下旬に迫った鈴鹿10時間参戦に向け、マクラーレン720S GT3のフィーリングを掴んだ。
テスト後、Tシャツとショートパンツ姿に着替えたハッキネンは、取材予定時間から5分ほど遅れてピット棟2階に姿をみせた。「皆さん、お待たせして申し訳ない。日本は本当に暑くて着替えに時間がかかってしまった。さあ、僕の美しい足を撮ってくれ(笑)」とおどけたハッキネンは、笑顔で椅子に腰掛けた。
「それにしても今日は、あのレーシングスーツの中に着るもの(クールスーツ)がなければ走りきることはできなかったね。あれは本当にいいよ」
以下、メディアとハッキネンの一問一答をお届けしよう。ハッキネンらしい回答に、笑いが絶えない取材会となった。
──レーシングスピードではひさびさの鈴鹿の走行だったと思いますが、いかがでしたか?
ミカ・ハッキネン(以下MH):本当に素晴らしいよ。実に素晴らしい。なぜそれほど素晴らしいかといえば、鈴鹿サーキットは輝かしいコースであり、美しく、路面も本当に質が高い。それに加えて高速コーナーもあれば、素早く向きを変える必要があるコーナーもある。ストップ&ゴーのコースはレーストラックではないよ。ここは美しく、スムーズにコーナーが描かれており、素晴らしいラップを楽しむことができるコースだ。
また、今回素晴らしかったのは、僕は以前F1でこのコースを走ったことがあり、良く知っているということもあるだろう。すぐにレーシングスピードで走ることができ、ベストなラインも分かっているつもりだ。初めてのコースでは、どこでブレーキを踏んで、どうコーナーを攻めるか知る必要があるが、ここでは不要だ。だからクルマの技術面に集中することができる。クルマが、エンジンがどのように動いているのか、もちろんマクラーレン720S GT3はトラクションコントロールもABSも、パワーステアリングもついているクルマなので、それらがどう動くのかを知ることが必要だった。トラックについてよりも、クルマに集中することができるんだよ。これは素晴らしいことだ。
──鈴鹿の経験は豊富ですが、真夏に走ることは初めてだと思いますし、また夜に走るのも初めてだと思いますが、その点についてはいかがですか?
MH:とても難しいね(笑)。夜に走ることはまあ大丈夫だろう。実際は他にもクルマがいるとは思うんだけど、特に今回は僕ひとりだったからね。無線やセッティングにも気を遣わなければならないし、それにいろいろなボタンを押さなければならないが、それにしても暗くて見えないんだ! 『オーマイガッ! どのボタンを押せばいいのか見えないぞ』ってね(笑)。これは大変だった。
実際、無線をつけようと思って押したらドリンクのボタンだったし、別のボタンを押したらワイパーが動いちゃったりね(笑)。ビックリしたよ。でもすべてが新しい挑戦だよ。ヨーロッパを出て名古屋に着いて、今日少し走って、明日も走る。そしてヨーロッパに戻り家に帰るんだが、その時には大きく自信をつけていると思うんだ。今日はチームのみんなにも会えたし、久保田(克昭)さんにもまた会うことができた。チームがどんな動きをしているのかを知ることができたし、来て良かったと思っているよ。またレースまでにもっと習得したいね。
それにしても、暗いなかでどうやってボタンの位置を把握したらいいんだい? ヘルメットにライトでも着けておいた方がいいかな(笑)?
──今回、はじめてGT3という規格のレースに出場しますが、どんな印象を持っていますか?
MH:初めてGT3カーを日本で走らせるし、マクラーレン720S GT3でレースに出るのも初めてだが、今まで4時間のレース(2011年にILMCズーハイ戦にメルセデスベンツSLS AMG GT3で参戦)しか出たことがないからね。大きな違いがあるし、こちらの方がとても大変なレースになるだろう。10時間もあるんだからね。それに何より暑い(笑)。
──チームメイトの久保田選手は以前からご存知だったと聞いていますが、同じくチームメイトになる石浦宏明選手についてはどれほどご存知ですか?
MH:そうだね。石浦選手については、非常に大きな成功を収めた経験があり、速いドライバーだということは承知している。チームから『彼はとても速い』と聞いているし、数年前にチャンピオンを獲っているんだろう(2015・2017年にスーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得)? それにまだ若い。幸運にもね(笑)。チームの3人のドライバーとしては、いいバランスなんじゃないだろうか。
──ハンガリーGPをご覧になったかは分かりませんが、最近のF1をどうご覧になっていますか?
MH:とてもエキサイティングなレースがスタートからフィニッシュまで展開されていると思うね。特に、個人的にはチームの仕事が非常にプロフェッショナルで印象的だと思う。彼らはタイヤの状態や燃料消費、そしていつピットストップをするかを非常に素早く分析し、判断している。本当にすごいと思うよ。素晴らしいショーだ。状況が変わっても素早い判断を行っていて、判断するプロセスも正しい。(自身がアンバサダーを務める)マクラーレンについても、ザック・ブラウンを中心にチームはいい仕事をしていて、このところ自信を深めていると思うし、シーズン後半もいいレースをすると思うね。
では、お腹も空いたのでここまでにしよう(笑)!