2019年08月07日 10:11 弁護士ドットコム
「妻とは離婚する」。不倫相手のそんな言葉を信じて、ひたすら待ち続けている人も多いかもしれません。弁護士ドットコムには、「離婚する」と言ってしない彼に慰謝料請求したいという相談が寄せられています。
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相談者の女性は、3カ月前から会社の上司と不倫をしています。上司は「7月までに決着をつける。弁護士にどうしたらいいか相談しに行く」と話しましたが、実際には行きませんでした。「ふとした時に出る話題を聞いていると離婚するようには、思えなくなってきています」と不信感を募らせています。
「何もなかったかのように家庭に戻ることは許せません」。女性は上司の妻にバレることも承知で、騙されていたとして慰謝料請求を考えていますが、請求はできるのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
ーー相談者は相手が本当に離婚するのか、不信感を抱き始めたようです
信じて待っているのに不信感だけが募る。辛いですよね。本当は離婚しないのではないか、離婚する、という上司の言葉にすがっている状態かもしれません。
相手に対し損害賠償できるのは相手の「不法行為」により、こちらに「損害」が発生したときです。「損害」というのは、騙されて金銭を交付してしまった場合はもちろん、著しい精神的苦痛を被った場合も含みます。
ーーでは、今回の事例も慰謝料請求はできるのでしょうか
今回は、既婚であるのに未婚であると騙し、こちらも相手が未婚と完全に信じたからこそ関係を持ったという場合と異なり、既婚であることを知りながら相談者の方が関係を持ったようにうかがえます。
また、相談者の方は「離婚しないかも」と思いながらも、関係を継続してしまっているようです。
すると、不倫相手である上司が、相談者の方に「離婚する」と話していたことは、「不法行為」とまではいえませんし、相談者の方も完全に騙されていたとまでは認められない可能性が高いです。
ーー今回の事例では、難しいということですね
不倫事案では、不倫相手に対し、離婚するつもりはないのに「配偶者とはうまくいっていない」、「家庭内別居である」、「離婚するつもりである」と話す人は多いです。
一方で、もし今回の関係が発覚すれば、上司が既婚であると分かって関係を継続していることを理由に、上司の妻から逆に慰謝料請求される可能性は高いでしょう。
何もなかったかのように家庭に戻るのは許せないというお気持ち、とてもよく分かります。
どうしても許せない場合は、上司と関係を清算するための話し合いをきちんと持ち、相談者の方の気持ちを伝えてみましょう。ただ、その後は、きっぱりと関係を絶つことをおすすめします。
【取材協力弁護士】
光安 理絵(みつやす・りえ)弁護士
大阪大学法学部、同大学院法学研究科修了後、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)入社、本社法務本部配属。2003年司法試験合格、司法研修所を経て、東京地方検察庁、横浜地方検察庁において検察官として捜査・公判活動を行う。2007年に検察庁を退官し、仙台弁護士会に弁護士登録。現在、弁護士4名を擁するソレイユ総合法律事務所代表弁護士を務め、離婚事件、交通事故事件、刑事事件等を多数扱っている。
事務所名:ソレイユ総合法律事務所
事務所URL:http://www.sendai-soleil.net/