2019年のスーパーGTは8月4日、シリーズ最長500マイルで争われる第5戦富士の決勝レースが行われ、スーパーGT GT300クラスは他チームと異なる変則的ピット戦略を採ったT-DASH ランボルギーニ GT3が優勝を奪った。
日本国内では5月末以来のシリーズ戦開催となった第5戦。この週末も連日続く厳しい暑さに見舞われ、決勝日も早朝からじっとりと汗をかくようなコンディションとなった。
決勝日の富士スピードウェイ上空には青空が広がっていたこともあり、気温もぐんぐんと上昇。決勝スタートの段階で気温33度、路面温度51度、湿度38%という状況だ。
決勝前に行われたウォームアップ走行でarto RC F GT3のタイヤが外れるアクシデントから赤旗が出されたため、177周のレースは定刻より10分遅れの13時40分、静岡県警察先導によるパレードランで幕を開けた。なお、ウォームアップで止まったarto RC Fはレースに参加したほか、McLaren 720Sはトラブルからピットレーンスタートとなった。
GT300クラスはレース序盤から埼玉トヨペットGB マークX MCとHOPPY 86 MCの2台がレースをリード。スタート直後こそRUNUP RIVAUX GT-Rにトップの座を譲ったものの、11周目にはHOPPY 86が、19周目には埼玉トヨペットGB マークXが交わし、ここからは2台のマザーシャシーがレースをけん引する形となった。
34周目、埼玉トヨペットGB マークXにオーバーテイクを許したHOPPY 86が先行してピットイン。埼玉トヨペットGB マークXは36周を消化してピットインすると、タイヤ無交換で作業を終えてHOPPY 86の前、実質上のトップに浮上した。
そして、ここで変則ピットを敢行したのがT-DASHランボルギーニ。39周目に1度目のピットへ向かいアンドレ・クートから第3ドライバーの藤波清斗へ交代すると、その翌周の40周目に再度ピットイン。藤波はわずか1周でマシンを降り、高橋翼へステアリングを託したのだ。
この間もレースは埼玉トヨペットGB マークXとHOPPY 86がリードする形で進行していき、先行する埼玉トヨペットGB マークXが66周目にピットイン。しかし、ここで左リヤタイヤの交換作業に時間を要してしまい、タイムをロスしてしまう。
これでHOPPY 86が有利になるかと思われた直後の68周目、トヨペット100Rで発生していたZENT CERUMO LC500のクラッシュに対してセーフティカーが導入されてレースはリセット。2度目のピットを終えていなかったHOPPY 86は逆境に立たされることになってしまった。
クラッシュしたZENT LC500の回収や隊列の整理などを経て、レースはGT500で80周目、GT300で75周目に再開されると、リスタート直後に暫定首位だったHOPPY 86がピットへ。しかし、マシンフロントにダメージを負っていた影響でエアジャッキを素早く差し込めず、大きくポジションを落としてしまう。
これで埼玉トヨペットGB マークXがトップかと思われたが、その前にはT-DASHランボルギーニの姿が。ただ、T-DASHランボルギーニは、85周目にピットインし高橋から藤波へバトンをつないだため、ふたたび埼玉トヨペットGB マークXがラップリーダーにつけた。これにD’station Vantage GT3やグッドスマイル 初音ミク AMGが続く。
その後、D’station Vantage GT3やグッドスマイル 初音ミク AMGは3度目のピットインでいったんポジションを落とすことになり、後方からの追い上げることに。ポジションを争う2台は上り勾配のセクター3でサイド・バイ・サイドのバトルを繰り広げると、D’station Vantage GT3がアウト側、初音ミクAMGがイン側につけて13コーナーへ。
すると、その初音ミクAMGのインからau TOM’S LC500が追い抜きにかかると、もっともアウト側のポジションからターンインしていたD’station Vantage GT3がau LC500と接触。au LC500は左フロントに大ダメージを、D’station Vantage GT3もマシンにダメージを負ってしまい、ポジションダウンを余儀なくされた。
■戦略奏功したT-DASHランボルギーニが逃げ切り優勝。2位の埼玉トヨペットGB マークXは粘りの走り
セーフティカー明けからサバイバル戦の様相を見せ始めてきた富士500マイルレースは、GT500の周回で107周目、ホームストレート上でストップしたリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rから出火するアクシデントがあり、この日2度目のセーフティカーが導入される。
セーフティカーランはGT500の周回で112周目、GT300で104周目まで続き、105周目から再開。この時点では埼玉トヨペットGB マークX、リアライズGT-R、Modulo KENWOOD NSX GT3というトップ3だったが、セーフティカー退出直後にリアライズGT-Rはピットへステアリングを切ったため、Modulo NSX GT3の後方にはシンティアム・アップル・ロータス、UPGARAGE NSX GT3が続く形となった。
トップを走る埼玉トヨペットGB マークXは104周目に3回目のピットインを敢行。ここでもタイヤを換えず32.2秒の静止時間で作業を終えると、クラス8番手、T-DASH ランボルギーニに続く実質2番手のポジションでコースへ戻っていった。
トップを走るT-DASHランボルギーニの藤波は最終スティントへ燃料を残すためかスティント終盤には大きくペースを落としながら、124周目を終えたところで、このレース最後となる4回目のピットへ。最終スティントをクートへ託してマシンを送り出した。
T-DASHランボルギーニのピットインで見た目上トップに浮上した埼玉トヨペットGB マークXは129周を終えたところで4度目のピットへ。最終ピットでもタイヤ交換は行わず、ドライバー交代と給油のみを実施。3スティント目のタイヤで最終スティントへ臨んだ。
タイヤ無交換作戦もあり、埼玉トヨペットGB マークXは1分以上あったT-DASHランボルギーニとの差を36秒弱まで縮めることに成功したが追い抜きは叶わず。あとはコース上での戦いとなる。
全車が最後のピットストップを終えると、トップのT-DASHランボルギーニ、2番手埼玉トヨペットGB マークXの後方、3位表彰台のポジションには、こちらもライバルとは違うピットタイミングとなっていたUPGARAGE NSX GT3が浮上。4番手にModulo NSX GT3、5番手にマネパ ランボルギーニ GT3が続く形となる。
トップのT-DASHランボルギーニが大量リードを築く一方、3番手UPGARAGE NSXと4番手Modulo NSX GT3は1.014秒差、4番手Moduloと5番手マネパ ランボルギーニは4.323秒差と接近した状態で、レースは終盤へと突入した。
UPGARAGE NSX GT3の小林崇志とModulo NSX GT3の大津弘樹によるNSX GT3同士の3位争いは、146周目のホームストレートでサイド・バイ・サイドのバトルに発展。ここでは先行する小林がイン側をキープしてポジションを守ったが、続くAコーナー~コカ・コーラコーナーで、ふたたび大津がサイド・バイ・サイドで勝負を仕掛ける。
すると、コカ・コーラコーナーに向けてアウト側につけていた大津はトヨペット100Rへの飛び込みでUPGARAGE小林の頭を抑えることに成功し、3番手を奪ってみせた。
この時点でレースは最大延長時間内に規定周回数に届かないことが分かり、時間制へ移行。最大延長時間である18時40分までの争いへと変化した。
このタイミングで2番手埼玉トヨペットGB マークXと3番手Modulo NSX GT3には10秒以上のギャップがあったものの、3スティント連続で同じタイヤを履いている埼玉トヨペットGB マークXは思うようにペースが上がらず。レース残り20分を切ったところから、大津のModulo NSX GT3が1周1秒程度のペースで迫り始める。
大津の猛追は続き、レース残り12分の時点で、先行する埼玉トヨペットGB マークXとは6.88秒差まで接近。しかし、ここからは吉田が反撃してペースを上げたため、レース残り6分の時点で5.662秒差を保ってみせた。
2位争いが熱を帯びるなか、トップのT-DASHランボルギーニは危なげない走りで逃げ続け、最終的に36.75秒の大量リードを築いてトップチェッカー。13番手スタートからの逆転でシーズン初優勝を飾った。
ランボルギーニに続く2位は終盤ペースを上げて、2.152秒差でModulo NSX GT3を抑えきった埼玉トヨペットGB マークXが獲得して2019年シーズン2度目の表彰台。3位にはModulo NSX GT3が続いた。
4位はUPGARAGE NSX、5位はマネパ ランボルギーニ GT3が獲得。以下、ARTA NSX GT3、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、グッドスマイル 初音ミク AMG、GAINER TANAX GT-Rと続き、10位にはパワーで勝るFIA-GT3勢に対し、何度もホームストレートやTGRコーナーなどでオーバーテイクを演じたSUBARU BRZ R&D SPORTが入った。。
2019年のスーパーGT、シリーズ第6戦は9月7~8日に行われるオートポリス戦。スーパーGTではシーズン残り2戦からウエイトハンデ係数が変わるため、この第6戦がもっともウエイトハンデが大きい戦いとなる。