貧困を自己責任と言うのはやめよう。日本を見てほしい。よく働き、薬物乱用も犯罪もシングルマザーも少ないのに、貧困率の高い国だ――そんなコラムがネットで注目を集めている。7月30日、米ブルームバーグに掲載された、同社コラムニストが執筆した記事だ。
アメリカでは保守派層を中心に、貧困は個人の選択の結果によってもたらされるという見方が強い。こうした主張への反対意見として出されたのが日本の例だ。
日本の貧困率の高さは「貧困は自己責任」で説明できない
記事によると、日本の人口10万人あたりの殺人件数は0.3。アメリカは5.3で突出して多いが、カナダ(1.7)、フランス(1.4)と比べても日本は低い部類に入る。薬物中毒に関する裁判件数も年間1万3000件と、そこまで多くはないと指摘していた。
母子家庭・父子家庭の数は全体の約3%で、これはアメリカよりかなり少ない。就業率も77%と、アメリカの71%より高い。
つまり、保守派の言う「貧困は自己責任」論が正しければ、こうした状況の日本では貧困率は低くなるはずだ。しかし記事では、そうした予想は誤りだとしている。
日本の相対的貧困率は15.7%だ。アメリカ(17.8%)よりはやや低いものの、ドイツ(10.4%)やカナダ(12.4%)、オーストラリア(12.1%)と比べ高い。日本の貧困率は、先進国の中では比較的高いと言える。さらに、子どもの貧困率は14%で、約350万人の子どもがお腹を空かせている状況があることも紹介していた。
これらの事実から、「保守派の言う貧困理論には大きな欠陥がある」と指摘していた。
海外ネットユーザー「福祉国家こそ貧困を劇的に減らす唯一の道」
記事を執筆したノア氏は31日、自身のツイッターで記事内容について補足し、
「貧困は市場経済の自然な結果だ。貧困をどうにかするには、困難に陥った人をサポートするために介入する必要がある。他に道はない」
と呟いていた。海外掲示板redditにも、記事を読んだ人から「やっぱり福祉国家こそ、貧困を劇的に減らす唯一の道だよ」という書き込みが寄せられていた。
ブルームバーグのフェイスブックには、300件以上のコメントが寄せられている。「貧困は選択の結果じゃなく社会の傷」というコメントもあったが、中には、
「赤い州(編注:共和党を支持する傾向のある州)はアメリカの最貧困州だし、福祉の女王(編注:生活保護を受けながら優雅な生活をしている人)の州でもある。彼らは自分達の責任を取るべき」
「もし青い州(編注:民主党を支持する傾向のある州)の人たちが連邦政府に納める税金を減らしたら、赤い州の人たちは破滅する」
と、政治的スタンスと関連させて自己責任論を正当化するコメントもあった。「貧困は自分の選択の結果」と考える人は多いようだ。
ツイッターでは、記事を読んだ人から「正論過ぎてぐうの音も出ない」「日本の闇の深さが浮き彫りになった」と、内容に理解を示す声が多く出ていた。かつて世界2位の経済大国とも呼ばれた日本が貧困率の高い国として引き合いに出されることに、ショックを感じている人もいた。