メルセデスは、F1第11戦ドイツGPの決勝レース中にルイス・ハミルトンのピットストップを行う際、通常通りの作業ができずに大幅に時間がかかってしまったことを明かした。
ドイツGPの決勝レース29周目、ハミルトンはウエットコンディションのなかでスピンを喫してコースオフしてしまった。その後新品のフロントウイングに交換するためのピットストップに、非常に長い時間がかかってしまったのだ。ハミルトンはピットに50秒も留まることになったが、これはF1においては永遠とも思えるほどに長い時間だ。通常の場合、タイヤ交換のみのピット作業は2秒から3秒で完了する。
メルセデスのトラックサイドエンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、チームの定期レース解説動画『Pure Pit Wall』で、「ルイスがピットインした際、大きな混乱があった」と認めた。
「我々はバルテリのためにピットで準備をしていたが、彼はステイアウトすることを選んだ。それと同時に、ルイスがコースアウトしてウォールに接触し、フロントウイングを損傷した」
「彼はピットにやって来た。彼が入ってくるのが見えたが、違うタイヤを用意するのに少し時間がかかってしまった」
「またノーズを損傷していたので、通常の交換をするためにジャッキを使ってマシンを持ち上げることができなかった。そのため、違うキットを用意しなければならなかった」
「そしてドライバーからタイヤ交換の要請があったため、ソフトタイヤからインターミディエイトタイヤに交換した」
ハミルトンはスピンするほんの1周前にスリックタイヤに交換していたが、雨のために再度タイヤ交換をすることになった。
「彼とのやり取りで、我々は実際にミディアムについて話していた。天気の予測からコンディションがドライになっていくと考えたので、ミディアムだけが最後まで十分に保つタイヤだと思われた」
「だがルイスはタイヤが硬すぎると言っていた。だから我々はソフトタイヤを履かせたのだ」
「今となっては、インターミディエイトタイヤへの変更について話をすべきだったと思っている。だがその時ルイスと話し合っていたのは、ミディアムかソフトか、ということだった」
追加のピットストップでタイヤをインターミディエイトタイヤに戻さねばならず、またフロントウイングも交換しなければならなかったことで、必然的に状況は混乱することになった。
「すべてが大きく混乱しているなかで、スタッフとコミュニケーションを取るのは非常に難しいことだ」
「順調ではなかったが、ピットのスタッフはそうした状況に対応するのに非常に良い仕事をした。少なくとも、正しいタイヤを正しいマシンにつけることができたのだ」
「あのような状況は非常に難しいものだし、彼らは練習をしていなかった。我々が練習を行っていた状況とは違っていた。だがこの件は、この先どういった点を強化する必要があるのかということを示している」
この混乱の結果、メルセデスのドライバーはふたりとも順位を落とした。またハミルトンは、ピット入口にあるボラードの外側からピットレーンに戻ったことにより、5秒ペナルティを受けることになった。
スピンを喫したことで、ハミルトンはドイツGPをトップ10圏外で終えることになったが、その後アルファロメオの2台ににペナルティが科されたため、彼はふたつ順位を上げて9位となり、2ポイントを獲得した。
この結果はチームメイトのバルテリ・ボッタスよりも良いものだった。ボッタスは57周目に、ハミルトンもその前にスピンした第1コーナーでやはりスピンを喫してコースオフした。
「目にしたとおり、2台ともがターン1でスピンしたが、それにはふたつの理由があった」
「あのコンディションに対して、マシンのバランスが少々オーバーステア気味になっていた。あのように寒く湿ったコンディションで週末の間走行していなかったので、バランスを完全に適正なものにできなかった」
「だがコースにはドライのラインもあり、湿った部分もあった。両方が組み合わさった場所にタイヤが乗ったことで、グリップを大きく失い、スピンを引き起こしたのだ」