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『これは経費で落ちません!』は“仕事の責任”を教えてくれる 片瀬那奈×真魚の秀逸な描き方

2019年08月03日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

『これは経費で落ちません!』写真提供=NHK

 多部未華子が主演を務めるオフィスドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合/毎週金曜22時)。青木祐子の同名小説シリーズが原作で、領収書や請求書を通じて見えてくる思わぬ人間模様がコミカルに描かれている。


 第2話は「落とす女、落とせない女の巻」。石けんメーカー「天天コーポレーション」の経理部に勤めるアラサー独身女子・森若沙名子(多部未華子)の元に現れる今回の刺客1人目は、会社の広告塔として活躍する広報課の皆瀬織子(片瀬那奈)。


 織子は自分の立場を「役得」と言わんばかりにフル活用しメディア出演時の衣装を経費で購入しているが、その金額がだんだん高くなったり、やたらと豪華な差し入れが目立つなど経費使いの荒さが経理部内で問題視され始める。「落とす女」だ。


 気になった経理部一行はCM撮影現場に潜入。そこで通常は制作会社が調達するビデオカメラを織子が経費で購入していたことが発覚する。


 その後成り行きで参加することになった社内の女子社員飲み会では、織子の夫が森若さんのご近所のレンタルビデオ店のバイト男性と同一人物であることがわかり、彼には映画監督兼役者という肩書きもあることを知る。「不正」の匂いに敏感な森若さんは撮影現場に向かい、そこで織子によって会社の経費で購入された様々な備品や差し入れが平然と使われていることを目の当たりにするのだった。


 そんな折、森若さんが気になったのは織子の下で契約社員として働く室田千晶(真魚)。


 室田さんのシーズナリティに合わせて工夫を凝らしたデコレーションよってオフィス内のショールームは華やぎ、来場者は目に見えて増えていた。が、過去の経費申請書を遡ってもショールームの備品にまつわる経費が一切見当たらない。そう、こちらが「落とせない女」の方だ。


 何なら差し入れのお菓子も室田さんが自腹を切っているらしい。森若さんが経費申請するように促すも、浮かない顔をする室田さんの口からは「査定に響かないか、出来るだけ荒波を立てたくない」と本音がポロリとこぼれる。自分は正社員になりたい、正社員の森若さんにはこの気持ちはわからないとも。


 ただ冷静沈着な森若さんは正々堂々とそこでも「雇用形態と本件の経費申請については関係がない」と一刀両断。それでも「なぜ経費申請しなければいけないのか?」と食い下がる室田さんに対する今回の回答に、森若さんの魅力が炸裂していた。


 「室田さんのおかげでショールームの来場者は増え、それは会社への売り上げに貢献しているということです。その功績をきちんと数字として残しておかないと、なぜ来場者が増えたのかが相対的にわからなくなってしまいます」と真っ直ぐに私情を挟まず事実を語る森若さんはやっぱり潔くて、そしていつだってフェアである。


 経理部の社員募集のためのインタビュー中に森若さんが、未来の経理部社員のために話す言葉が図らずしも「落とす女、落とせない女」双方の心を打つのである。「会社のために自分のお金を使うことも、自分のために会社のお金を使うこともいけない」とした上で、「人から好かれるのが仕事な人もいて、広報部はその筆頭。誰でもできる訳ではない仕事のために必要な経費もあるのは重々承知だからこそ、無駄なく堂々と会社のお金を使って欲しい」と力強くメッセージした。


 最後に仕事のやりがいを聞かれた森若さんは間髪を入れずに「きっちりと働いて責任を果たし、働いた分の給料を貰うことです」と答えるが、これはまさに経費申請についても言えることであろう。どんな仕事も責任の所在の線引きをナアナアにしてしまっては結局正当に成果として評価してもらえなくなってしまう、そんな真理が端的に表された一言だ。


 ラストシーンでは山田太陽(重岡大毅)の猛プッシュに根負けする形で、あの公私混同を嫌う森若さんが彼の食事のお誘いに応じることになるという展開が描かれていた。次回はこの2人の関係がどのように発展するのかも目玉の一つになりそうだ。(楳田 佳香)