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雨のパレード、アジアで急上昇する人気と「Summer Time Magic」にみるブレイクの予感

2019年08月03日 19:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 情報過多な定額制音楽ストリーミングサービス時代。課題は、楽曲リリース数の増加を補うメディアの対応力だ。月刊紙媒体では紹介しきれず、日に数十本の配信を行うニュースサイトですらシーンの全貌を捉えることは不可能に近い。そんな世の中に合うメディアアプローチとなるのが、定額制音楽ストリーミングサービスが提案する“プレイリスト”なのだと思う。


(関連:雨のパレードは野心を燃やし続けて“真の第2章”へ進む 『Ahead Ahead』リリースパーティーレポ


 特にSpotifyに顕著なのが、リスナーとアーティストをマッチングする媒介としてのプレイリスト価値だ。ジャンルやシチュエーション、入門編やマニアック度に応じて数種パターンのプレイリストを用意して、タイトルやカバーアートへもこだわり、日々メディア的にアップデートされている。そこには、楽曲レビューもインタビューも紐づけられていないのだが、タイトルやカバーアート、曲順などに批評的な意味合いがもたらされ、作品に付加価値を与えている。結果、ダイレクトなリスナーの反応からアーティストに火がつきやすい好循環が広がりはじめている。


 そんななか、福永浩平(Vo)、山﨑康介(Gt)、大澤実音穂(Dr)の3人組バンド・雨のパレードの楽曲のプレイリスト人気が急激に高まっている。Spotifyでは日本のポップシーンを彩る楽曲を紹介する公式プレイリスト『Tokyo Super Hits!』、夏を盛り上げる『Summer Time』、デイリーでの人気を可視化する『Spotify Japan急上昇チャート』、日本ロックシーンの話題作を集めた『J-Rock Now』、深夜のリラックスタイムでチルしたいときに聴きたい『Midnight Chill』、そして筆者がキュレーションする『キラキラポップ:ジャパン』などにもリストインする常連アーティストだ。


 定額制音楽ストリーミングサービスの付加価値として、「ワールドワイドに広がるネットワーク」を持つ海外への広がりに着目したい。実際、雨のパレードは海外人気が急上昇中だ。


 SNSや動画サイトを通じての波及効果もあってか、2018年にはワンマン上海公演を行い、2019年には5月頭に中国・蘇州で開催された中国最大規模の音楽フェス『Taihu Midi Festival』、5月26日には中国・北京で開催された音楽フェス『Rye Music Festival 2019』への出演。また、6月27日には台湾で行われたショーケースイベント『Golden Melody Festival』へと立て続けに出演するなど国外での活動の幅を広げている。中華圏で今、注目されている日本のバンドの一つであることは間違いない。


 そんなバンドを取り巻く好状況の中、2019年7月10日に配信した、雨のパレードによる今夏を彩るキャッチーなポップアンセム「Summer Time Magic」は、すでにYouTubeで公開から数日で30万回再生に迫り、Spotifyだけでも14万回再生を超える広がりをみせている。上記は、そのほかにも多くのストリーミングサービスがある中での1つの数字に過ぎず、すべてを合わせるとその何倍ものリスナーに届いている。バンドでありながらロックバンド的な音作りにとらわれることなく、EDMやR&Bテイストによるサウンドも兼ね備えた構成力の高さ、キャッチーなドロップによるコーラスでの一体感を煽る盛り上がりなど、時代の空気と溶け合うサウンドを構築している。


 ヒットの法則とは“世の中の流れ×自分だけが出来ること”によって生み出されていく。雨のパレードによる言葉とメロディを紡いでいくアレンジメントの素晴らしさ。日本発→世界へ、ジャパニーズポップミュージックを進化型バンドスタイルによってアップデートする逸材として今後さらに注目の存在となっていくことだろう。そんな仮説を裏付けるターニングポイントとなる最新サマーソング「Summer Time Magic」は、連日30度を超える日本をよりホットにする、スマッシュヒットチューンとなるだろう。(ふくりゅう)