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城 南海、洋楽カバーで見せたシンガーとしての新たな表情 デビュー10周年記念『ウラアシビ』ツアー

2019年08月06日 14:21  リアルサウンド

リアルサウンド

城 南海(写真=川本史織)

 2019年1月にデビュー10周年を迎えた、奄美大島出身のシンガー・城 南海。彼女が今夏『ウラアシビ ~10th Anniversary~』と題したスペシャルツアーを開催した。城は例年『ウタアシビ(唄遊び)』と名付けられたツアーを行っているが、今回は“裏”というコンセプトのもと、普段はなかなか聞くことのできない洋楽カバーを披露。アンコール含め全12曲、おそらく彼女と10年を共に歩んできたファンにとってもこれまで見たことのない城 南海のシンガーとしての表情を楽しむことができた特別な機会になったのではないだろうか。


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 『ウラアシビ』はブルーノート名古屋、モーションブルー横浜、ビルボードライブ大阪、そして東京はコットンクラブと日本有数のジャズクラブを巡った、城にとって初の試みとなる企画ツアー。食事やお酒(城とのコラボフード・ドリンクも用意)を嗜みながら音楽を楽しむ、まさに大人の空間だ。


 7月23日、コットンクラブの2ndステージに姿を現した城は、「Rainy Days and Mondays」(Carpenters)からライブをスタート。流暢な英語詞をまろやかに歌い上げる城の姿には、普段とは違った妖艶さがある。また、ジャジーなバンド演奏にあわせて城が弾く三味線の音色が同曲を城ならではのカバー曲に仕立て上げた。「I feel the Earth Move」(キャロル・キング)では、会場にくまなく視線を送る仕草が曲調とあいまってセクシー。「Don’t Know Why」(ノラ・ジョーンズ)はピアノの調べに導かれるようにしっとりとした歌声を聞かせる。声質との相性も抜群な選曲だ。


 MCでは「いい意味で裏切りながら裏の顔を見せていきたい」と語った城。その言葉のとおり、「Happy」(ファレル・ウィリアムス)は歌との掛け合い部分で三味線を使った大胆なアレンジでオリジナリティ溢れるハッピーな空間を創出。一転して「You Gotta Be」(Des’ree)、「Fields of Gold」(スティング)と続いた90’sヒットソングパートでは、城の澄み切った歌声に心が浄化されるような感覚をおぼえた。


 今回の『ウラアシビ』ツアーを開催するにあたり、城は1カ月間英語の発音などを特訓していたのだという。実際、どの曲も発音がとても美しくまるで違和感がない。さらに、その期間に磨かれたリズム感が日本語で歌うときにも活かされているのだとも語っていた。デビューから10年経った今なお、自らの歌唱技術に磨きをかけるその姿勢があるからこそ、城は唯一無二の奄美の歌姫として長らく愛されてきたのだろう。


 「城アレンジでお届けします」と披露された「Dancing Queen」(ABBA)は、オリジナルのダンスナンバーとは打って変わってエレピが響く柔らかい印象に。続くシンディ・ローパーの「True Colors」では、ひときわの新鮮さがあった。可憐な声色を使って歌いあげる同曲はこの日のハイライトとも言える輝きを放っていた。アデル「Rolling in the Deep」は、エレキギターが効いた攻めたアレンジに。城はステージを動き回り、コミュニケーションをとりながら腹の底から響く歌声で観客を圧倒した。


 楽しい時間はあっという間にエンディングを迎え、最後を飾るアン・ハサウェイ「I dreamed a dream」へ。城は「10周年は猪突猛進、いろんなことにチャレンジしたい」「気負わず、とらわれずに、いろんな城 南海を楽しんでもらえるように」と今後の歌手活動について宣言し、いつか歌ってみたいと思っていたという同曲をドラマチックに歌い上げてステージを去った。


 アンコールでは、独唱で崇高な歌声を聞かせたアイルランド民謡を原曲とする「Danny Boy~紅」、「ここからまた羽ばたいていろんなところに行きたい。ご縁に感謝」と告げてメジャーデビュー曲「アイツムギ」を10周年バージョンで披露。工藤拓人(Pf)、北島優一(Gt)、バンドマスターで編曲も担当した船曳耕市(Ba)、平里修一(Dr)といったミュージシャンたちとともに作り上げた極上のステージの幕を下ろした。


 秋には『BSフジpresents デビュー10周年記念 城南海 with 1966カルテット クラシカルコンサート』と題した初のクラシックコンサートツアー、全国ホールツアー『ウタアシビ 10周年記念ツアー』の開催が控えている。10周年を境に挑戦を重ね、さらなる進化を遂げていく城南海の歌声がますます楽しみになった。(久蔵千恵)